藤崎八旛宮の例大祭で馬虐待か。ムチ打ちして“後ろ蹴り”させる動画が拡散

馬が嫌がって跳ねると「ヒョー」「カッコ良かった」と歓声

熊本市の祭りを撮影した動画に「馬が虐待されているシーンが映っている」として、ネット上で物議を醸している。秋の風物詩として親しまれてきた、藤崎八旛宮の例大祭での出来事。撮影されたのは9月16日の日中とみられる。

動画には、はっぴを着た人が大声を上げながら、馬にムチを振るう姿が収められている。縄で繋がれ、人間たちに取り囲まれている馬。嫌がるようなそぶりを見せたあと、後ろ足を蹴り上げると、「ヒョー」「カッコ良かった」など周囲の人たちから大きな歓声があがった。

ムチ打たれた馬が、嫌がって跳ねると歓声が沸いた。
ムチ打たれた馬が、嫌がって跳ねると歓声が沸いた。
Twitterで拡散されている動画

この例大祭は、熊本市内では最大級の神事。例年、武者行列と獅子舞、そして呼び物の「飾り馬」が披露される。鞍の大飾りは江戸時代に始まり、次第に大型化してきた風習。今年は過去最大の70団体15000人が参加した。

公式サイトには、次のような説明がある。

「おびただしい数の馬と勢子せこ(馬を追う人)との集団が、肥後っ子の心意気を遺憾なく発揮して、次から次に威勢よく駆け抜けていく」

特に馬が「後ろ蹴り」をするパフォーマンスが、一部で人気を得ているようだ。

藤崎八旛宮の広報担当者はハフポストの取材に対し、「動画の存在は把握しており、詳細を調査中です」と答えた。

動物虐待があるのではないか、という指摘は数年前から寄せられている。そのため、飾り馬を奉納する人たちでつくる団体「飾馬奉納奉賛会」で馬の扱い方の研修をしたり、注意を呼びかけるなどしているという。

広報担当者は、藩政時代には家老たちが大事な駿馬を連れて練り歩いていたという歴史もあり、祭のかけ声「ドーカイ、ドーカイ(うちの馬はどうですか?)」には馬を大切にする気持ちが込められているはずだと話す。

「馬の扱い方は、以前と比べれば良くなってきているという声も寄せられていたので、このようなことになって残念です」と語った。

なお、めざましテレビによると「奉納会」の会長が、虐待を指摘された団体は事実関係を認めていると明かしている。この団体は「皆さんに迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪し、来年の出場を辞退する方針を示しているという。

動物保護NPOの「アニマルライツセンター」は、2015年から藤崎八旛宮に対し、馬への虐待防止を呼びかけてきた。祭りを盛り上げるために、馬に「後ろ蹴り」をさせようとしていることが、ムチを使った虐待の原因だと岡田千尋代表は話す。

センターが公式サイトに掲げている抗議文には、次のような記述がある。

「被食種である馬は、臆病で敏感です。後ろ蹴りは攻撃ではなく馬にとっては防御。不安や危険から遠ざかろうとする行動です。その臆病な性質を利用し、心理的抑圧、恐怖を与えて後ろ蹴りさせるという行為は、『危険行為』であるだけではなく、環境省の示す『積極的な虐待』にあたる行為でもあります」

競馬などでもムチを使うことはあるが、使いすぎや過度に強く叩く行為などには、ペナルティが加えられることになっているという。

岡田代表は「昨年も、クーラーボックスで馬を叩いていたという情報が寄せられました。動物虐待は犯罪です。虐待的な行為をしない参加者団体もある一方で、このまま虐待がなくならないなら、飾り馬そのものの是非が問われることになると思います」と語っていた。

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