ユーザーに嫌われる「ツイッター字数制限1万字」がメディアを救うか?

2015年9月にも一度、文字数制限を撤廃するというニュースが流れましたが、ポジティブな反応はかなり少なかったように思います。今回の報道に対しても同様でした。

文字数拡大はスクリーンショットがきっかけ?

「Twitterの文字数制限が1万字に拡大か」といった報道が出ていました(初出はRe/code)。実装するとなれば、早くとも3月あたりになるそうです。

2015年9月にも一度、140字の文字数制限を撤廃するというニュースが流れましたが、ポジティブな反応はかなり少なかったように思います。

今回の報道に対しても同様でした。

そんななか、ジャック・ドーシーCEOは長文テキストのスクリーンショットを投稿していました。

ツイッター利用者の行動を見ていくとテキストのスクリーンショットがツイートされており、仮にそれが本物のテキストであれば検索もハイライトも可能になります。このツイートをみる限り、字数制限の拡大の一要因はスクリーンショットだと捉えることもできます。

わざわざリンクに飛ばす意味がなくなる

昨今のメディア環境では、分散型――ウェブサイト外(ソーシャルメディアやアプリ経由)でのコンテンツ閲覧――がふつうになりつつあるなか、スクリーンショットもそうした動きを加速させています。

バズフィードは2014年12月に「The Rise Of The Screenshort™」という記事を公開している。多くのツイッターユーザーがテキストのスクリーンショットを投稿するようになったというものだ。

テキストを140字に制限したツイッターで情報の共有手段としてスクリーンショット(画像)が使われるという流れは興味深い。となると、ウェブページの「リンク(に飛ばすこと)」についても問い直す時期なのかもしれない

(「これからの報道に自社サイトは必要なくなるのか? 脱中心・分散型メディアの可能性」より)

ただ、スクリーンショットが増え、その影響が大きくなったからといって、ここまで大きな機能変更をおこなうのかというとやや疑問が残ります。

フェイスブックとスナップチャットへの対抗策

そこでいろんな意見を見ていくと、納得感のあるツイートに出会いました。

2015年はフェイスブックの「Instant Articles」やスナップチャットの「Discover」が発表され、流通の勢力図が見えた1年でした。それらのサービスにはすでに数十の大手・新興メディアが参加しています。

一方のツイッターはニュースタブの設置やキュレーション機能の追加にとどまり、決定打がありませんでした。そこで文字数制限を拡大し、メディアと提携したうえで、コンテンツ(記事)をホスティングする狙いがあるのではないか、というのが上記ツイートの指摘です。

関連する動きとして、同じく2015年にグーグルがモバイルでのWebページ読み込みの高速化を目的とした「Accelerated Mobile Pages(AMP)」を発表しました。ツイッターや大手メディアが参加しています。

これを踏まえてホスティングサービスを開始するとしても、媒体社をパートナーに迎えるためには、どのような収益モデルなのかも重要です。特にどのように広告を表示して媒体社に売上を還元していくのかは課題となるでしょう。

ところで、2015年のピューリサーチ調査によれば、ニュース取得のためにツイッターを利用する人が63%、フェイスブックと比べて速報ニュースに強みを持っていることが明らかになっています。

今回の1万字への拡大計画が実現すれば増えるだろう長文テキストは速報ニュースとは違う性質なので、ツイッター利用者としても気になるところです(報道によればフェイスブックのように「続きを読む」形式だそうですが)。

今回報道のあった「ツイッター字数制限1万字」の計画はツイートを(投稿したり読んだりすること)目的とするユーザーにとっては不必要かもしれません。それでも、媒体社からすればフェイスブックとスナップチャットに並ぶコンテンツ流通・新規の読者開拓の新たな場所となる可能性を秘めているのではないでしょうか。

(2016年1月6日「メディアの輪郭」より転載)

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