アメリカ司法省のジャック・スミス特別検察官は8月27日、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関連する4つの容疑で、ドナルド・トランプ前大統領を再び起訴したと発表した。
トランプ氏は2023年8月に、この事件で連邦司法省に起訴されている。
しかし米連邦最高裁は2024年7月、「トランプ氏は、大統領としての公的な行動については、刑事訴追を免責される」と判断した。
この判決を受けて、司法省は起訴内容を修正した形だ。
スミス氏は「本日、コロンビア特別区の連邦大陪審は優先起訴状 (superseding indictment)を提出した」と連邦地裁宛の書面に書いている。
「この優先起訴状は新たな大陪審によって提出されたもので、最高裁の判決を尊重し、実行するための政府の努力を反映したものになる」
新たな起訴状で何が変わったのか
今回された起訴状は、最初の起訴状と同じく、アメリカ合衆国に対する詐欺の共謀罪など、4つの罪でトランプ氏を告発している。
スミス氏は「現職大統領でもあった被告は、選挙で負けたにもかかわらず権力の座に留まろうとした」と起訴状で主張している。
「被告は2020年11月3日の選挙当日から2カ月以上にわたり、実際に勝利したのは自分だが選挙結果を左右する不正があったという嘘を広げた。これらの主張は虚りで、被告自身も虚偽であることを知っていた」
一方、新たな起訴状では、トランプ氏が協力を得ようとした連邦政府職員についての言及はない。
元の起訴状では、トランプ氏の不正に協力して司法長官の座を約束された司法省の職員についても触れていたが、新しい起訴状にはこの高官は共謀者として含まれていない。ただし、政府関係者ではない他の5人の名前は残っている。
これは、最高裁が7月の判決で、大統領は自身の意向を実行するために、政府職員を雇用や解雇できると判断したためだと考えられる。
トランプ氏の反応
トランプ氏は新たな起訴に反発している。同氏は「精神が錯乱したスミスが私に対して馬鹿げた起訴をした」と自身が立ち上げたSNSのトゥルースソーシャルに投稿。「効力のない魔女狩り」だと主張した。
また、「検察はジョー・バイデン大統領による指示で動いている」という根拠のない主張や、「2020年の選挙で不正を働いたのは民主党だ」いう虚偽を書き込み、「政敵への迫害だ!」とも述べている。
新たな起訴状は当初の45ページから36ページに縮小されているものの「バイデン氏が勝利した州の投票結果を改ざんして連邦議会に送る」というトランプ氏の計画が中心になっていることに変わりはない。
アメリカの大統領選挙では、州ごとの開票結果に基づいて選挙人が投票を行い、結果を連邦議会に送って上下両院の合同会議で勝者を確定する。
トランプ氏の計画は、集計手続きの進行役を務めていたマイク・ペンス副大統領(当時)が、一部の票の結果を「不正」を理由に受け入れず、偽のトランプ票を認めてトランプ氏の勝利を宣言するというものだったとされる。
しかし、ペンス氏がこの要求を拒否したため、怒ったトランプ氏はTwitterで「自分の要求に従う勇気がない」とペンス氏を批判。連邦議事堂を襲撃したトランプ支持者は「マイク・ペンスを吊るせ」と叫んだ。
この暴動で140人以上の警察官が負傷し、事件発生から数時間後に1人が死亡。さらにその後数カ月の間に4人が自殺した。トランプ氏の支持者4人も乱闘で死亡した。
トランプ氏が起訴された4つの罪状はすべて重罪で、有罪になれば数十年の懲役刑に直面することになる。
トランプ氏は不正行為を否定しており、選挙は「不正に盗まれた」という主張を続けている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。