大統領選挙の結果を不服とするトランプ大統領支持者たちが1月6日、アメリカの首都ワシントンD.C.にある連邦議会の議事堂に侵入し暴動を起こした。
議事堂でバイデン氏の大統領選勝利を確定する会議に出席していた連邦議員らは、避難を余儀なくされた。
暴動の前に、トランプ氏は支持者らを煽るような発言をしていた。
前代未聞の出来事に、政治家たちの間でトランプ大統領の罷免を求める声が高まっている。
民主党のイルハン・オマル下院議員はTwitterで、トランプ氏の弾劾条項を作成していることを明らかにした。
オマル議員のツイート:「私は弾劾条項を作成しています。ドナルド J. トランプは下院によって弾劾され、上院によって大統領を罷免されるべきです。彼が大統領でいることを私たちは許すべきではありません。これは私たちの連邦国家を守ることであり、私たちは誓約をを果たさなければいけません」
憲法修正第25条の行使を求める声も
また、トランプ氏を罷免するためにアメリカ合衆国憲法修正第25条を行使すべきだという議論も起きている。
憲法修正第25条は、大統領が死亡や罷免や辞任などで責務を全うできなくなった時に、副大統領が代わって大統領になることを規定する。
民主党のセス・モールトン下院議員は、この憲法修正第25条を使ってトランプ氏を罷免するよう求めた。
モールトン議員のツイート「トランプ氏には暴動と暴力に対する直接的な責任がある。彼は今すぐに罷免されるべきだ。憲法修正第25条の行使は副大統領と内閣の憲法上の責務だ」
モールトン氏の訴えに賛同した民主党のチャリー・クリスト下院議員は「憲法修正第25条は大統領の罷免を許可している。今こそその時だ」とツイートしている。
他にも、アヤンナ・プレスリー議員やラシーダ・タリーブ議員、デヴィッド・シシリーン議員など、様々な民主党の議員がトランプ大統領の罷免を求めている。
アヤンナ・プレスリー議員のツイート「議会が再招集され次第、ドナルド J. トランプはすぐに、下院によって弾劾され上院によって罷免されるべきだ。今起きていることはあまりに危険そして受け入れられない」
ラシーダ・タリーブ議員のツイート:これがドナルド・トランプだ。彼は支持者をワシントンD.C.に呼び、彼らに議会に向かうように命令した。彼は今すぐに弾劾され罷免されるべきだ
デヴィッド・シシリーン議員のツイート:信じられないことだ。これを起こしたのは大統領だ。私たちは彼を弾劾し有罪を宣告すべきだ
マーク・タカノ議員のツイート:首都で起きた暴力は、トランプ氏が扇動した。議会は平和的に政権移行を進めている最中だった。彼は明日、弾劾されるべきだ。そして大統領オフィスから締め出されるべきだ
共和党の政治家も批判
大統領を非難しているのは民主党の政治家だけではない。
共和党のバーモント州知事フィル・スコット氏はTwitterで「我々の民主主義と連邦国家は、大統領によって攻撃されている。もう十分だ。トランプ大統領は辞任するか、内閣もしくは議会によって罷免されるべき」と述べ、大統領の罷免を求めた。
また共和党のアダム・キンジンガー下院議員は「この2カ月大統領は陰謀論を擁護し続けてきた。そして選挙で選ばれた人々を危険にさらし、共和党に対していばりちらし、人々の民意を覆そうとしてきた」「国の過半数の信頼を取り戻すため、我々の党はこのような背信的な行動を否定しなければならない」と、トランプ氏の行動を非難するよう共和党リーダーに求めた。
暴動を煽ったトランプ氏
2020年11月の選挙での負けが確定した後、トランプ大統領は選挙では不正が行われたという根拠のない主張を繰り返してきた。
暴動が起きた6日にも、支持者に向かって「民主党が選挙を盗んだ」という陰謀論を主張した。
この呼びかけの後、支持者らが議会議事堂に向かい暴動に発展した。
選挙結果を不服とするトランプ氏の支持者らは、セキュリティのバリケードを壊し、警察を押しのけて議事堂に侵入。中には壁をよじ昇る支持者もいた。
この暴動で、これまでに4人が死亡し50人以上が逮捕されている。
トランプ氏はその後、「平和を守らなければならない。だから今は自宅に帰ってほしい」と述べる動画を投稿したが、選挙で不正があったという主張は変えなかった。
そして「私はあなたたちの痛みをわかっている。私たちの選挙は盗まれた。我々の圧勝だった。それはみんなが知っていることだ。特に相手はそうだろう。しかしいまは家に帰らなければならない」と、陰謀論を繰り返した。
Twitter社やFacebook社などのソーシャルメディアは、この投稿が暴力を煽っているとしてトランプ氏のアカウントを凍結。Twitter社は違反が続く場合は、アカウントを永久停止すると警告した。
トランプ大統領の弾劾を求めているのは、議員だけではない。
NAACP(全米黒人地位向上協会)は「トランプ大統領によって、国を危険にさらされ続けることを我々は許してはいけない」という声明を発表して、大統領の弾劾を求めた。
また、ワシントンポストは「大統領が残りの14日間オフィスにとどまるのは不適切だ。大統領として彼が権力を握る1秒1秒が、社会秩序と国家安全の脅威になっている」と社説で述べ、ペンス副大統領と内閣に憲法修正第25条を行使するよう求めた。
大統領の任期は、残り1週間。退任間際に弾劾されれば極めて異例の事態となる。トランプ大統領はこれまでにもウクライナ疑惑を巡って弾劾訴追されているが、無罪判決が下されている。