アメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアに設置された「トランプ死の時計」は5月13日、新型コロナウイルス対策が遅れたために亡くなった人の数が、5万を超えたことを伝えた。
「トランプ死の時計」を作ったのは、エミー賞やピーボディ賞を受賞したドキュメンタリー監督、ユージーン・ジャレッキ氏だ。
時計は「トランプ大統領と彼のチームが新型コロナウイルス軽視したために、犠牲になった人たちの命をカウントする」と、ジャレッキ氏は説明する。
ホワイトハウスが、ソーシャルディスタンス対策を最初に発表したのは3月16日。
しかし、対策が3月9日の時点で取られていたら死者の60%は減らせただろうと、伝染病学者のブリッタ L.ジュウェル氏とニコラス・P. ジュウェル氏はニューヨークタイムズへの寄稿で訴える。
「トランプ死の時計」には、この減らせたであろう犠牲者の数が表示されている。
■大統領は警鐘を無視し続けた
専門家たちは1月の時点で、新型コロナウイルスの危険性に警鐘を鳴らしていた。
しかしトランプ氏は2月末の時点でも新型コロナウイルスの危険性を軽視し続け、3月9日には一般的なインフルエンザと比較して、対策は必要ないとツイートした。
ジャレッキ氏は、こうした無責任な態度が死者を増やす結果になったと怒る。
「報道から、大統領は1月の時点で、新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急の対策を取るように専門家と諜報機関から求められていたことがわかっています」
「しかし大統領は対策を取りませんでした。その代わりに政治的な対立に明け暮れ、無責任な楽観視をして、事態の重大さを矮小化しました」
「そして3月16日になってようやく、それまでの否定的な態度を改めて『全てのアメリカ人のための新ガイドライン』を発表したのです」
しかし時はすでに遅かった、とジャレッキ氏は綴る。
3月16日の時点で、アメリカは感染者数で他国をしのぐようになっていた。その後、感染者数・死者数ともに世界で最も多くなった。
「トランプ死の時計の目的は、死者の数そのものに物語ってもらうことです」「この数字は、パンデミックの1分1秒ごとに、トランプ大統領に説明責任を要求します」
■失われなくてもよかった命が伝えるもの
5月13日にアメリカの死者数は8万5000人に達した時、死の時計は推計5万700人以上の命が救えたことを伝えた。
この数字に、事態の重要性を伝えて欲しいとジャレッキ氏は綴る。
「失われなくてもよかった命は、危機下で責任のあるリーダーシップを求めるよう、私たちに要求しています」と、ジャレッキ氏は書く。
「戦争の犠牲を伝えるため亡くなった兵士の名前が記念碑に刻まれるように、大統領の新型コロナウイルス対策遅れで失った命を数で表すことは、必要不可欠な公共の機能なのです」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。