多様性をテーマにしたオンライン映画祭『True Colors Film Festival』が、12月3日から12日の10日間にわたり、開催されている。
映画祭は、日本財団が主催する「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」のプログラムの一つ。
全28作品は、障がいや女性のエンパワーメント、アイデンティティ、貧困と逆境、人種差別などがテーマ。オンライン上で無料配信されている。
日本財団が健常者・障がい者を対象にした意識調査によると、新型コロナで、より多くの人が「ストレス発散のため」や「不安な気持ちを紛らわすため」に自宅でのエンターテイメント体験や芸術鑑賞を求めていることが分かった。映画祭はこうした背景から企画されたという。
True Colors Festivalのプロデューサー 青木透さん(日本財団)は映画祭の開催にあたって「今回の映画祭が、年の瀬のおうち時間の充実と共に、多様な違いのある人が作り上げる社会の面白さや可能性へ思いを馳せるきっかけとなることを願っています」と話す。
障がい、“disable”ではなく“differently able(違う可能性)”と呼ばれるように
3日の「国際障害者デー」に合わせて、『True Colors Film Festival』のオープニング記念上映作品として上映されたのは『37 seconds』。
同映画は、生まれた時に37秒間呼吸ができなかったために、身体に障がいを抱えてしまった女性が、母親の過保護に悩みながらも、一人の人間として成長していく過程を描いている。作品は、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門の「観客賞」「国際アートシアター連盟賞」を受賞した。
メディア向けのアフタートークには、監督と出演者が登壇。作品のテーマの1つである「障がい」について、それぞれが思いを語った。
監督のHIKARIさんは、「障がい」という価値観を言葉から変えていきたいと話した。
「英語で障がいを“disable”と表現することがあるんですが、私は『障がい』というレーベルを貼るのは良くないなと常に思っていて。(代わりに)“differently able”、すなわち『違う可能性』という言葉を皆さんに使って頂けるように。(同じような意味の言葉を)日本語でも考えないとなと思っています」
俳優の大東駿介さんは「なかなか生きづらい時代になった中で、障がい者という言葉に疑問を持ち始めた。僕も何をもって健常者なのか、五体満足が健常者なのか」と疑問を投げかけ、いわゆる健常者と言われる人でも、心のなかに「不具」を抱えている人が多いことを指摘した。
その上で「自分を大切に見てあげれば、周りの人のことを大切に思える。僕の周りの大切な人もどんどんいなくなっちゃったりして、本当に辛いです。まずは自分の心を豊かに。そして周りの人にちゃんと頼って、周りの人にも恩返しできるように。そのくらいの範囲でいいので、少しずつ豊かになれればなと思います」とメッセージを送った。
『37 seconds』は、『True Colors Film Festival』では3日限りの公開だったが、動画配信サービスNetflixでも配信されている。
『True Colors Film Festival』の視聴方法はこちら