PRESENTED BY 日本財団

アートであらゆる「壁」を乗り越える。「超ダイバーシティ芸術祭」が届けたいメッセージとは

ちょっと優等生っぽい「ダイバーシティ」という言葉。でも「自分の言葉」で綴ってみたら、新しい気づきがあるかもしれない。【「#わたしの超ダイバーシティアワード」は2月10日まで締切延長しました】

2020年、多様性の祭典はオリンピックやパラリンピックだけじゃない。アートの力でダイバーシティの豊かさを伝える芸術祭がある。

手足に障害を持つ人、ダウン症の人、障害のない人、耳の聞こえない人。外国人と日本人。大人に子ども。トッププロと愛好者。そんな人々が同じステージでダンスバトルを繰り広げ、最後は自然と一緒に踊り出す…。

2019年9月から2020年7月にかけて「True Colors Festival-超ダイバーシティ芸術祭-」と題して、音楽やダンス、ミュージカルなどさまざまなステージが開かれているのをご存じだろうか。

一連のイベントに共通するのは、障害のあるなしや性別などの垣根を越えて、多彩なパフォーマーが参加していることだ。ステージからは、競い合うことが特徴のオリンピックやパラリンピックとはまた違う「ダイバーシティ」の豊かさ、楽しさが伝わってくる。

フェスティバルに参加する方法はイベントだけではない。2019年12月から開催されているのは「#わたしの超ダイバーシティアワード」という企画。ハッシュタグ#わたしの超ダイバーシティ#truecolorsfestival がついたTwitterの投稿の中から、RYUCHELLさんや乙武洋匡さんら、フェスティバルアンバサダーが選んだ作品が、Tシャツやポスターのデザインに採用されるというものだ。

最近何かと耳にすることが多い「ダイバーシティ」という言葉。しかし「自分ごと」として考えたり、使ったりする機会はあまりないのではないか。

本来、ダイバーシティとは一人一人違う「自分らしさ」のこと。自分の「言葉」で綴ってみることで、「自分らしさ」と向き合う機会にもなるかもしれない。

7割超がマイノリティへの「壁」を自覚 接することで価値観が変わる

87%の人が社会には多様性が重要だと感じる一方、73%は自分もマイノリティに対する「心の壁」を自覚した経験がある―。

これはフェスティバルを主催する日本財団が2019年7月、国内に住む5200人余りを対象に実施した調査の結果だ。多くの人が「ダイバーシティ」の大切さを頭では分かっていても、心理的な隔たりをぬぐい切れない現状が浮かび上がった。

同財団True Colorsチームの青木透さんも「子どものころ、障害のある同級生にどう接していいか分からず、そんな自分の感情を持て余したことがあります」と明かす。

一方で青木さんは、財団の仕事を通じて、米国で聴覚障害を持つ人たちとディナーを共にしたことがある。会場はとある大学の温室。青木さん以外は全員、手話でコミュニケートしていた。

「植物に囲まれ、静けさの中で食事を取る素晴らしさは言葉にできませんでした。多くの人が未だ見つけられずにいる、とてもきれいな世界を発見したような気持ちになりました」。

青木さんはこうした経験から、「マイノリティとされる人たちも含めてさまざまな人たちとの出会いを重ねること。それを通じて、感激したりワクワクしたりする積み重ねが、心の壁を取り払うのではないか」と思うようになったという。

フェスティバルのアンバサダーを務めるRYUCHELLさんも、動画でこう呼び掛ける。

「(イベントを通じて)『こういう人がいるんだ』と自分の中で価値観が動かされたり、普段会えないような人と関わることができたり、それってすごく大きいと思う」

日本財団True Colorsチームの青木透さん
日本財団True Colorsチームの青木透さん
Yasuhiro Suzuki / HUFFPOST

混然一体となって作品を生む「超」ダイバーシティ

フェスティバルは2019年9月に渋谷で行われたダンスイベントを皮切りに、約1年間、都内を中心に開かれている。2020年2月には米国の障害者が作った劇団によるミュージカル、3月には多様な背景を持つ高齢者が性体験に関する話を通じて人生を語る対話型の演劇公演なども予定されている。

青木さんは言う。

「アートは障害や性、年齢を超えたパフォーマーの『カッコよさ』『すごさ』を理屈抜きに感じることができる」

 ダンスイベントでは、障害のある外国人ダンサーたちが、杖や上半身を駆使した身体表現で道行く人たちを驚嘆させ、ダウン症当事者で作るチームも、一丸となったパフォーマンスで観客の心をつかんでいた。日常生活では「障害=できないこと(disability)」とみなされてしまうことも、アートの世界では個人の「能力(ability)」として生かされる可能性があるのだ。

アートの良さは、障害の有無や性別、年齢に関わらず、誰もが一緒にひとつの作品を作り出せることにもある。

オリンピック・パラリンピックに代表されるスポーツの世界では、競技としての公平性を担保するため、性別や障害の種類、程度などを分けて実施されることが多い。一方、パフォーミングアーツはこうした区別が不要なだけでなく、障害の有無、性、言語の違い等を問わず同じステージに立つこともできる。

青木さんは「多様な個性や背景を持つアーティストが共に作品を生み出す姿は、これからの社会の写し鏡となって、ダイバーシティあふれる社会の可能性を示すことにもつながるのではないか」と期待する。

© THE NIPPON FOUNDATION

すべての人がダイバーシティの当事者 誰もが自分らしく生きるために

障害のない人やヘテロセクシュアルの人が「ダイバーシティ」(多様性)という言葉を使う時、自分は対象外だと思いがちだ。しかし青木さんは「誰もがその人特有の個性や歴史を持っていて、それが“その人らしさ”につながっている。自分らしく生きるという意味では、すべての人がダイバーシティの当事者」だと話す。

「#わたしの超ダイバーシティアワード」に際して、RYUCHELLさんは”Believe in your TRUE COLOR” というメッセージを寄せた。

併せて、以下のような思いも語っている。

「小さい頃からメイクや可愛いものが好きで『男のくせに』とからかわれ、悩んだ時期がありましたが、自分らしさを出すことでコンプレックスだったことが自信に。自分の色を信じて生きていたら、大好きな人や仕事に出会えたんです」。

当初1月31日だったアワードの応募締切は、2月10日まで延長。

自分らしいファッションや好きなものへの思い、日常生活で人との違いを認めてもらえず「おかしい」と感じた経験など、身近な題材をメッセージに託してほしい、と青木さんは言う。

「オリンピック・パラリンピックイヤーである2020年、個性と彩りがあふれる社会に向けた一人の当事者として明日から始められるアクションを、新年の抱負のつもりで言葉にしてもいいと思います。あるいは、ダイバシティーという言葉や今の空気感に対するモヤモヤを言葉にしてくださってもいいかもしれません。難しく考えず、気軽に自分の思いを投稿してください」

© The Nippon Foundation

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