・ICTの発展と医療
ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)はさまざまな分野で発展を遂げ、今では我々の生活に欠かせないものになっています。スマートフォンやインターネットを使わない日は一日もないという方も多いのではないでしょうか。ICTは医療においても大変重要な役割を果たしています。その一つが遠隔集中治療の取り組みです。
・遠隔集中治療とは
メディカルノートニュースの高木俊介先生(横浜市立大学附属病院 集中治療部 部長)のインタビュー記事( 医療におけるICTの活用−遠隔集中治療とは?https://medicalnote.jp/contents/180507-001-WV )では遠隔集中治療について以下のように言及されています。
"遠隔集中治療は4〜5病院の患者さん100人程度を24時間365日、コントロールセンターにて観察し、必要に応じて現場の医療者に対して診療支援を行うというものです。100人前後の患者の重症度判定を行い、介入が必要な患者を選定しています。まるで空港の管制塔のように、モニターやカメラを監視しながら、マニュアルによって効率的に患者さんを管理しているのです。"
高木先生によれば2018年現在、アメリカでは20%程度の医療機関がTele-ICUと呼ばれるこの遠隔集中治療のシステムを導入されているそうです。
・業務効率化と患者アウトカムの改善に向けて
昭和大学病院では、本院と昭和大学江東豊洲病院を結ぶ遠隔集中治療(eICU)を2018年4月に日本ではじめて導入しました。上條由美先生(昭和大学江東豊洲病院副院長)、大嶽浩司先生(昭和大学医学部麻酔科学講座主任教授)によればeICUは集中治療を専門とする医師の不足を補い、業務の効率化に寄与するばかりでなく米国では実際に通常のICUよりもeICUの方が患者アウトカム(特に夜間)の改善にもつながったそうです。日本での検証の結果が待たれますが、まさに未来の医療がすぐそこまで来ているといえるでしょう。
【執筆/インタビュー】
井上祥(メディカルノート共同創業者・取締役/医師・医学博士)
2009年横浜市立大学医学部卒。横浜労災病院初期研修医を経て2011年より横浜市立大学大学院医学教育学・消化器内科学、2015年3月医学博士(甲号)を取得。医師として多数のベストセラー医療書籍を執筆し、在学中よりメディカルノートを創業。一般生活者の医療リテラシー向上を理念に医療情報サイト「メディカルノート」を2015年3月に立ち上げ。2008年北京頭脳オリンピック"WMSG"チェス日本代表。日本オリンピック委員会中央競技団体ドクターとして2013年仁川アジア大会チェス日本代表のアンチ・ドーピングを担当。東京都医学総合研究所客員研究員。