アメリカの下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」(以下「VS」)が、初のトランスジェンダーのモデルとして、ヴァレンティナ・サンパイオを起用することになった。彼女のエージェントが発表した。
トランスジェンダーのモデルはファッションショーで起用しないという旨の発言を同社の役員がしてから、まだ一年と経っていない。
「彼女は8月中旬からスタートする新しいPINKキャンペーンに参加することが決まっています」と、8月5日にハフポストUS版に宛てたメールで語ってくれた。4月にサンパイオのインスタグラムに連絡があり、キャスティングの後、「VS」との撮影が決まったそうだ。
さらに「彼女はとても喜んでおり、障壁を壊し、より様々な人たちが何かを代表したり、表現することのできる環境作りに貢献することを望んでいます」と続けた。
ハフポストUS版の問い合わせにVSからの返答はなかった。
このニュースは数日前、サンパイオが自身のインスタグラムに、#VSPink のタグと共に、白のローブに身を包んだ姿を投稿し「@vspinkのバックステージ」というキャプションを入れていたことで明らかになった。
女優・活動家でトランスジェンダーのラバーン・コックスは「わぁ!遂に!」と投稿にコメントした。
『VS』の広告塔で「エンジェル」と呼ばれるモデルの1人である、ライス・リベイロは拍手の絵文字で反応。後にこのニュースについてツイートした。
サンパイオと同じブラジル人である彼女は「とっても嬉しい」とコメントし、彼女がブランドにとって初のトランスジェンダーモデルであることも言及した。
サンパイオの起用は包括性や表現の場において大きな一歩だが、「VS」を所有す「L Brands」の最高マーケティング責任者、エド・ラゼック氏の発言の後ということもあり、そのニュース自体は表向きを意識した感じが否めない。
ラゼックは2018年11月、Vogueに「トランスセクシュアル」やプラスサイズモデルは代表的なファッションショーでは起用しない方針を明かしていた。
「私たちは特定の人たちに売り出したいだけで、世界全体に売り出したい訳ではない」と彼は述べ、「『何故ショーでこれをやらないの?』『トランスセクシュアルも起用すべきでは?』って思われるかもしれませんが、その必要はありませんよ」と続けた。
「何故って?ショーは飽くまでファンタジーだからです。42分間の特別なエンターテインメントですよ」
ラゼック氏は後に、この不適切な発言について、「VS」の公式ツイッター上で謝罪した。
「『VS』のファッションショーにおけるトランスジェンダーの包括性について、私の見解は不謹慎でした」と述べ、「謝罪します。誤解のないように言わせていただくと、私たちは勿論トランスジェンダーのモデルも起用します」と綴った。
更にラゼック氏は「トランスジェンダーのモデルも、キャスティングに参加しています。しかし、他の多くのモデル同様、採用には至りませんでした。それはジェンダーとはまるで関係のないことです。本当の自分になるための道のりを辿って来た彼女たちを称え、尊敬しています」と続けた。
そして「エンジェル」のシャニーナ・シェイクが、ファッションショーは中止になるだろうと、7月30日付けのThe Daily Telegraphに話した。会社側はこの件について、ハフポストUS版の問い合わせに返信はなかった。
「VS」を所有する「L Brands」の創立者でCEOのレス・ウェックスナー氏はこのニュースにあまり驚いてはいないだろう。ウェックスナー氏は今年に入ってから、支持率の低下に伴い、「VS」のファッションショーはテレビ放送から手を引くことになるだろう、と社内の連絡メモで話していた、とCBSは報じている。
ウェックスナー氏自身は最近、ファンドマネージャーであり、未成年を性的人身売買した罪に問われているジェフリー・エプスタインとの交友関係について、「L Brands」から調査をされたばかりだ。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。