インタビュー前編>>経営陣の半数が女性。多様性がエクスペディアの「優れたビジネス上の決断」である理由
「LGBTQの人たちが安心して旅するためには、旅行会社自らもインクルーシブでなければいけない」
オンライン旅行会社エクスペディア・グループでは、その考えのもとにLGBTQ当事者が働きやすい職場づくりに力を入れている。
2023年に、世界中の従業員のために新たに導入したのがトランスジェンダー当事者のためのメディカルサービスだ。
導入の理由や経緯を、グローバルB2Bビジネス部門のプレジデントであるアリアン・ゴリン氏に聞いた。
――トランスジェンダーのメディカルサービスは、どのような内容なのでしょうか。
(勤務国を問わず)1人あたり最大1万ドル(約135万円)まで、性別適合やその他に関連する医療サービスを受けられるという福利厚生です。
従業員自身が、自分自身にあった医療サービスを利用できるお財布のようなもので、1万ドルまでを会社が支払います。
アメリカではすでに導入されていたものを、2023年1月6日から世界中の従業員も使えるようになりました。
また同じタイミングで、このトランスジェンダーのメディカルサービスとは別に、不妊治療のための福利厚生制度も導入しました。こちらも1人最大1万ドルまで、世界中の従業員とそのパートナーが利用できます。
―― どういった経緯で、導入を決めたのでしょうか?
毎年実施している社員調査でのフィードバックをもとに、導入を決めました。
私たちは常に、社員からのフィードバックを元に福利厚生を改善し、様々なニーズに応えられるようにしています。
例えば、出産・育児に関連して、母親は18週間、父親が12週間の育休を取れるようにしたほか、養子縁組でも12週間の育休を取得できます。いずれも100%の有給です。
私たちは、社員が職場でありのままの自分でいられることが大事で、そのためには私生活での生き方をサポートすることも必要だと考えています。
エクスペディア・グループは多くの従業員を抱えるグローバル企業であり、一つの問題を一般論で片付けることはできません。
多様性とインクルージョンを実現するためには、個々の従業員のニーズに気づき、福利厚生や開発、設備の適応などで応えることが必要です。
また、そうすることで、私たちも社員から得られるものがあると思っています。
私の働くロンドンのオフィスには、車椅子を利用する従業員がいて、旅行先でどんな問題に直面するかを話してくれました。
彼の話を通して、車椅子を利用する旅行者が抱える問題を知ることができます。
こういったことの一つ一つが、多様なバックグラウンド持つ従業員がなぜ重要なのかを物語っていると思います。
――日本でも、社会や職場にトランスジェンダーへの理解が足りず自認する性別で働きにくいという問題があります。企業はどういったことができるでしょうか
トランスジェンダーの人たちが必要な性別適合のための医療サービスは、複雑な問題です。
私はイギリスに住んでいるのですが、思春期のトランスジェンダーの当事者が、何歳から性別適合に関する医療を受けられるようにすべきかについて、多くの議論があります。
私たち企業の役割は、従業員がどのような立場にあってもサポートすることです。
そのため、福利厚生プログラムを通して、従業員たちが自分の住む国で必要な医療サポートにアクセスできるようにしました。
――企業が従業員の安心できる場所を作ることは大切だと思われますか?
もちろんです。サポートされている感じられる職場でなければ、最善の仕事をすることは難しいでしょう。
そういった環境を作るために、福利厚生以外でも様々な試みをしており、その一つがジェンダーを示す代名詞の使用です。
エクスペディア・グループはグローバル企業なので、オンラインミーティングやメールでのやり取りが多くあるのですが、そう言った場で、多くの従業員が(they/she/heなどの)代名詞を明示しています。
たとえ自分のジェンダーが明らかであっても、多くの人が使うことで、代名詞の使用が一般的になり、使用しやすくなると思います。
また、職場に加え従業員の私生活での経験も、私たちに影響を与えています。
トランスジェンダーの子どもを持つ年上の同僚が、個人的な体験を綴ったメールを会社に送り、トランスジェンダーへの理解の重要性について伝えてくれたことがありました。
こういった従業員からの声が、私たちが多様性に対する意識を高め、そのための取り組みを強化してくれると思います。
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エクスペディア・グループが取り組んでいる多様性を重要視した組織づくりとは。
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(※読みやすさのために、インタビューでのやり取りに編集を加えています)