「アメリカ建国のために奴隷制は“必要悪”だった」。共和党のトム・コットン上院議員の発言が、物議を醸している。
コットン議員は7月26日に掲載された地元アーカンソー州の新聞アーカンソー・デモクラット・ガゼットのインタビューで、「奴隷制は学校でどのように教えられるべきか」と聞かれ、次のように答えた。
「私たちは奴隷制の歴史とその役割や影響を、国の発展の中で学ばなければいけません。そうしない限り、我々はこの国のことを理解できないからです。建国の父たちが言ったように、奴隷制は合衆国が築かれる上で必要悪だったのです。しかしリンカーンが言ったように、合衆国はある意味で、奴隷制を全廃させる方向で築かれています」
コットン議員はまた、アメリカを「どうしようもないほど堕落し、腐敗した人種差別の国」と見るのではなく「不完全で欠点はあるものの、人類の歴史の中で最も素晴らしく、高貴な国である」と見るべきだという持論も展開した。
奴隷制について学ぶプロジェクトを批判し続けている
コットン議員は、奴隷制の歴史に関する自分の考え方を、法律にも適用しようとしている。
同議員は、ニューヨークタイムズマガジンの「1619プロジェクト」を批判しており、このプロジェクトをカリキュラムに取り入れる学校に対して、連邦政府の補助金を削減する法案「Saving American History Act of 2020(アメリカの歴史を救出する法) 」を提出している。
1619プロジェクトは、奴隷制がアメリカにもたらした結果から国の歴史をもう一度捉え直すとともに、アメリカでの黒人の貢献について考えるシリーズだ。1619は、奴隷にされた黒人がアフリカ大陸から初めて北アメリカのイギリス植民地に連れてこられた年を指す。
ジャーナリストや歴史家が批判
1619プロジェクトのディレクターで、ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストのニコール・ハンナジョーンズ氏は、「奴隷制は必要悪」と述べたコットン議員のコメントをTwitterで強く批判した。
ハンナジョーンズ氏は、奴隷制は「利益のために人間をレイプし、拷問し、売買することを法的に認めていたもの」であり、コットン議員が主張するように「必要悪で、目的を達成するための手段」なのであれば、一体どんなものが正当化されないのか、と訴えた。
これに対してコットン氏は、自身の発言は「国の創設者たちの見方を説明しただけ」であり、「奴隷制を正当化もしくは承認するものではない」と主張した。
しかしハンナジョーンズ氏は、「『奴隷制は必要』という国の設立者たちの考え方に賛同するか、もしくはその考えは間違っていたと認めて奴隷制は悪だと認めるか、選択肢はどちらか一つ」であり、「あなたはどちらの立場をとっているのか」とコットン議員に迫った。
歴史学者のジョシュア・D.ロスマン氏もコットン議員を批判し、「奴隷制は必要悪でも奴隷制を終わらせるためのものでもなく、白人のアメリカ人たちが何世代にも渡って受け入れ、選択してきたものであり、産業革命と南北戦争の間に劇的に広がった」と述べる。
1619プロジェクトは批判するコットン議員はインタビューで、プロジェクトは「左翼のプロパガンダ」で「事実の面でも歴史の面でも欠陥がある」とも述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。