東京医大の常務理事らが会見 「学内では、追加合格を認める方向で検討する」と言及

内部調査委の報告を受けて会見を開きました。
会見で不正入試問題について謝罪する行岡哲男常務理事(中央)と、宮澤啓介学長職務代理(右)
会見で不正入試問題について謝罪する行岡哲男常務理事(中央)と、宮澤啓介学長職務代理(右)
Shino Tanaka

東京医科大の入試不正問題に関して、行岡哲男・常務理事らが8月7日、都内のホテルで会見を開いた。内部調査委の報告を受けて、「女子の減点については、断じてあってはならないことであります。これは根絶する。浪人生への得点調整についても根絶します」と謝罪した。

追加合格の可能性も検討

不正な得点操作がなければ合格していた受験生への対応として、追加合格という措置をとるかどうか、取材陣からの質問が飛んだ。

宮澤啓介学長職務代理は「私自身はそういう方向で考えている。昨日、調査報告書をいただいた段階で、議論がなされていない。調査書を吟味して、今後の対応を考えたい」と答え、学内では、追加合格を認める方向で検討する可能性を示唆した。

また、女性差別ともとれる不正があったことについては、「女性医師の方が、職場の環境の中で自分のすることを制限されてしまうのは気の毒で申し訳ないと思っている。そういうような属性による差別のない、クリーンな試験をしていきたい」と述べた。

質問に答える宮澤学長職務代理
質問に答える宮澤学長職務代理
HUFFPOST JAPAN

女性差別的不正があるとは「認識していなかった」

そもそも、なぜ女性に対し一律で減点し、不利になるような不正をしていたのか。

行岡常務理事は「鈍麻していたとしか考えられない」と答えた。

「男性でも、体力が落ちるし、一律に決めつけている人がいるということは、そういう考え(女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がるなどと)の人がいるのだと思います。女性がジェンダーの違いで可能性を一律に変えてしまってはいけないという、根本的ルールだと思う」

そのうえで、東京医科大では、学内、病院で、多くの女性医師の働き方改革や、環境を整える活動が盛んに行われていると説明。宮澤学長職務代理は「ダイバーシティーの推進宣言を抱える中、女性医師が働きやすい環境を推進していると認識していた。だから、よもやこうした点数加算で、女性の受験者に不利に働くようにしていたとは認識していなかった」と話した。

また、行岡常務理事は「女性が活躍できないのは、社会の貢献というチャンスを失う。だからこそダイバーシティーを推進しなければならない。ダイバーシティーの推薦委員会をやってきたが、組織にしみ込んでいなかったのかと思う」と見解を述べた。

質問に答える行岡常務理事
質問に答える行岡常務理事
HUFFPOST JAPAN

だが一方で、現場で働く女性医師の現状について「今の状態ではシステム的サポートが弱いという面があると思う」といい「学会で調べると、外科系、救急は女性医師はダメなんですよね、と言われている。でも女性で救急医をやっている人もいる。ただ、最初からダメなんだと思われるのは、非常に残念だと思う」と語った。

ただ、「(女性や多浪生の男性に対し)不利に働くような操作をしたことを知らなかった。入試委員会でそのようなことが話し合われた認識もない」として、2人から直接的な理由や背景が語られることはなかった。

前理事長が不正に手を染めたワケ

文部科学省幹部の息子に対する不正加点問題で、いずれも贈賄罪で在宅起訴された臼井正彦前理事長(77)と、鈴木衛前学長(69)については、「入試の公正・中立性に対する規範意識の鈍麻があった」と報告書で記載。2人は、実質的に指示する裁量を持っていたとされる。その前の代の理事長などから引継ぎがあったかは分からないという。

報告書によると臼井前理事長は、1996年ごろから入試委員会のメンバーとして、合否判定に関与してきた。2008年10月からは約6年間、学長を務めた。学長を退き、理事長専任になった後も、学長の職務である入試の合否判定について、主導して調整を行っていたという。また、報告書ではこのような調整について「何ら躊躇もなかったものと思われる」としている。

このような得点調整をしてきた動機については「同窓生の子弟をたくさん入れたいという思い」があったといい、その背景には同窓生から多額の寄付金を集めたかったねらいがあるとみられる。そのほか、「政治家や公務員を知っていたほうが便利」と考え、佐野氏に接近していたという。

鈴木前学長は「臼井氏が他人の意見を聞かないタイプであった。そのため理事会を支配していた臼井氏と対立して関係が悪化し、学長を辞めさせられることを恐れ」ていたとして、臼井氏の入試への関与を拒もうとしなかったという。

また、「私学は財政基盤が大変で同窓生の子弟を入れることで寄付を多くしてもらいたい」などの理由を挙げた。

同窓会プレッシャー

会見では、こうした不正に手を染めた理由について「寄付金のため」と指摘されていた。これらに加えて、長らく同窓会から同窓生の子弟の入学者数を増やすよう理事長や学長に対してプレッシャーがあった点も原因の一つとして挙がった。

東京医大新聞の中では、同窓会からの要望として子弟の入学が困難であることを上げ、「同店の場合には同窓生の子弟を優先して入学させる」ことなどが出されたこともあったという。

同大では同窓生からの寄付金が財政上、一定の割合を占めているため、寄付を期待して合格の依頼に応じざるを得なくなっていたことが不正の動機の一つなのではないかと指摘されていた。

中井委員長は「『私は誰々さんから、この子をよろしく頼むと言われた』という人がいた。それを理事長などにつなぐ。その範囲ではみなさんが共有しているんではないか」などと述べた。

不正に加点した正規合格者への対応

不正加点によって正規合格となった学生には「得点調整を大学が行ったので、学生の地位を剝奪するのは、ふさわしくない」とし、入学を取り消すなどの措置は考えていないという。

同大の入試で不正に加点されて入学した文科省の元局長の息子の処遇については、内部調査委員会の調査報告書では「入学許可の取り消しあるいは退学など、学生の地位を失わせる処分が可能」などと指摘する一方、「息子本人が不正行為を行ったとは評価できないため、慎重な検討が必要」とされた。

宮澤学長職務代理は、不正入試発覚後の息子の現状について、「プライバシーの問題がある」として詳細を語らなかったが「なかなか大学に出てこられない状況の中で、今後の進級に影響がないように対応している。7月の2~3週目の試験を受けないと退学が決まるため、別室で試験を受けることで対応した」と説明した。

注目記事