少子化と学校スポーツの衰退 このままで東京五輪を戦えるのか?

2020年、オリンピックの東京開催が決まりました。開催国である日本としては、各競技でのメダルラッシュが期待されるところであり、現在の中高生が6年後、世界の舞台で戦う場面も増えるでしょう。しかし、現在日本が直面している少子高齢化問題は、その大きな障壁となるかもしれません。

2020年、オリンピックの東京開催が決まりました。開催国である日本としては、各競技でのメダルラッシュが期待されるところであり、現在の中高生が6年後、世界の舞台で戦う場面も増えるでしょう。

しかし、現在日本が直面している少子高齢化問題は、その大きな障壁となるかもしれません。総務省の統計によると、平成8年から24年の間に65歳以上の人口が60%も増えているのに対し14歳以下の人口は16%ほど減少しており、まさに少子高齢化が本格化していると言えます。

また、少子化には地域格差があることは意外と知られていないかもしれません。秋田、青森、福島、岩手の 4 県は減少率が 30 % を超える深刻な状況となっており、大阪、埼玉、兵庫、福岡などの100万人都市を抱える府県でも 10 %以上が減少しています。

一方で、東京都だけは、減少率が 0.2 % と、15年程前からほとんど変わらない状況となっています。普段子供と接する機会がどの程度あるかにもよりますが、東京在住の方にとって少子化問題は実感しにくいのではないでしょうか。

スポーツにとって、少子化の進行は大きな問題です。多くのスポーツにとって、取り組む子供の数は、その競技人口のみならず、競技レベルを大きく左右するからです。日本中学校体育連盟がまとめた、中学校部活動の推移データによると(図)、平成25年の各部活動加盟中学校数(男子)は、上から軟式野球、バスケットボール、サッカー、卓球、陸上競技の順となっていますが、その実情はランキング通りではありません。

平成13年から25年の間における各部活動の部員数の増減をみると、軟式野球、バスケットボール、卓球はどれも10%以上減少している一方で、サッカー、陸上競技、水泳などは子供の数の減少にも関わらず、部員数の増加に成功しています。まさに少ない子供の取り合いに明暗が分かれた結果と言えるでしょう。

私がこの問題に関心を持ったのは、自身の生まれ育った神戸の剣道人口が減っている、という話を聞いたためでした。中高時代は神戸で剣道をしていましたが、大学進学に伴い上京したため、その実情を知ることはありませんでした。

剣道は、全国中学校の部活動数こそ陸上競技に次いで6位ですが、部員数は1位のサッカーの4分の1程度で7位です。また、平成13年と比べると中学校の剣道人口は30%も減少しています。同じく武道の柔道は40%程度減少しており、武道はともに苦境に立たされていると言わざるを得ません。

神戸の剣道に関しますと、神戸市中学校の総合体育大会出場校数は平成4年から25年の間に男子で52校から26校、女子で49校から22校とおよそ半減しています。神戸市の中学校総数99校に対する剣道部のある中学校の割合は25%程度で、割合の高い東灘区でも40%、垂水区にいたっては歌敷山中の1校だけです。

小学生は剣道を主に道場で習いますが、道場数は最も多い須磨区で5つ、灘区、中央区、長田区はどこも1つだけです。これではただでさえ少ない剣道人口の受け皿もなくなってしまっていると言わざるを得ず、更なる競技人口流出を招く悪循環に陥る可能性があります。神戸は150万人を抱える全国で6番目の関西の中核都市です。しかし、少子化の影響を受け、競技間の子供の取り合いに負けると、大都市でも競技の衰退がこれほど進んでしまうのです。

この問題の解決策、現状の打開策はないのでしょうか。サッカーの事例を見ると、ポイントは「地域貢献」だと考えられます。日本プロサッカーリーグの正会員、準会員クラブは、北は北海道、南は沖縄まで、50チームほど存在し、それぞれが地域に根差した活動をしています。例えば、Jリーグ優勝7回の名門鹿島アントラーズは、2007年から2008年にかけて、ホームタウンの5市、鹿島、神栖、潮来、鉾田、行方の小学校全校を訪問しました。また、ビジネスとしても、地域の人は応援でチームをバックアップし、チームは地元の名産を広告塔として宣伝することで、名産品の知名度が上がり、またチームが盛り上がるという相乗効果を生み出しています。

地域に近い選手たちが、テレビで活躍している、ということが子供たちの憧れとなるのではないでしょうか。もちろん他競技がここまで成長するには、大きな労力、時間、そして情熱が必要となるでしょう。しかし、東京五輪まであと6年。問題解決には、もう動き出す必要があるのです。


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