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上海、バルセロナ、平壌と、これまで多くの都市で誰も見たことのないような独自のタイムラプス作品を発表してきたRob Whitworth氏が、中東の巨大都市・ドバイで、これまで以上に独創的かつスケールの大きい傑作を発表した。
タイムラプス作品は世界中の映像作家によって制作されるようになったが、これほどの規模とユニークさを持つ作品は、かつてなかったのではないだろうか。
まずは、皆さんにも発表されたばかりの本作を楽しんでもらいたい。絶対に、びっくりしますよ!
Dubai Flow Motion from Rob Whitworth on Vimeo.
■やりたいことをなんでもやっていい
同国のプロダクションであるドバイフィルムから「なんでも、やりたいことをやっていい」と最上の条件を提示され、その言葉の通りに「あらゆる機材、あらゆる撮影、あらゆる手法」を駆使して制作されたという、今回の作品。
昨年、日本でも大きな話題となった『Barcelona GO!』の撮影が12日間だったのに対して、今回はロケハンだけで2週間、撮影には7週間もの期間が費やされたという、ものすごいスケールの撮影だったようだ。撮影されたデータは、5.5TBにも及んだという。
これまでのインタビューでは、どんな機材が使用されたかを細かくリストにして教えてくれた(そのほとんどがNikonだった)Rob氏だが、今回は「本当にたくさんの機材を使ったので、リストにしきれないんです。むしろ使わなかった機材をリストにする方が簡単かもしれません(笑)」とのことで、詳しく教えてもらうことができなかった。
「これまでは制限が与えられ、その範囲内で作るというのが典型的なプロセスだったのですが、今回はほぼ全ての希望が叶えられるということで、実はそれがプレッシャーでもありました」
「なんでもやっていいと」という言葉どおり、Rob氏のカメラはエアバスA380のコックピットから、空港、ドバイメトロ、そして空中浮遊を経てブルジュ・ハリファへ......と、まさに縦横無尽にドバイを駆け巡っていく。
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■進化した制作スタイル
今作でこれまでにない特徴となっているのが、撮影手法の高度化と、CGとの連携だ。
特にCGとの連携については、いくら聞いても「まあ、いろいろなことをやっています。本当にいろいろね」と言葉を濁されてしまったが、ビルを貫通していくシーンはもちろん、ビル建築がみるみる出来上がっていく部分なども、やはりCGとの合成だろう。
こうしたことは『Barcelona GO!』や『Enter Pyonyang』において、三脚にのせたカメラを一歩ずつ前進しながらコツコツと撮影してきたRob氏の"意外にも手作り感いっぱい"な撮影スタイルからは少し遠く感じられなくもないが、そもそもタイムラプス撮影による「非常に高精細な1コマ1コマ」を自在にブロー・アップするという、高度に技巧的な氏の制作スタイルを考えれば、当然の進化だったと言えるだろう。
ともあれ、こうした「あらゆる手法」を貪欲に取り入れ、誰も見たことのないタイムラプス作品に仕上げていくのが、Rob氏独自のスタイルであり、今作はその真骨頂といって差し支えないだろうと思う。
ところで、多くの映像クリエイターが「これってドローン(無人飛行機)で撮ったの?」と思うであろうカットがいくつかあるが、それについては「使っていません」との回答があった。
何度かテストはしたそうだが、良好な結果が得られなかったため、使用を断念したのだそうだ。
■今後はどこに行くの?
以前「人々の営みと文化がぎっしり詰まった場所が好き」と語っていたRob氏にとって、伝統的な習慣と、世界トップクラスの高度な消費社会が混濁した過密都市・ドバイは、もっとも理想的なモチーフだったことだろう。
しかしそうなると、今後のモチベーションはどのような方向に向かっていくのか、気になるところだ。
「私は、作品のテーマというのは、一作ごとに成長していくものだと思っています。しかし一貫しているのはJourney──旅をするということです。ドバイはもちろん非常に魅力ある都市でしたが、行ったことのない場所、未知の都市には全て興味があります。
そして私が追求したいと思っているのは、ただガラスや金属でできた建物ばかりではなく、そこにいる人間のキャラクターや役割といったものをどう表現していくのかということです。それをどうカメラを使って探求していくのか、常に考えているところです」
次回作の詳細は明かしてくれなかったが、撮影地はシドニーということで、このインタビューもシドニーに到着したその日に受けていただいた。
今まで誰もみたことのないシドニーの映像が、今から楽しみだ。
■制作風景
同じような映像制作を目指す人にとっては貴重な、今作の撮影風景。ミニクレーンなど、これまでのRob作品にはなかった機材もいろいろ。カメラの台数もすごい!
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※本記事のインタビューはSkypeを通じて行いました。その際に通訳として協力していただいた中村はるかさんに感謝します。
通訳: 中村はるか Twitter: adorer113