33年の歴史を持つ長寿番組で、初めて聴覚障害者に光が当たった。
アメリカの人気アニメシリーズ「ザ・シンプソンズ」の第722回のエピソード「The Sound of Bleeding Gums(ブリーディン・ガムズのサウンド)」で、同番組で初めてろう俳優が起用された。
アル・ジーン氏のツイート :「ザ・シンプソンズ」の新エピソードにようこそ。
ろう俳優が声優を担当するのは初めて
「ザ・シンプソンズ」は、架空の街スプリングフィールドに住むシンプソン一家の日常生活を描いたコメディ・アニメだ。
4月10日の放送では、一家の娘リサ・シンプソンが、憧れの存在であるサクソフォーン奏者・ブリーディン・ガムズ・マーフィーの息子、モンクと初めて出会う。
ブリーディン・ガムズ・マーフィーは、1995年に放送されたシーズン6で死去したキャラクターで、息子のモンクは生まれた時から耳が聞こえず、人工内耳を必要としていた。
アル・ジーン氏のツイート:「ブリーディン・ガムズのサウンド」に登場する、モンク・マーフィーを紹介します。声優はジョン・オートリー2世。放送は日曜8時からです。この回のことを考えるたびに笑顔になります。
モンクの声を担当したのは、テレビドラマ『グリー』などに出演してきた、ろう俳優のジョン・オートリー2世で、ザ・シンプソンズで、ろう者が声優をするのは初めてだという。
仕掛け人はろう者の兄を持つ放送作家
33年の歴史で初となるろう者キャラクターを登場させたのは、放送作家のロニ・スティール・ソストハンド氏だ。
ソストハンド氏には耳の聞こえない兄がおり、自らの経験をストーリーに反映させた。
「生まれつき耳の聞こえない1歳年上の兄がいることは、私がどういう人間になるかに大きな影響を与えました。私の心だけではなく、アイデンティティにも近いストーリーです」とCNNに語っている。
またこの放送では、番組で初めてアメリカ手話(ASL)が使われるが、シンプソンズのキャラクターは指が4本なので、事前に専門家に手話を見てもらい、内容が伝わるかどうかを確認したという
ソストハンド氏は「キャラクターたちの手話について、番組のプロデューサーが2人のASLの専門家に相談した」とCNNに明かしている。
さらにソストハンド氏は、「番組の内容にシェークスピアが含まれていたこともあって、手話に苦労した部分もあったが」とアメリカのエンタメ誌「バラエティ」に述べているものの、それでも「うまくやれたと思います」と自信をのぞかせた。
聴覚障害者が登場する映画やアニメが続いている
「ブリーディン・ガムズのサウンド」放送の2週間前には、主な登場人物のほとんどをろう者俳優が演じた映画『コーダ あいのうた』が、第94回アカデミー賞で作品賞を受賞した。
「コーダ(CODA:Children of Deaf Adults)」とは、ろう者の親を持つ耳の聞こえる子どもたちのことで、同作では、家族の中で唯一耳が聞こえるコーダの主人公の成長の姿が描かれている。
ザ・シンプソンズの放送は、受賞直後だったものの、エグゼクティブ・プロデューサーのアル・ジーン氏は、タイミングは偶然だったとTwitterに投稿している。
アル・ジーン氏のツイート:私たちはこのエピソードを、コーダの作品賞受賞から2週間で作ったわけではありません。ゲストのジョン・オートリー2世、ディレクターのクリス・クレモンツ、そしてこの回の放送作家のロニ・スティール・ソストハンドに心から感謝します。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。