タイ北部の洞窟で、地元サッカーチームに所属する少年たちが雨による増水で引き返せなくなって13日目を迎えた。この週末以降、現地では大雨のおそれもあり、救出活動がどうなるか不透明になっている。
・6月23日 事故発生
ガーディアンによると、洞窟内に閉じ込められているのは、サッカーチーム「ムーパ・アカデミー」の11歳〜16歳の少年12人と男性コーチ(25)の計13人。
少年たちはチームの練習後、タイ北部チェンライ郊外にあるタムルアン洞窟に入ったが、雨による増水で引き返せなくなった。
同伴しているコーチのおばのタンマさんは3日、「チームは練習後、誕生日を迎えたメンバーを祝う食事をするため、洞窟に入った」と記者団に語った。
そのためお菓子や懐中電灯を持参しており、これが生存につながったとみられる。洞窟内にある複数の縦穴も、酸素の供給に役立ったようだ。
・7月2日 タイ海軍、少年たちの全員生存を確認
タイ海軍特殊部隊は7月2日夜、行方不明になっていた少年たちを洞窟内部で発見した。少年たちは入り口から約5キロの高台で身を寄せ合っていた。軽傷者が3人いたが、手当てを受けた。
CNNなどによると、少年たちはゼリー状の栄養剤で体力を回復しつつあるという。
洞窟内の少年たちを救うため、現場ではポンプで水を吸い出す作業を進めている。しかし、ポンプの排水量は1時間に1〜2センチ程度で時間がかかることは必至だ。
気がかりなのは彼らがいつ、どうやって救出されるかだ。現在のところ、救出の目処は立っていない。
1:外から穴を開ける
まず考えられるのが、外から穴を開けて救出する方法だ。
2010年には南米チリで、33人の作業員が69日間も坑道内に閉じ込められる事故があった。
この時は、地上から地下600メートル以上の穴を開けて救助カプセルを投下。これを引き上げて全員を救出した。
今回も同様の方策が検討されたが、崩落の危険性が指摘されている。
2:雨期が終わるまで待つ
タイは10月ごろまで雨期が続く。そこで、雨水が流入する雨期の終わりを待つことも視野に入れ、現地では4カ月分の食料の準備がはじまった。
ただ、あまりに時間がかかり、雨期の間にも洞窟内の水位が増すおそれがある。
3:ダイビングで脱出
最も有力視されているのが、ダイビングで洞窟内から脱出させる方法だ。
タイ・チェンライ県のナロンサック知事は4日、子供達に水中マスクを着用させダイビングを教えていると発表した。
訓練はタイ海軍の特殊部隊(ネイビーシールズ)が担当。閉じ込められた少年らに、マスクや空気ボンベの使用法を4日から指導しているという。
有力視されているダイビングでの脱出。救助隊員らはドリルで岩肌を削り、洞窟内の通路の幅を広げる作業に入った。
だが、洞窟内には大人ひとりがやっと通れるほど狭い場所もあるという。
救助隊は現在、洞窟の入り口から約2キロの内部に救助拠点を設営。ここから約3時間をかけて、少年たちがいる場所まで食料や薬を運んでいる。
3日に少年たちを手当てした医師も、特殊部隊に潜水訓練を受けて現場に向かったが、朝日新聞によると「救助拠点から少年らのいる場所までの約3キロの移動に約6時間かかった」という。
また、今後の天気次第で救出の長期化も懸念されている。
現地チェンライ県では5日以降、雨の予報が出ており、大雨も懸念されている。洞窟内にさらに雨水が流入するおそれがあり、排水が追いつかない懸念もある。
大雨で洞窟内の水位が上昇すれば、少年たちが身を寄せる高台が浸水する危険があり、救助活動の行方は不透明だ。