アメリカ・テキサス州では、国境のリオグランデ川を越えて入国する移民への対策を強めている。
しかし実際に国境警備にあたる警察官が、州の対策が「行き過ぎで、非人道的になっている」と訴えるメールを管理官に送っていたことがサンアントニオ・エクスプレス・ニュースなどの報道で明らかになった。
警察官がメールで訴えたこと
サンアントニオ・エクスプレス・ニュースによると、メールを送ったのはテキサス州公安局で働く警察官で、名前は明かされていない。
テキサス州ではグレッグ・アボット知事先導のもと、メキシコからの移民を防ぐために、有刺鉄線で覆われた長いブイなどを川に配置している。
警察官はメールで、ブイを「罠」と表現し、移民が有刺鉄線で負傷するなどの問題をつづっている。
メールによると、妊娠中だった19歳の女性は有刺鉄線で身動きが取れなくなり、救出されたものの流産した。さらにブイから我が子を助けようとした男性が、足に重傷を負ったという。
また、「現場の警察官たちは6月に、赤ちゃんや幼い子どもを含む大勢の移民をリオグランデ川のメキシコ側に押し戻すように命じられた」と報告している。警察官らは、移民は疲れ切っており溺れるとして命令に反対したものの、最終的にメキシコに戻れと伝えるよう命じられたという。
他にも、メールには「警察官は移民に水を提供することを禁じられている」と示唆する内容もあったが、州当局はそのような命令は存在しないと否定している。
警察官は、これらの問題を説明した上で、移民の安全を守るために政策の変更を要請。
「この極度の暑さの中、水を与えないという命令は即座に撤回されるべきです」と求め、「私たちは非人道的な領域にまで踏み込んでしまっている」と訴えている。
「非人道的」と批判される移民政策
これを受け、テキサス州公安局広報のトラビス・コンシダイン氏は、同局はメールを把握しており、スティーブン・マクロー局長が監査を要請したとエクスプレス・ニュースに説明した。
また、マクロー局長は警察官らに宛てたメールで、有刺鉄線は密輸入者を防ぐために設置されたものであり「移民を傷つけるためではない」と述べている。
「密輸入者は移民の怪我などお構いなしだが、私たちは違う。有刺鉄線を越えようとする移民の怪我や溺死、脱水症状などを含むリスクを軽減するために必要なすべての措置を講じなければならない」
有刺鉄線やブイは、アボット知事が導入した移民対策の一つだ。
アボット知事は移民に対する強硬な手段で知られており、民主党支持者が多い都市に数千人の移民を移送したことなどが人権団体から厳しく批判されてきた。
今回の警察官の手紙が報道された後、テキサス州選出で民主党のホアキン・カストロ下院議員は有刺鉄線「死の罠」と呼んでアボット知事を批判。人権を守るのためにバイデン政権に介入するようTwitterで訴えている。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。