同性愛に反対する雇用主は、HIV予防薬支払いを免除されていい。テキサス州で判決

「この憂慮すべき判決は、同性愛嫌悪の扉を開け、想像できないほどの苦しみと特にLGBTQコミュニティに死を招きます」

アメリカ・テキサス州の連邦地方裁判所判事が9月7日、HIV感染予防方法・PrEP(プレップ)の保険適用義務付けは、連邦法が保護する信教の自由に反するという判決を言い渡した。

PrEPとは、セックスの前に抗HIV薬を服用して、感染リスクを大幅に軽減できる予防方法だ。

アメリカでは「医療保険制度改革法(Affordable Care Act)」で、このPrEPの保険適用が義務付けられている。

PrEPでは「ツルバダ」などの抗HIV薬が使われてきた
PrEPでは「ツルバダ」などの抗HIV薬が使われてきた
via Associated Press

しかしこの裁判では、8被告(6個人と2企業)が、PrEPの保険適用義務付けは、「同性愛行為やドラッグの使用、1人の男性と1人の女性の結婚以外の性的行為を促進させるものであり、自らの宗教的信条に反する」と主張。

リード・オコナー地裁判事はこの主張を認め、被告は「信教の自由回復法(The Religious Freedom Restoration Act)」により、雇用している労働者への保険料の支払いが免除されると判断した。

また、オコナー氏は、PrEPの保険適用義務付けは、「政府が被告に(同性愛)行為に加担させることになるため、被告側に宗教上の免除を与えるべきだ」とした。

命を危険にさらす判決、と批判

民主党の議員やHIV治療に関わる医師らは、この判決に強く反発している。 

民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、オコナー氏の判決は人々の命を危険にさらすものだと批判。

「共和党が任命した過激な連邦判事が、雇用主はPrEPの保険適用を拒否できるという判決を言い渡しました。PrEPはHIV/エイズから命を救う薬であることが証明されており、この感染症を終わらせるための重要な手段です」と声明で述べた。

「この憂慮すべき判決は、同性愛嫌悪の扉を開け、想像できないほどの苦しみと特にLGBTQコミュニティに死を招きます」

ペロシ氏は「判決は、医療保険制度改革法が保障する避妊やワクチン、定期健康診断など、他の予防医療サービスをも脅威にさらす」とも指摘している。

また、HIV薬協会のマーワン・ハダッド会長は「この判決は、科学や根拠に基づいた医療に対する新たな介入であり、受け入れられない」とコメントした。

「個人的な信念を理由に、雇用主や医療提供者が予防やケア、治療へのアクセスの拒否することを認めるのは、差別的であり危険です」

オコナー氏はジョージ・W.ブッシュ大統領(当時)に任命された判事で、民主党の政策に反対する判決を言い渡すことで知られている。

その一方で、これまでオコナー氏が言い渡した複数の判決が、上訴で棄却されてきた。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

―――

ひとりひとりが、サステナブルな地球環境の中で、自分らしく生きていくためにーー。
ハフポスト日本版は「SDGs」「多様性」「働き方」の三つのテーマを大きな柱としています。時事ニュース、企画特集や個人の声を拾い上げるオピニオンなど多様な記事を発信し、ハフポストの記事から会話を始めること、多くの関係者と協力しながら社会問題を解決することを目指していきます。

注目記事