Facebookで、見知らぬ外国人から友達申請がきたことはありませんか?
ここ数年、国際的な社会問題になっている「国際ロマンス詐欺」はこうした1通のメッセージからはじまることがほとんどです。
2019年1月、千葉県などに住むナイジェリア人とカメルーン人の男が福岡県に住む50代の女性から現金数百万円をだまし取った疑い逮捕された事件は、記憶に新しい方もいるかもしれません。
家族問題の心理カウンセラーをしている私のもとに、こうした被害を訴える女性たちが増え始めたのは2年ほど前のこと。これは看過できない、と一念発起し3年前から、国際ロマンス詐欺の注意喚起と被害者支援を行う活動をしています。
さて本日は、私が代表を務めるNPO法人「M-STEP」で2018年5月から12月にかけて、私が立ち上げた「STOP国際ロマンス詐欺」サイト、Facebook、Twitter、アメーバブログなどで詐欺被害を受けた方々を対象に実施した緊急アンケートの結果をお伝えします。
今回の調査は、金銭被害の有無にかかわらず、詐欺師との信頼関係を築いて、何らかのやり取りを経て、時間の無駄遣いや精神的痛手などを被った方々を対象に行いました。
なぜなら、この犯罪の被害はお金だけではないからです。
「信頼していた人に裏切られた」「結婚するつもりだった人が、詐欺師だった」という大きな精神的ショックを残すことがこの犯罪の大きな特徴。
その悲しみからカウンセリングに通ったり、毎日の生活に前向きになれなかったりする人も大勢見てきました。
そういった人たちを、金銭被害がないからと調査の対象からはずすことはできません。
有効回答数510人のアンケート。
データから垣間見えるリアルな声で、その被害実態をぜひ知っていただきたいと思います。
回答者性別
国際ロマンス詐偽というと女性の被害者が多いと思われがちですが、男性も被害に遭っていることがわかります。
被害者の年齢層
最も多い年齢層は、40歳代以上の中高年です。これは子育てが一段落して、時間やお金にゆとりのある年齢層でもあります。SNSの利用を楽しんだり、不特定多数の人と繋がれるというSNSのメリットを利用して海外に憧れたり、英語を学びたいなどの思いのある年齢層であることも、被害に遭いやすい要因になっているのでしょう。
被害者の婚姻状況
結婚をほのめかす手口がよく用いられるので、独身の被害者が多いかと思いきや、既婚者の占める割合が4割を超えています。しかし、日ごろ家庭問題のカウンセラーとして多くの主婦の方の離婚願望を聞いているので、全く想像できなかったことではありませんでした。実際、将来の離婚のためのタンス貯金を詐欺で失ってしまったという被害報告も。未婚・既婚に関わらず詐欺師は女性たちの心の隙間をついてくるということです。
金銭被害の有無
510人中金銭被害があったのは142人、被害にあった平均金額は442 万円という結果が出ました。最高被害金額は、なんと5400万円。
被害額を詐欺師との交際期間と紐付けて見てみると、交際期間が長いほど(半年以上から2年まで)はかなりの確率で金銭被害を受けることもわかりました。
詐欺師と出会った場所
現在はインターネット上のありとあらゆる場所に詐欺アカウントが存在しています。出会い系サイトやFacebookなどのSNSはもちろんのこと、言語学習マッチングアプリにも多くの詐欺アカウントがあるのです。LINEやSkypeで突然メッセージが入ってくるケースも。
詐欺師がよく使う職業
詐欺師が自称する職業の第1位は軍人(47%)、2位は医者・軍医(25%)です。男性が被害者の場合には、看護師・販売員などを騙ることもありますが、近年では女性兵士、女医を名乗るケースが増えています。
軍人はアメリカ、イギリスの軍人を名乗る詐欺師が大半です。そして彼らのプロフィール写真はニュースサイトやSNS上にある実在の軍人の写真が使われています。
よく使われる詐欺の手口
約半数(48%)が「箱もの」と呼ばれるものです。これは、詐欺師が戦場や出張先から大金の入ったアタッシュケースや高価なプレゼントなど架空の贈り物を被害者に「送る・送った」と言ってくるもの。さまざまな事情から税関などで荷物が止まり、税関スタッフや配送会社を装った詐欺の共犯者からのコンタクトによって手数料や罰金、保険料などを請求されます。これらのお金を払っても、荷物が手元に届くことはありません。
次に多いのが「休暇、退役、任務短縮」を利用する手口。戦場で仕事をする軍人、医師、ジャーナリストを名乗る詐欺師がよく使います。休暇、退役、任務短縮の手続きをするための費用、交通費、埋め合わせ要因の給料などを請求されます。
上記の2種類ほど頻度は高くありませんが、よく使われるのが子どもに関する費用の請求です。詐欺師はシングルファザー(もしくはシングルマザー)を装い、故郷などに残した子どもの学費、医療費、生活費、誕生日プレゼントとして、現金やパソコン、スマートフォンを要求します。子ども役の詐欺師が登場し、被害者とメールや電話でやり取りをして被害者を信用させるなど巧妙に仕組まれています。
詐欺だと気づいた理由
最も多い回答は、「金銭要求があった時」でした。第三者からの忠告も重要な役割を果たします。金銭被害に遭わなかった被害者の中には第三者の忠告によって、送金前に詐偽だと気づけたという人も少なくありません。
詐偽だと気づいた後の行動
多くの被害者が詐偽だと気づいて詐欺師との連絡を断ち、連絡手段をブロックしています。警察に相談するという人も多いですが、詐欺師が海外にいるため対応するのが難しいと言われてしまったケースが大半です。中には、その後の経緯を見守るために詐欺師を泳がせたり、詐偽だと確認するまで放置する人も。
アンケート結果からわかる「騙されやすい人」
今回の結果を受けて、国際ロマンス詐欺の被害に遭いやすい人の特徴を私なりに分析してみると、
・40代以上
・子育てなどがひと段落して、お金や時間に余裕のある層
・SNSをはじめて間もない
・ITスキルがそれほど高くない
・現状の生活に満足していないなど心に何かしらの隙がある
ということがわかりました。
多くの人がSNSに触れる機会がある現代、詐欺師が狙う隙はたくさんあります。
見知らぬ外国人からのコンタクトに関しては十分注意しましょう。戦地にいる軍人、軍医、ジャーナリストのアカウントは100パーセント詐欺アカウントだという気持ちて対処するのがいいでしょう。。それ以外の職業でも高学歴や高収入を名乗っていたら要注意。
プロフィールで使われている写真を画像検索してみるとか、メッセージやメールアドレス、携帯番号などを検索してみることをお勧めします。詐欺に使われる写真やメッセージはマニュアル化されて使いまわされているので、検索をして詐欺被害報告を見つけて詐欺だと気づくことができた人もいます。
詐欺師は、みなさんが日頃触れているSNSで騙す相手を探しています。
巧みに仕組まれた犯罪だからこそ、詐欺師がどのように近づいてきて、どんな口実でお金を要求してくるのかのパターンを知り、詐欺に遭わないようにすることが最も大切です。
詐欺師は、たとえ既婚者であってもお金になると思えば「I LOVE YOU」を連呼してきます。
私には関係ないと思わず、今回の調査結果の「犯行の手口」や「詐欺師がよく使う職業」などから、国際ロマンス詐欺の特徴をよく知って、未然に防いでいただけたらと思います。
(編集:榊原すずみ @_suzumi_s)
【UPDATE 02/27/11:30】
データを最新のものに更新し、回答数を501人から510人にしました。