赤ちゃん連れ議員も出席OKな仕組み、テレワークで 熊本市議も参加し「前進」の成果も。

熊本市議会はその後どうなったのか。子連れ会議の是非を超えて行こう!
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

熊本市議が赤ちゃん連れで本会議に出席、厳重注意を受けた問題を機に、議員と子育ての両立や、柔軟な働き方についての議論が広がっている。

12月19日、衆院議員会館ではテレワークの仕組みを活用し、子育て中でも議員活動や仕事を続ける方法を探る勉強会が開かれ、熊本の緒方夕佳市議も参加した。

テレワークは、「ICTを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されている。緒方市議も騒動後の経緯を報告、閉会日には一種のテレワークとも呼べる仕組みを活用し、本会議に出席できたことを報告した。

多様な人々が参加できることが民主主義の基本という前提のもと、「子連れ出勤や議場入り」の是非論を超えるための話し合いとなった。

熊本市議会、その後

12月定例会の閉会日だった13日、緒方市議は議会事務局や市議会との話し合いを経て本会議に参加した。議員控え室に呼んだベビーシッターに長男を預けて、授乳が必要な時にだけ一時退席する形をとったという。

本会議の開始から約1時間20分後、控え室で子どもが泣き出した。そこで、ベビーシッターから連絡を受けた事務局が議員席の電話を鳴らし、緒方市議はいったん退席。控え室で授乳をし、再び議場に戻った。

控え室で緒方市議は、授乳をしながら議場のネット中継で議会の行方を見守った。採決の直前に「走って議場に滑り込み」、採決にも参加することができた。ただ、2つの承認案件について見落としてしまい、参加することができなかったという。

緒方市議は「賛否色々な意見をいただいたが、こうした前進があったことは大きな成果。私も『授乳できずに、預けた子が泣きっぱなしでは』と不安になることなく、安心して議会に参加できた。ただ、大切な採決を2つ飛ばしてしまったことは課題の一つとして残った」と話した。

議員経験の女性たち「代理採決なども必要」

勉強会には多くの女性議員・経験者らが参加し、意見を述べた。

Yuriko Izutani/HuffPost Japan

前川崎市議会議員の吉沢章子さんは「私が初当選した2003年、控え室には女性用の着替えスペースさえなかった。子育てを理由に躊躇してしまうことが女性が政治にチャレンジする障壁になっている。私自身も両立が難しいと子どもの成長を待って政治活動を始めたが、時代は変わった。色々な可能性があると感じた」とテレワークなどの技術活用に期待を寄せた。

前東京都議の塩村文夏さんは「都議会では一人会派の場合、控え室も個人の裁量で自由に使える。民間企業よりもよほど働きやすい環境と感じる。ただ、議会中は集中力が必要で議場への赤ちゃん連れは難しいのでは。採決の時などは、素早く立ったり座ったりしなくてはならず間違えがあってはいけない。システムを変える必要もあるかもしれない」。

また、前品川区議の阿部祐美子さんは「議員がきちんと仕事をしたかどうか、『議会に出席している』こと以外で測りづらいことも課題。子育てだけではなく障害やけが、病気の人もいる。どうしても出席できない場合に代理採決などの仕組みも必要では」と話した。

「次世代に繋げられなかった責任を感じた」

勉強会は井戸正枝・前衆院議員らの呼びかけで実現した。テレワーク導入の第一人者、田澤由利さん(テレワークマネジメント社長)がテレワークの技術や実践例などを紹介した。

勉強会の隣室には、第2会場が設けられ、ビデオ会議で本会場と結ばれた。この仕組みによって、子連れ参加者は、途中で子供が泣いたり騒いだりした場合にも、勉強会の進行に支障がないよう、親子で隣室に移動して参加を続けることが可能になった。

第2会場
第2会場
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

また、兵庫県姫路市の駒田かすみ議員は、市議会の控え室などから遠隔で参加した。

田澤さんは「議会や仕事と生活をどう両立できるか。そのハードルを越えるツールとしてテレワークを活用してほしい。通勤時間を省略すれば、例えば子育て中の社員が時短ではなくフルタイムで働けるなど、企業にとってもメリットがある」。

5児の母でもある井戸さんは「熊本市議会の件では、子育てをしながら政治に関わってきた私たちの工夫や苦労が、次世代に繋がっていなかった責任を感じた。今後につながる議論を深めたい」と語った。

井戸正枝・前衆院議員
井戸正枝・前衆院議員
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

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