みなさま、渡邉英徳@ボストンです。4月から始まったハーバード大エドウィン・O・ライシャワー日本研究所での研究期間も、残すところあと3ヶ月となりました。
こちらに来てから企画を始め、前回の記事でご報告した「日米・高校生平和会議」も、実施に向けて順調に進捗中です。多くのかたのご協力のもと、ほぼ実施確定のところまで来ました。今回の記事では、企画の現状を報告します。
クラウドファンディングの状況
5月末から開始したクラウドファンディングは、開始後一ヶ月で目標額の75%、113万円に到達しました。日本・アメリカをはじめとする世界中の方々が支援してくださっています。本当に嬉しく思います。期間は8月下旬まで、残り約2ヶ月です。
現時点では、参加者がある程度の額(航空券代・滞在費)を自己負担する必要があります。今回のクラウドファンディングの資金で、可能な限り負担を減らしたいと考えています。ぜひ、ご支援・ご応援のほどよろしくお願いいたします。
日米・高校生平和会議の企画進捗
ボストンに拠点を置くNPOであるJREX (The Japanese Resource Exchange)およびJB Line, Inc. (Japanese Bostonians Support Line)のご協力のもと、順調に進行中です。さらに、広報戦略についてはThe Pitch Room, LLCの佐藤広子さんにお力添えいただいています。
これらのご縁は、ボストン日本人研究者交流会で「偶然」知り合った北原秀治先生のご紹介によるものです。特にボストンにおける、日本関係者のつながりの強さに驚かされています。
先週末、私が6月に招待講演を行なった、ウィルミントン大学平和資料センターのTanya Maus先生のご協力を得て、英語版ウェブサイトを公開しました。開催に向けて、随時アップデートしていきます。ぜひご参照ください。ウィルミントン大学平和資料センターは、本プロジェクトの共催団体です。
特に英語版のプロジェクト名「Technologies of Peace」を決めるにあたっては、Facebook上で多くのアイデアを提供していただきました。Tanya先生、ノースカロライナ州立大のLevi McLaughlin先生、ノースイースタン大図書館のSteven Braun先生、そしてHibakusha StoriesのKathleen Sullivanさんはじめ、アメリカ・日本のみなさまに感謝です。
写真の右から二人目がTanya先生です。
クラウドファンディングと同時進行で、日本側の参加者選抜・アメリカでの参加校の呼びかけ、会場確保やオーガナイズを進めています。現時点での参加校・人数を以下に示します。数多くの高校が名乗りを上げています。
- 広島女学院高等学校(広島)
- 活水高等学校(長崎)
- 工学院大学附属高等学校(東京)
- Stuyvesant High School (New York, U.S.)
- Lincoln-Sudbury Regional High School (Boston, U.S.)
- Boston Latin Academy (Boston, U.S.)
- Noble and Greenough School (Boston, U.S.)
写真はLincoln-SudburyのTom Danko先生と。広島女学院高との交流経験もお持ちの、とても熱いかたです。あっという間に意気投合しました。
日程・会場も確定しました。スタイベサント高校はニューヨークでトップクラスの公立高校。そしてハーバード大学サイエンスセンター、ボストン公共図書館ともに、観光施設でもあります。たくさんの方のご協力のもと、最高の会場を確保できました。
- 9/16 ニューヨーク・スタイベサント高校
- 9/18 ハーバード大学サイエンスセンター
- 9/19 ボストン公共図書館
また、Kathleen Sullivanさんのご紹介のもと、6月に国際連合軍縮部(UNODA:United Nations Office of Disarmament Affairs)でプレゼンテーションを行ったところ大好評で、スペースに空きがあれば、会場を提供してもらえるかも知れません。偶然にも、ニューヨークでの実施予定日が「国際平和デー(International Day of Peace)」の式典開催日と重なっており、「日米・高校生平和会議」の実施にはピッタリです。会場が確定したら、またお知らせいたします。
アメリカにおける「Atomic Bomb」
Tanya Maus先生のご案内のもと、国立ライト・パターソン空軍基地博物館(National Museum of the USAF - U.S. Air Force)を見学してきました。広大な敷地に、さまざまな軍用機が展示されています。
広島・長崎原爆については、投下に至るまでの「コンテクスト」が説明されており、被害の実態についての展示はほぼありませんでした。また、日本の特攻専用機「桜花」が「狂気」の象徴として展示されており、原爆投下の必要性が強調されています。ICBM(大陸間弾道ミサイル)の実機が展示されていることには驚かされました。ここでも「Peace Keeper」としての側面が強調されています。
こうした展示施設を、多くのアメリカの人々が社会見学の一環として訪れ「核兵器」についての知識を得ています。日本、特に広島・長崎における「平和教育」とはまったく異なる状況ではないかと思います。簡単には埋められない社会的なギャップです。そして、十分な知識と語彙を持たない若者たち・高校生にとってはなおのこと、こうした側面からの議論は難しいものになると考えられます。
こうした状況を受けて、「日米・高校生平和会議」では、ポリティカルな側面からアプローチせず、「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」を、まずは体験してもらおうと考えています。そして「私たちと同じような"普通の人々"が、一発の原爆によって"被爆者"となってしまう。幸せに過ごしている日常が終わってしまう。それが原爆投下であり、戦争なのだ」というメッセージを、日米の参加者に受け取ってもらいたいと思っています。それは、アーカイブズ・シリーズに、私たちが込めたメッセージでもあります。
アメリカにおける「ソーシャル・ネットワーク」の強さ
ここまで報告してきたように、たくさんの方のお力添えのもと、企画は順調に進んでいます。しかし4月に思い立ってからここまで来るまでには、それなりの苦労を伴いました。とにかく人に会い、企画を説明し、協力をお願いする日々の連続です。そんななか改めて実感したのは、アメリカにおける「ソーシャル・ネットワーク」の強さです。
飛び込みでメールを送った人が、ある人につないでくれる。その人を経由して、また新たな人々につながる。興味・関心をベースに、初対面の相手を含む人々が迅速につながっていき、プロジェクトがかたちになっていく。まさに「ソーシャル・ネットワーク」が強力に機能しているという印象です。実際、3ヶ月弱の間に、以下に示すような大規模なチームができあがりました。
SNSが、なぜアメリカで生まれたのか。今では、その理由がよくわかるように思います。アメリカの人々にとっては、FacebookやTwitterが登場する以前に「ソーシャル・ネットワーク」は社会の基盤を成しており、活用していたもの。その「ソーシャル・ネットワーク」を「サービス」化したものが「SNS」なのかも知れません。
もちろん、前回の記事で書いたように、我々が示す「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」や「日米・高校生平和会議」の趣旨に、たくさんの方のご共感を得ているのも確かだと思います。しかし、上記の「ソーシャル・ネットワーク」を礎として、日本での経験とは比較にならないほどのスピードで企画がリアライズされていく、そんなアメリカの状況に、日々驚かされています。
(一方で、いまはアメリカは夏休み期間に入っており、さっぱりメールの返信が来なかったりもします)
さて、ニューヨークではNational 9/11 Memorial & Museum(国立9/11記念博物館)とThe 9/11 Tribute Center(9/11追悼記念館)を訪問し、アーカイブズ・シリーズをプレゼンテーションしてきました。日米・高校生平和会議への協力依頼が主な目的でした。それに加えて、アーカイブズ・シリーズのノウハウを活かして「9/11アーカイブ」をつくろう、という話になりました。
ニューヨーク同時多発テロが発生してから15年が経ちます。私も、ぜひ「9/11アーカイブ」を実現したいと思い始めました。とはいえ、この企画がリアライズされるまでには、まだ時間が掛かるはずです。随時、このブログで報告していきます。