IT&マーケティングに特化し、幅広くリクルートのシステム開発を担うリクルートテクノロジーズ(RTC)。新ミッション「Technologies for Pleasure」のもと、バリューとして設定した行動指針のひとつ「ありたい未来を語ろう」について、執行役員の西川滋が自身の経験を交えお伝えします。
「どんなIT組織でありたいのか」未来を描けないことへの苦悩
みなさんはどんな未来を描いていますか?
「ありたい未来を語ろう」
ーー ひとつ上の視界から考え、望みと喜びを言葉にし、みんなを共感の渦に巻き込もう ーー
これは、RTCが大切にしていきたいバリューのうちのひとつです。未来がどうなるなんて分からない。けれど、ありたい未来を言葉にすることで、その未来を現実のものにする力を私たちは持っていると信じています。
ですが、私自身、未来を描けずに苦悩していた経験があります。まずはそこからお話ししましょう。
私がRTCの母体であるリクルートに入社したのは、1993年のこと。はじめは、現在のリクナビネクストやあっせん事業、教育研修の営業を担当していました。当時は紙の情報誌が全盛の時代で、ITやWebサービスをお客様に提供するなんて発想すらありませんでした。
2000年前後にインターネットが広まったことで様子は一変。「これからはITがビジネスの中心になる」と、IT部門への異動を申し出ました。もちろん、ITに関しては素人そのもの。仕事に使えそうと思える情報には片っ端から飛びつき、知識と経験を積みました。
それから時は流れて2012年。ホールディングス体制への移行を目前に控えた当時、私はリクルートが提供する各種Webサービスのシステム開発・運用組織の部長を務めていました。
この10年で世の中はガラリと変わり、リクルートの主力サービスは紙からWebへとシフト。私たちIT組織も、分社化後はRTCというITとWebマーケティングに特化した新会社になることが決まっており、存在感はますます大きくなっていくだろうという勢いを感じさせる時期でした。
しかし当時、私はひとり手詰まりに感じていたんです。目の前にある数多のミッションを完遂することはできるし、与えられたお題に対して最適解を導くのも得意。でも、その先に何を実現したいのか、ありたい未来を描けない。
リクルートのサービスを利用していただいた個人や企業に、ITはどんな価値を提供できるのか。なにより仕事の先に実現したい世界観、IT組織としてどうありたいかを、自組織のメンバーへ明確に提示できていませんでした。
新会社になることが決まっているなかで、今の延長線を歩み続けることが果たして正しいのだろうか。違うやり方が必要なのかもしれないけれど、それは何なのか。解決の糸口さえつかめず、気持ちは焦るばかりでした。
突然の渡米。これまでの発想・経験が通用しない世界へ
そんなとき、私はある辞令を受けます。
「10月から、アメリカに行ってくれないか」
リクルートの分社化と同時にグループ傘下となることが決定していたIndeed社への出向でした。Indeed社は、求人情報専門の検索エンジンを展開するアメリカ発のITベンチャー。アメリカ国内だけでなく世界でその存在感を強めており、リクルートのグローバル戦略における大きな要となりうる存在です。
「役割も何も決まってないから。自分の仕事は自分でつくってきて」とひとこと言われたきりで、そこで自分に何を期待されているのかさえイメージできていませんでした。とはいっても、「自分にはITのバックグラウンドがあるんだし、何らかの価値は発揮できるだろう」というくらいの気持ちで渡米しました。
ところが、テキサス州のオースティンにあるオフィスに着いて数日で、そんな気持ちは甘かったのだと痛感することになります。開発に取り組むエンジニアたちは、世界トップレベルの優秀な人材ばかり。技術の話をしてもまったく歯が立たないばかりか、エンジニアのスタンスも見ている世界も、当時のリクルートとは180度異なりました。
ここでの主役はエンジニアをはじめとしたITのスペシャリストたち。ビジネスモデルの違いも大きく影響していますが、それを差し引いたとしても、アイデアでものごとが動き、フレキシブルにシステムやサービスを日々進化させていく様子には目を見張るばかりでした。
これが「ITで世界と戦う」ということなのか。
自分のこれまでの経験や知見をまったく発揮できないことにショックを受けながらも、私には「ありたい未来」が少しずつ見えはじめていました。日本にもITドリブンな組織をつくろう。すべての事業において、もっともっとテクノロジーを主役にしていこう。そうすれば、リクルートのサービスは世界で戦えるはずだ、と。
ありたい未来を見据えたことで、考え方が変わった
2013年に帰国してからの私は、Indeed社の日本法人立ち上げに携わり、2015年からはリクルートホールディングスが統括するグループ横断のIT人材採用の責任者という役割が増えました。
そして、2017年よりRTC執行役員を兼務という形で担うことに。アメリカでの経験をきっかけに、「日本だから、リクルートだから」といった既存のあるべき論があまり気にならなくなり、ものごとの捉え方も大きく変わったんです。
たとえばITによる業務の自動化。人の力で難しいことやシステム化した方が効率的という部分を切り出して自動化するという従来の発想では、単純な機能の置き換えにしかならず、改善、進化の幅は狭い。一方、100%自動化するという発想からスタートすると、業務のあり方からガラッと変わり、価値も増大し、イノベーションにつながります。
人材採用だってそう。「直接面接しなければ応募者を正しく評価できないって本当?」と、それまでの通念を疑ってみたんです。
今の採用の常識から考えれば、なんて無茶なことをと言われるでしょう。ですが、目標は「一緒に世界で戦えるIT人材との出会い」で、手段はなんだっていい。テレビ会議システムによる遠隔での会議が珍しくなくなったように、テクノロジーはいつも昔の非常識を今の当たり前にしてきました。
実際にモニター越しの面接でもまったく問題はなく、その人の持つコミュニケーション力や論理力が際立って目立つなど、対面で会った場合とは違う側面での人物評価ができることがわかりました。
振り返ってみれば、昔の私は1年後や2年後の未来を予測しながら動いてはいたけれど、10年先の未来は考えようともしていなかった。予測可能な未来とは、言ってしまえば、ありきたりな既定路線。だから語るべきありたい姿を提示できず、もがいていたのだと思います。
どうなるかではなく、どうありたいか。10年後の未来を語ろう
テクノロジーは進化のスピードがはやく、最新技術はあっという間に陳腐化してしまうことの連続。これさえあれば安泰というものはなく、これからの未来は不確実性がより高いものでしょう。
ですが、だからこそ描く未来に制約はないのだと思うようになりました。かつてアメリカで感じたような自分の価値が通用しなくなるかもしれないという怖さは、頭と心の片隅に居続けているんだけれど、一方でテクノロジーが生み出す新しい世界がどんなものかを思い描くことが楽しくて仕方ない。
今の自分を基準にこの先どうするかというよりは、10年後に自分や会社や世の中がどうあってほしいかを描き続けたい。現在地から予測できるゴールではなく、未来に定めたゴールを起点に今を決めていけば、サービスやプロダクトはそのあり方が大きく変わっていくのだと信じています。
実はこの考え方って、リクルートが創業以来大切にしてきたことでもあり、脈々と受け継がれてきたDNA。ありたい未来を語り、前提を疑い、就職・住宅・結婚など社会にさまざまなイノベーションを起こしてきたのが、先人たちの歩みです。
そのDNAを引き継ぎ、今度は私たちIT人材が先頭に立ってイノベーションを生み出していく。そのイノベーションの源泉のひとつが「ありたい未来を語る」ことなんです。
ITのスペシャリストたちが、混沌とした未来に意気揚々と乗り出し、その荒波にワクワクしながらそこかしこで「こうしたらユーザーはハッピーになる」「世の中はもっと良くなる」と語りあっている状態。それが、私の描くありたい未来。それが実現できたなら、10年後の当たり前をRTCのみんなとつくれているはずです。
理想の未来は待っていればいつか訪れるものではなく、自分たちでつくるものですから。
※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。