企業の広告が「炎上」するケースが後を絶たない。広告主である企業や代理店の狙いが、思惑通りユーザー(受け手)に伝わらない。一体なぜなのか。
そんな疑問について考えるイベントが7月23日、東京都内で開かれた。参加者たちがインスピレーションを得るよう、フラメンコの演出もあった。
広告とフラメンコ。思いがけない組み合わせの理由は?
主催したのは、国内外でインターネット広告配信を手がける「Teads Japan」。企業の広告担当者や代理店関係者、広告に関心のあるハフポスト読者たち約50人が集まった。
冒頭、参加者たちを驚かせたのは、情熱的なフラメンコショーだった。
広告とは無関係のフラメンコをあえて「登場」させたのは、参加者たちにフラメンコの歴史から広告の現状を考えてもらおうとする主催者側の狙いがあったからだ。
広告の世界は今、「分断」に直面していると言える。企業や代理店側が広告に込めた意図が、狙い通りに消費者に伝わらず、ひどいケースでは「炎上」。広告に対する双方の意識に分断が生じている。
フラメンコは、ジプシーたちが差別や迫害という「分断」の結果、生まれた民族舞踊だ。彼らが苦難を乗り越えて文化を手にした歴史になぞらえて、参加者たちも広告の新しいあり方を探った。
広告によって支えられるコンテンツ
ステージの余韻冷めやらぬ中、Teads Japanパブリッシャーチームのシニアマネージャー、城間恒斗氏とハフポスト日本版編集長、竹下隆一郎が登壇した。
ステージ上にはTeads JapanとHuffpostのロゴがあしらわれたボード状の「広告」が置かれた。これについて城間氏が「みなさん、この広告に気づいていましたか?」と指摘すると、参加者からは「何かと思った」「邪魔だなぁと思っていた」などの声が上がった。
城間氏は「本日のイベントは参加費無料ですが、それはこうした広告があって成り立っているものです」と発言。実生活でも、広告によって支えられているコンテンツがたくさん存在することを伝えようと意図的に置いたことを明かした。これに対し、参加者たちは納得の表情を見せた。
その後、参加者たちは小グループに分かれ、フラメンコを普及させる広告を考えるワークショップに取り組んだ。
あるグループでは、「できる限りターゲットを広くして攻めた方が良い」「すでにフラメンコに興味関心がある人に絞った方が効果的だ」という主張の対立や、「消費者が受け身になってしまう一方的な広告は印象に残らない。SNSでハッシュタグキャンペーンを展開する、チラシでチケットを割引にするなど、消費者が参加できる形の広告の方が有効では」という消費者からの率直な意見もあり、広告をめぐって実際に起きている意識の「ズレ」と重なった。
「分断」から見える、新しいものさし
イベント後半には2回目のフラメンコショーが行われた。このショーは、参加者も手拍子や掛け声で盛り上げる形で進められ、会場の熱気は最高潮に。ワークショップでは、立場の違いから「分断」が生じた参加者らが「解放」される場面となった。
参加型のショーを体験した参加者は「フラメンコの鑑賞自体初めてだったが、こんなに楽しめるものだなんて、びっくり!」「こうしてフラメンコを身近に感じると、それを普及させる広告のアイデアにも繋がりやすくなる」などと話し、「分断」「解放」を経て「再発見」へのきっかけとなったようだ。
イベント最後のトークでは、Teads Japan マネージングディレクターの今村幸彦氏から「広告の『分断』を大きくしてしまったのはインターネットの登場だと思っているんです」という話があった。竹下編集長は「だからこそメディアは、広告とユーザーを繋げる役割を担っていかなければならないのでは」と話し、イベントを締めくくった。