ロックダウンが続くイギリスで、一人の先生が、低所得家庭の子どもたちに毎日徒歩で給食を届けている。
晴れの日も雨の日も給食を届けているのは、イギリス東部グリムズビーにある「ウェスタン・プライマリー・スクール」の副校長、ゼーン・パウルスさんだ。
パウルスさんは毎日、約80食のスクールランチをバッグに入れ、身体中にくくりつけて、低所得の家庭に届けている。
イギリスでは、低所得の家庭の子どもたちが無料で給食を食べられる、フリー・ミール制度がある。
3月23日にロックダウンになった時、まず最初に「フリー・ミール制度を受けている子どもたちの食べ物をどうしようと考えた」とパウルスさんはabcニュースに話す。
「最初に頭に浮かんだのは、子どもたちのどうやって食事を食べさせたらいいかということでした。私たちの学校には、助けが必要な家庭の子どもたちも通っています。何か策を考えなければと思いました」
パウルスさんによると、ウェスタン・プライマリー・スクールでは10人に4人がフリーミールを利用している。しかしロックダウンの間、親や子どもに取りにきてもらうわけにもいかない。考えた末に思いついたのが、各家庭に届ける方法だった。
パウルスさんは、地図を広げてフリーミールが必要な子供たちの家の場所を確認し、毎日届けることにしたとBBCに話す。
自分で届ければ、子どもたちは食事ができる上に、子どもたちの様子を確認することもできる。
パウルスさんは学校のキッチンスタッフが準備したパンや果物、サンドイッチやポテトチップスなどを紙袋に入れて、毎日2時間以上、約8キロ歩いて届けている。
パウルスさんのことを「ヒーロー」と呼ぶ人もいるが、パウルスさんは「ただやるべき仕事をしているだけ」と説明する。
「給食の配達を始めたのは、子どもたちが安全かどうか、給食を受け取ったかどうか確認するため、そしてこの大変な時に親のみなさんをサポートするためです。そして、これはいつもとは少し違う形での私の仕事なのですー子どもたちの福祉を守り、学校の中でも外でも気にかけている、ということを伝えるものです」
届けているのは食べ物だけではない。宿題も入っているという。低所得の家庭では、オンライン教育の環境が整っておらず、自宅で学ぶのが難しい子どもも少なくない。中にはWiFiがない家庭もあるとパウルスさんは説明する。
宿題を届けることで子どもたちも勉強を続けられるし、質問があれば少し離れた場所から教えることもできる。
子どもや親たちは、給食と宿題を届けてくれたパウルスさんに少し離れた距離からお礼をいったり、窓から手を振ったりして感謝を伝えている。中には、窓に「ありがとう」と書いた紙を、貼っている子どももいる。
パウルスさんは、「とても嬉しい。子どもたちの家族全員が問題過ごしていると確認でき、子どものためは学校とのつながりを保てますから」とabcに話す。
「ロックダウン5週間目、125マイル以上歩いて、2000食近くを届けました。総重量は1100キロ。何より大事なのは、私たちの学校の子供や親たちがこの大変な時期に、ずっとサポートしてくれたことです」
パウルスさんはインディペンデントに「これは、チームでやっていることです」と話す。
食事はキッチンスタッフが準備し、歩いて届けることができない距離に住んでいる生徒には、校長先生や他の先生たちが交代で食事を車で届けている。
「私だけが重労働をしているように見えますが、そうではありません。他の先生も、車で遠くに住む子どもたちに食事を届けています」
「私たちは毎週、彼らに電話をかけて、生活に問題はないか確認しています。そして毎日一緒に給食の準備をしています」