日本ボクシング連盟は8月12日、TBSからの謝罪文を受け取ったと発表した。同連盟は8月8日にTBS系で放送された報道番組「サンデーモーニング」の中で、張本勲氏の女子ボクシングを蔑視するような発言に対して、TBSに抗議していた。今回の謝罪文について日本ボクシング連盟は「当連盟からの抗議文に対して、内容を十分に汲み取った、迅速かつ真摯な対応をして頂いたと思います」と評価している。
■張本氏の発言をめぐる経緯は?
問題となったのは、8月8日にTBS系で放送された報道番組「サンデーモーニング」だ。番組中で、東京五輪で女子ボクシングフェザー級で入江聖奈選手が金メダルを獲得したことを報道した。これを受けてリモート出演していた野球評論家の張本勲氏(81)が以下のようにコメントした。
「女性でも殴り合い、好きな人がいるんだね。見ててどうするのかな。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技、好きな人がいるんだ。それにしても金だから、あっぱれあげてください」
これに対して、日本ボクシング連盟は「【女性及びボクシング競技を蔑視した】と思わせる発言がありました」として10日、内田貞信会長の名前でTBSに抗議文を提出した。
「ボクシング競技が単純な、暴力的な殴り合いではないこと、技術を駆使した競技であること」を理解してもらった上で、「女性だからそんな競技に取り組むべきではないという、多様性を否定するような番組内でのご発言」を視聴者に対して訂正してもらうのが狙いだという。
■TBSが謝罪。「賛辞を贈り、称賛することが本意でした」と説明
この抗議文に対して、TBSは12日に日本ボクシング連盟に謝罪文を提出した。今回の張本氏の発言は入江選手の金メダル獲得を「日本中が沸き立つ快挙であり、この目覚ましい成果に対し『あっぱれ』との賛辞を贈り、称賛することが本意でした」と説明。
その上で張本氏の発言の中で「女性及びボクシング競技を蔑視した」と受け取られかねない部分があり、「本来であれば番組内で対応すべきでした」と非を認めた。「不快に思われたボクシング関係者や視聴者の皆さまに誠に申し訳なく存じます」と謝罪した。
日本ボクシング連盟によると、謝罪文の全文は以下の通り。
■TBSの謝罪全文
2021年8月12日
一般社団法人日本ボクシング連盟
会長内田貞信様
TBSテレビ報道局「サンデーモーニング」
制作プロデューサー金富隆
サンデーモーニングでの張本勲氏の発言について
私どもが放送している「サンデーモーニング」8月8日放送での張本勲氏の発言に関し、貴連盟より遺憾の意を表す書面を拝受いたしました。
張本氏の発言は、オリンピック女子ボクシングフェザー級の入江聖奈選手(日本体育大学)が金メダルを獲得したことについて、日本中が沸き立つ快挙であり、この目覚ましい成果に対し「あっぱれ」との賛辞を贈り、称賛することが本意でした。
しかしながら、張本氏の発言の中には、ご指摘のように「女性及びボクシング競技を蔑視した」と受け取られかねない部分があり、これについては本来であれば番組内で対応すべきでした。当番組として、不快に思われたボクシング関係者や視聴者の皆さまに誠に申し訳なく存じます。
今回の発言について、張本氏は、次のように述べています。
「私は元々ボクシングが大好きで、白井義男さんやファイティング原田さんが世界チャンピオンになった時に、飛び上がって喜びました。今回、入江選手が金メダルを取った時も、飛び上がって喜んでいました。今回の私の発言は言葉が足りませんでした。入江選手の快挙を称えると共に、自分も金メダルを取れるのではと思って、ボクシングをやる女性が増えてほしいということを本当は言いたかったのです。言葉足らずで反省しています」
私どもとしては、コメンテーターの発言も含め、番組の姿勢が「多様性を否定する」かのように受け止められることのないよう、一層留意しながら番組作りを進めて参ります。
「女子競技は男子競技以上に、安全面に配慮されている」との貴連盟のお考えについて理解を深めながら、今後ともボクシング競技をはじめとするスポーツの素晴らしさを伝えて参りたいと存じます。
ご理解を賜れば幸いに存じます。