アフリカ南部のタンザニア特産の稀少な宝石「タンザナイト」。その世界最大の原石を発見した鉱山労働者が約3億円をゲットしたとBBCなどが報道し、世界に衝撃を与えた。
しかし、ガーディアンの続報によると「鉱山労働者」と報じられた人物は200人の労働者を抱える鉱山のオーナーで、原石の発見時には同席していたわけではなかった。
やや夢がないニュースになってしまったが、「売却した利益の10%が労働者たちに分配される」という情報もある。実際に原石を見つけた人や同僚にも臨時収入が入りそうだ。
■BBCは「鉱山労働者」と紹介
BBCの6月24日の報道によると、タンザニアの「小規模鉱山労働者(small-scale miner)」のサニニウ・ライザーさん(52)が6月中旬、9.2kgと5.8kgのタンザナイトの原石を採掘し、24日にタンザニア鉱山省に77億4400万タンザニア・シリング(約3億6000万円)で売却した。これまでのタンザナイトの原石の最大記録は3.3kgなので大幅に記録を更新したことになる。ジョン・マグフリ大統領は、この発見についてライザー氏を祝福するために電話をかけたという。
2000頭の牛を飼うライザーさんは牛を1頭解体して発見を祝うほか、原石の売却で得た資金で地元のシナンジロ地区に投資する計画だ。「ショッピングモールと学校を建てたい。ここには子どもを学校に連れて行けない貧しい人々がたくさんいる」と述べたという。
■ガーディアンは「鉱山のオーナー」と続報
鉱山を自ら採掘していた労働者が一夜にして億万長者になるなんて、とても夢のあるニュースに思える。しかし、25日に続報を出したガーディアンによると、ライザーさんは一介の労働者どころか、鉱山のオーナー(mine owner)だった。
ガーディアンによると、ライザーさんは200人を超える労働者を抱えて採掘作業をしている。牛や農業のビジネスで得た利益で資金を提供しており、彼が雇った労働者によって記録を破る発見がなされたときには、現地にいなかったという。彼のマネージャーはガーディアンに次のように語った。
「採掘プロジェクトにはロジスティクスの専門家、エンジニア、地質学者も参加しています。自分で鉱山に原石を掘りには行きません。採掘は多くの労働者が担っています」
ガーディアンでは、最初の原石は9.27kg、2番目は5.103kgだったと説明。原石の販売収入の全てをライザーさんが独占するわけではないようで、鉱山省の広報担当者の発言として「売却した利益の10%が労働者たちに分配される」という言葉を紹介している。
■タンザナイトとは?
宝石販売業を営む諏訪貿易株式会社の「宝石辞典」によると、タンザナイトはパープルの入ったブルーが美しい宝石。1960年代にタンザニアでブルーのゾイサイト(灰簾石)の採掘が始まった。
1967年、アメリカのティファニー社が、このゾイサイトを産出国にちなんで「タンザナイト」と命名。積極的に販売促進したことで世界的に知られることになった。硬度は6~7で、水晶の7を基準に考えると耐久性は十分とは言えないという。