「高輪ゲートウェイ」は「イタい」 山手線新駅名の撤回求める署名、JR東に提出

新駅名として「高輪」の採用も提言された。JRは署名の受領はしたものの、「駅名を変更する予定はない」と回答したという。
今尾恵介さん(左)、能町みね子さん(真ん中)、飯間浩明さん(右)
今尾恵介さん(左)、能町みね子さん(真ん中)、飯間浩明さん(右)
HUFFPOST JAPAN

山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ駅」の名称撤回を求める4万7934人分の署名が3月27日、JR東日本に提出された。署名活動を行なったコラムニストの能町みね子さんと日本地図学会の今尾恵介さん、国語辞書編纂者の飯間浩明さんは署名提出後、都内で記者会見を開いた。今尾さんは、高輪ゲートウェイは「おじさんたちが名付けたキラキラネーム」と表現、いまどきの若者の感覚では「おじさんイタいよねという印象」だと痛烈な批判をした。

能町さんらは「高輪ゲートウェイ」の名称撤回を求める署名と共に、新駅名として「高輪」を採用する提言も提出した。土地の古い歴史や、地元住民を含めた多くの人の支持があることなどを検討し、「高輪」が最も適切だとの結論に至った。

「高輪ゲートウェイ」という駅名をめぐっては、2018年12月4日の発表直後から「ダサい」「センスがない」「駅名が長すぎる」などという意見が相次いだ。また、約6万4000件の公募のうち、1位で8398票の「高輪」を抑え、わずか36票(130位)の「高輪ゲートウェイ」が採用されたことから、「何のための公募なのか」という批判も巻き起こった。

こうした状況を受け、能町さんは2018年12月上旬から約1ヶ月間、インターネットを通じて署名活動を行なった。お笑い芸人のカンニング竹山さんやデヴィ・スカルノさんなども署名に賛同した。

JRは署名の受領はしたものの、「駅名を変更する予定はない」と回答したという。

今尾恵介さん(左)、能町みね子さん(真ん中)、飯間浩明さん(右)
今尾恵介さん(左)、能町みね子さん(真ん中)、飯間浩明さん(右)
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 ■ 「高輪というのは、何も足さない何も引かないというのが一番いいのでは」

 今尾さんは、日本の駅名について「歴史的には、ほとんどがその所在地の名前をつけるのが大半だった」と指摘する。とりわけ山手線の駅は、全て従来の地名から名付けられてきた。

また、国内外でも「歴史的な地名を尊重する」動きが大きくなってきているという。日本では金沢市などで、地名が少しずつ復活している。アメリカでは、アラスカ州のマッキンリー山が、先住民族の文化を尊重するため「デナリ」に正式に改称された。

このことから、今尾さんは

高輪というのは、何も足さない何も引かないというのが一番いいのでは。非常にシンプルなので商売的にはあんまり儲からない地名かもしれないが、長い目で見れば色がついてなくて、高輪という何百年も前から続いている地名をそのまま駅名につけるのは、古いようで新しい。

(JRのような)大きな会社では、決定してしまったものを元に戻すのは大変な困難を伴うとは思うが、ふと我に返って文化的なこと歴史的なこと、これから100年、200年続くかもしれない駅の名前を考えるという視点に立って、勇気ある決断をして頂きたい。

と主張した。 

今尾恵介さん
今尾恵介さん
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街のブランド力が損なわれる可能性がある

 飯間さんは、「高輪ゲートウェイ」という名称によって、土地が持つ魅力や可能性が損なわれる可能性を指摘した。高輪は、泉岳寺や旧高松宮邸、高級住宅地など、江戸時代以来の古い歴史と伝統が残る街。今後整備が進むにつれて、浅草のようにブランド力が高まっていくことも期待される。しかし、「高輪ゲートウェイ」という駅名がつけば、「高輪といえばゲートウェイ」というイメーシが固定化し、古い寺社や高級住宅地などのイメージが感じられなくなってしまう恐れがある。

江戸時代以来の歴史ある街として集客を図れる可能性があるのに、その可能性が潰されてしまうことに危機感を持ちます。

おじさんの「イケイケで新しい感覚」は、現代の若者には「イタい」

今尾さんは、「高輪ゲートウェイ」が多くの若者から「ダサい」と評されていることに対して、「世代間の感覚の違い」があると考える。今回「高輪ゲートウェイ」という駅名を最終決定したのは会社や役所の幹部の50−60代の「おじさんたち」に間違いない。その世代は、「新しいものを作るのが新しいんだ」「外国のものがえらい」という感覚があり、駅名に限らず「カタカナ混じり」の名前をつけたがる傾向があると言う。しかし、現代の若者は「欧米に追いつけ、追いこせみたいな感覚がなく」、古くからあったものにも自然に価値を見出せる世代。おじさんの「イケイケで新しい感覚」は、現代の若者には「イタい」のである。

ゲートウェイみたいな、いかにも無理して装っている駅名を、非常に不自然で力が入りすぎていて、脱力系の若者としては『おじさん痛いよねっていう印象』になるのではと感じます。

「嫌だ」と思いながら多くの人がその駅名を使うのは非常に不幸なことです

 飯間さんは、5万人近い署名が集まったことを踏まえて、「多くの人に支持される駅名」がふさわしいと主張する。

 駅は公共交通機関なので、その駅の名前が嫌だからといって利用しないわけにはいかないですよね。山手線の駅ならなおさらのことです。「嫌だ」と思いながら多くの人がその駅名を使うのは非常に不幸なことです。

 だからこそ、一般公募でも大きな支持を集めた「高輪」がふさわしいと主張する。

JRが駅名を変更する方針がないことを踏まえ、能町さんは、「高輪ゲートウェイと名付けられてしまうかもしれないですが、『高輪がいいんじゃないか』という話は続けていきたいと思います」と話し、今後もイベントなどの草の根的な活動を通し世間に訴えていく方針を示した。

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