台湾総統選挙の投票が1月11日、始まった。
選挙には3人が立候補しているが、再選を目指す与党・民進党の蔡英文総統と、最大野党の国民党・韓国瑜高雄市長の事実上の一騎打ちという構図。
蔡総統と韓市長は、“台湾統一”を悲願とする中国共産党への態度の違いが鮮明で、選挙においても争点化している。両者の主張と選挙戦略を、投票前日に行われた大規模集会から読み解く。
■「民進党は汚職と腐敗」
投票前日の夜、南部・高雄市。韓氏を応援する集会では、バンドによる音楽の演奏や応援演説が続けざまに行われた。主役の韓氏の登場は開始から4時間後。
「当選」を意味する「凍蒜(ドンスアン)」コールが鳴り響くなか、目を赤くしながら妻や娘とともに壇上にたった韓氏は、トレードマークでもある軽妙な語り口で支持を呼びかけた。
韓氏はまず「市長の仕事は道を舗装することではない。それは最低限やるべきことだ」とし、地元市長として経済成長を成し遂げた実績を強調。そこからは一転して与党・民進党の批判を続けた。
韓氏は、台湾人は民進党に期待を寄せていたが、それはすでに裏切られたと主張。「見てわかるように汚職と腐敗の政党だ。今の民進党は良心のある政党ではなく“金光党”に変質した」「台湾メディアの90パーセントを買収し、都合の良いことばかり報道させ、政権政党に対する批判や監督をさせなかった」などと指摘した。
また、蔡総統が中国共産党に強硬的な姿勢を示したため「中国との関係は最低のレベルまで冷え切った」と批判。
南太平洋のキリバスやソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交を結んだことを念頭に「この3年間で7つの国と断交し、あらゆる国際組織に参加できなかった。台湾は一歩も外に出て行けていない」と訴えた。
■香港の若者たちが示した
これに対し、再選を目指す蔡総統は、台北市などで集会を開催。若い世代に自由と民主主義を残す選挙と位置付け、票の上積みを狙った。
台北市の集会では、留学や就職などで世界中に散った台湾人、およそ80人が一時帰国し、「東京」「大阪」「アメリカ」「ドイツ」など現在の居住地が書かれたボードに持って壇上に登場。
そして、カナダで暮らすという女性が代表でマイクを握り、「海外に出て行った台湾人たちはその身で民主主義と自由の大切さを知った」と訴えた。
その後大歓声に迎えられた蔡総統は、ライバルの韓氏とは対照的に淡々とした語り口。「民主主義は空から落ちてはこない。無数の戦いと犠牲のもとに、民主主義がこの土地に根付いたのだ」などと一貫して民主主義と自由を守る大切さを訴えた。
蔡総統は、反政府デモが続く香港にも言及。「香港の若者たちが一国二制度はだめだということを私たちに示してくれた。今度は、台湾人が自由と民主主義の価値観は一切の困難を乗り越えられると、香港に示すべきだ」とし、一国二制度のもとに台湾統一を図る中国への強硬姿勢を鮮明にした。
台湾総統選挙には、少数野党・親民党トップの宋楚瑜氏も立候補している。総統選挙は即日開票され、11日夜にも大勢が判明する見通し。