日本人の男性パートナーと生活をともにしてきた台湾出身の男性に、国が在留特別許可を付与した。
3月22日に東京・霞ヶ関で開かれた記者会見で、男性2人の弁護団が明らかにした。
弁護団によると、外国籍の同性パートナーに在留資格が付与されるのは、把握している限りでは国内で始めて。
「同性カップルの権利保障にとって、極めて大きな意義があることだ」と弁護団は喜ぶ。
■「パートナーは私にとって大切な家族です」
台湾出身の男性Aさんは、記者会見で次のように喜びと感謝の言葉を語った。
「愛する人と一緒に暮らすのは、異性カップルは社会的に認められていますが、僕らの場合は同性カップルであるので隠れて生きていくことしかできませんでした」
「日本の憲法は同性婚を禁止してはいません。同性同士のカップル婚姻ができれば、僕たちの人生も変わっていたかもしれません」
「弁護団の方々や支援者のみなさま、たくさんの励ましの言葉をありがとうございました。日本政府の寛大な裁量にも感謝しています」
「パートナーは私にとって大切な家族です。これからも支え合って生きていきたいと思います」
■ 在留を許可されるまでの経緯
Aさんが日本に初めて来たのは1992年。日本語学校に入学するために、1年間の留学生ビザで来日した。
その後、日本語関係の資格を取得するために短期滞在ビザで再び日本を訪れた際に、日本人男性のBさんと出会った。
同性愛者であることを家族から否定され孤独を感じて生きてきたAさんは、Bさんと生きていきたいと強く思ったという。ふたりは1993年に交際を始め、1994年に同居を開始した。
同年にAさんのビザは切れてオーバーステイになったが、AさんはBさんと一緒にいたいと思い、日本に留まる決断をした。
1995年、AさんはHIV陽性と診断された。2004年頃には危険な状況に陥ったが、Bさんや支援団体の助けで病状は回復した。
逆にBさんが仕事をやめて心の病を患った時は、AさんがBさんを支えた。
2013年に、Aさんは合法的に日本に滞在するため、Bさんと弁護士に相談。だが裁判費用をためていた矢先の2016年6月に、Aさんは職務質問を受けてオーバーステイで逮捕された。
弁護団によると、異性カップルの場合は結婚すれば日本人の配偶者ということで在留特別許可が得られることが多い。
しかし、同性カップルのAさんとBさんには「婚姻」という選択肢がなく、特別在留許可を申請するも、認められなかった。
「結婚している異性カップルと同じよう助け合い、20年以上生活をともにしてきたのだから、在留資格を与えられるべきではないだろうか」
Aさんは2017年3月に、国に退去強制処分発布処分の取り消しを求める裁判を起こした。
裁判で弁護団は、AさんとBさんが婚姻同然の生活を送ってきたことを、強く訴えたという。
2019年3月に判決が下される予定だったが、2月、国から処分の取り消しと在留特別許可を出すことを通知された。
3月15日に在留特別許可が付与されたために訴えを取り下げ、訴訟は終了した。
■ 同性カップルに付与した理由は
「在留特別許可」とは、不法滞在やオーバーステイなどで退去強制処分を受けた人に、日本での在留を認める制度。
在留を希望する理由や家族状況など様々な要素を考慮した上で、在留を許可すべき事情があると認められた場合に付与される。
弁護団は、訴訟で焦点になったのは「同性カップルの二人にパートナー関係があるかどうか」で、国が処分を見直したのは、その部分が考慮されたからだろうと述べる。
法務省はハフポストの取材に対し、「これまでの在留状況や生活態度など、様々な要素を鑑みた上で総合的に判断して在留特別許可した」と答えた。
■苦しみを解消する方向に向かって欲しい
AさんとBさんのように、日本に住み続ける方法がなくて苦境に立たされている国際同性カップルは他にもいる。
彼らは、パートナーと離れ離れになったり、二人で日本から出ていくことを余儀なくされてきたと弁護団は話す。
Aさんは20年以上日本に住み続けていて、逮捕された時には中国語がおぼつかない状態だった。台湾に強制送還されたとしても、受け入れてくれる家族はおらず、裁判に負けていたら死を選んでいたかもしれないという。
この問題は、同性カップルにも婚姻が認められるようになれば解決する。
同性カップルの結婚を実現した国は、2019年3月時点で25カ国になる。日本はG7で唯一、国レベルで同性の婚姻制度やパートナーシップ制度がない国だ。
2019年2月14日、同性婚の実現を求めて13組の同性カップルが、国を訴える裁判を起こした。その中には国際同性カップルもいる。
今回の裁判は、「同性カップルは保護されるべきものなんだ」ということを国が認めていく流れを作っていく上で、大きな契機になったのではないかと、弁護団は話す。