2021年の東京オリンピックでの使用が認められなかった黒人の髪にフィットする水泳帽を、国際水泳連盟(FINA)が承認した。
この水泳帽を作ったブランド「ソウルキャップ」は9月1日、「FINAに正式に承認され、あらゆるレベルの競泳大会で使えるようになりました」と報告。
インスタグラムで「スポーツの中でインクルージョンを増やすという私たちのミッションにとって、重要な出来事です」と喜びを伝えた。
「自然な頭の形に沿ったものではない」などの理由で却下
ソウルキャップはアフロやブレード、ロックスなど、黒人に多いボリュームのあるヘアスタイルのための水泳帽を手がけている。
2021年、イギリスのアリス・デアリング選手が、同国で初めて黒人女性としてオリンピック水泳種目に出場するのを前に、ソウルキャップは自社製品の使用申請をFINAに提出したが却下された。
FINAは却下理由を「アスリートが国際大会でこのようなサイズや形の水泳帽子を使ったことはなく、必要としていない」と説明。「自然な頭の形に沿ったものではない」ために、競技大会用として不適応だとも述べた。
しかし、この決定には大きな反発が起きた。
イギリスの黒人水泳協会のダニエル・オビさんは当時「FINAの決定は、スポーツ界の構造的で組織的な不公平を強調するものであり、ダイバーシティの欠如を示していると思う」とガーディアンにコメントしている。
FINAは、こういった反発を受けて決定の見直しを発表。約1年を経て、ソウルキャップの水泳帽が承認された。
フィットする水泳帽がないことが壁になっていた
イギリスでは、水泳をしたことのある黒人が非常に少なく、ソウルキャップを立ち上げたマイケル・チャップマンさんとトクス・アハメド=サラディーンさんも、子どもの頃に水泳を習わなかった。
ソウルキャップは声明で、適切な水泳帽がないことで、太い髪やボリュームのあるヘアの選手たちが競泳そのものを諦めてしまうことも珍しくないと説明している。
「このFINAの承認は大きな一歩です――インクルーシブな水泳用品が競泳で使われることで、選手を遠ざけていた壁を壊す助けになります」
また、FINAエグゼクティブ・ディレクターのブレント・ノーウィッキ氏は 「多様性とインクルーシビティの促進はFINAの中心であり、すべての水泳選手が必要な水泳用品を使えることはとても重要です」とメトロにコメントしている。
望む髪型で競技できる環境を
FINA承認のニュースに、選手からも喜びの声があがっている。
デアリング選手は、「とても幸せで興奮しています。これは、選択肢やすべての人を受け入れるという点で、スポーツの前例を作ります」とインスタグラムでコメントした。
さらに、デアリング選手はガーディアンへの寄稿で、自分にあう水泳帽は選手にとって自信の源になると強調。望む髪型で競技できる環境を整えることの大切さを訴えている。
「黒人女性にとって、髪型はアイデンティティの大きな部分を占めるもので、自分達を表現する手段です。私はよく『成長するにつれて、自分の髪を誇れるようになった』と冗談を言います。実際、私の髪は、自分の特徴や性格、魅力を伝えるものです。私たちには生まれつきの髪を守る権利があるべきで、それはサポートされるべきでもあるのです」