ロシアとの緊張関係が高まっているスウェーデンが、戦争を含む有事の対応マニュアルを記したパンフレットを約470万の全世帯に配布する準備をしていることがわかった。複数の海外メディアが報じた。5月に発行される見込みだ。
有事対応当局者は、パンフレット作成の背景にはバルト地域の治安情勢があるとCNNに話したという。
■「戦争になったら」
クオーツによると「Om kriget kommer(戦争になったら)」というタイトルで作られているパンフレットは、サイバー攻撃やテロ、気候変動といった有事に加えて、戦争への備えとして、水、食料、毛布などを準備しておくよう呼びかける。空襲などからの一時避難の行動マニュアルや持ち物(身分証明書、衣服、ガスマスク)も記載される。
パンフレットの最後には、誤った情報やプロパガンダにどう対処すべきかも記されるという。
スウェーデンは1940年代から、こうしたパンフレットを国民に配布していたが、1991年の冷戦終結を最後に配布をやめていた。
政府広報担当者のアンダーソン氏は、「全ての社会が、軍事的危機に限らず紛争に備える必要がある。スウェーデンは(冷戦集結後)25年から30年ほどきちんと案内してこなかったたので、国民の知識レベルが下がってしまっている」と話したという。
■スウェーデンとロシアの緊張関係の高まり
国民への呼びかけの背景には、ロシアへの警戒の高まりがある。
2016年にはNATO(北大西洋条約機構)が、ロシア空軍がスウェーデンへの核攻撃を想定して軍事演習を行なっていると報告した。スウェーデンは「非同盟中立国」の立場を貫き、NATO加盟を否定しつつもNATO加盟国との関係性を強めている。
スウェーデン軍は、2015年からバルト海に浮かぶ冷戦時代の要塞ゴトランド島に部隊を再配備するなど、軍備拡大を図っている。
BBCによれば、2010年に廃止していた徴兵制を2018年に復活させると2017年3月に発表していた。