東日本大震災時に、地域住民50人が津波から身を守るために避難した福島県浪江町両竹(もろたけ)地区の神社が再建されることになった。
大阪市に本社を置く住宅会社「創建」グループが2019年内に無償で建築して寄贈する。
創建の吉村孝文会長は3月7日、都内で開いた会見で「地域の皆さんと一緒になって、この神社を年内に完成させて、福島の復興にお役に立てれば有り難い」と話した。
■諏訪神社とは?震災時には約50人の周辺住民が避難
再建されるのは、福島第一原発の約5km北方にある諏訪神社。
資料が確認できるのは江戸時代からだが、平安時代に坂上田村麻呂が建立したと伝えられているほど歴史がある。浪江町と双葉町の両町にまたがる両竹地区の守り神だ。
海岸から約1km。標高30mほどの丘の上にあるこの神社は津波の襲来を免れた。震災時には高さ15mの津波から身を守るために、約50人の周辺住民が避難した。本殿は倒壊し、拝殿も半壊した。
海水で濡れた避難者は、破損した本殿の木材を燃やして暖を取り、自衛隊の救助ヘリが来るまで一夜を明かしたという。
■重機が入り込めないため、資材は人力で運ぶことに
諏訪神社の再建を手がけるのは、木造建築のノウハウがある創建グループの住宅販売会社「木の城たいせつ」(北海道栗山町)だ。
同社では2015年に、札幌市の石山神社を建て替えたことがきっかけで、2017年から全国で被災した神社を毎年1棟再建して寄贈するというプロジェクトを開始した。
2018年11月には、熊本地震で倒壊した西原村の白山姫(しらやまひめ)神社を再建。2019年の諏訪神社がプロジェクト第2弾となる。
6月下旬から基礎工事を開始し、10月末に完成する予定。高台までの道は狭く、重機が入り込めないため、資材は人力で運ぶことになる。
2020年には神社から見下ろす位置には、福島県の復興祈念公園が整備される見込みだ。
諏訪神社の宮司、木幡輝秋さんは「福島第一原発事故の影響で60世帯の氏子は全員、今も双葉郡以外で避難生活をしています。寄付を募って神社を再建する話を氏子としていたところに、昨年末に今回の申し出があり、非常に喜ばしいことと受けることにした」と話していた。