ロレアル、新たなビジネスモデルへ。「地球の限界」を考慮

新たに掲げた「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」とは?
Image:L’Oréal
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サステナブル・ブランド ジャパン

仏ロレアルは26日、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を考慮したビジネスモデルに転換すると発表した。新たなサステナビリティ目標として、2025年までに全世界の拠点を100%再生可能エネルギーに移行すること、2030年までにすべてのプラスチック包装をリサイクルしたものか植物由来のものに変えることを掲げる。さらに、消費者やサプライヤーなどのステークホルダーの行動変容を促していく方針。その一環として、消費者が持続可能な買い物をできるよう製品の環境・社会的影響をラベル表示しホームページ上で公開するという。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)

プラネタリー・バウンダリーは、人間が安全に活動できる境界を示すものだ。その範囲であれば人間社会は発展し繁栄できるが、それを越えると地球環境が急激に変化し、壊滅的な事態に陥る可能性があるとされている。2009年にストックホルム・レジリエンス・センターとオーストラリア国立大学が主導し、地球システム・環境分野の科学者らによって定義された。

ロレアルグループのジャン-ポール=アゴン会長兼CEOはオンライン記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大について触れ、サステナビリティへの取り組みは加速するとの見方を示した。

「新型コロナウイルスによって世界は危機的状況にさらされたが、さらに危機的な状況をもたらすのが気候変動だ。2013年からロレアルは、環境の危機的状況に対応するため、サステナビリティと企業責任を果たすことに取り組んできた。これから新たな変革の時代に入る。地球が直面している課題は、今後さらに困難を極めるだろう。ロレアルは従業員、サプライヤー、消費者などのステークホルダーのほか競合他社をも巻き込んで、プラネタリー・バウンダリーの範囲内で活動することに誠実に取り組んでいく」

同社が新たに掲げたサステナビリティ・プログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」はサステナビリティとインクルージョンに重点を置いたものだ。環境に関連するサステナビリティ目標として以下3つを掲げる。

●2025年までにエネルギー効率を改善し、再生可能エネルギーを100%採用。ロレアルの全拠点において二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「カーボン・ニュートラル」を達成する
●2030年までに、製品のパッケージに使用されるプラスチックをリサイクルしたものか植物由来のものに100%切り替える
●2030年までに、温室効果ガスの排出量を1製品あたり2016年との比較し 50%まで削減する

同社は気候変動のほかに、生物多様性の保全、持続可能な水資源管理、資源の循環利用の3つの環境課題に重点的に取り組んでいくという。

ロレアルはすでに同プログラムの一環として、今年5月、サステナビリティとインクルージョンに関する世界的課題に取り組むために過去最大の1億5000万ユーロ(約180億円)を投じると発表している。1億ユーロ(約120億円)は、海洋や森林生態系の回復(リジェネレーション)とサーキュラー・エコノミー(循環経済)などの環境課題に取り組むためのインパクト投資にまわす。残る5000万ユーロ(約60億円)は、貧困と闘う女性や難民、障がいのある女性、女性への暴力の防止、女性の社会・職業的共同参画など女性の支援に使われるという。

近年、消費財ブランドが商品や広告などを通して、消費者にも持続可能な消費行動を促そうとする動きがある。地球規模の課題を解決するためには、企業側が取り組むだけでは不十分だからだ。そんな中、ロレアルが打ち出したのは「製品の環境・社会的影響表示ラベル」。影響はAからEまでの5段階で示され、使用される手法・データは第三者の専門家や独立監査法人ビューロベリタスによって検証されているという。表示ラベルのホームページ上での公開は段階的に行われ、ヘアケア商品などを展開するブランド「ガルニエ」から始まる。

日本ロレアルでは、本社の方針に基づき、ランコムやイヴ・サンローラン、メイベリン ニューヨーク、シュウウエムラなど11の主要ブランドで2021年までにサステナビリティ・プログラムを開始する。また環境対策と女性のエンパワーメントへの取り組みを強化し、2022年までに国内のすべての拠点でカーボン・ニュートラルの達成を目指すほか、これまで続けてきたシングルマザーや女性科学者の支援、女性管理職比率の向上など女性のエンパワーメントに力を入れる。

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