ミニスカと、ラルフのカーデ。ハイビスカスのゴムで茶髪を上げて、ショッパーを斜めに担ぐ。足元はもちろんルーズソックス。
安室ちゃんとTKが「最強」で、放課後はカラオケかファミレスでバカ騒ぎ。
そんな青春時代を過ごしたアラフォー・アラサーたちを「懐かしさの波状攻撃」で号泣させる映画が、平成最後の夏に誕生した。
監督・大根仁。
『モテキ』や『バクマン。』など大ヒット作を生んだ邦画界のカリスマが次に挑んだのは、かつて"日本の原動力"だった女子高生たちの、"その後"の話。
作品には、こんな想いが込められている。
90年代のコギャルブームを牽引した女子たちも、今やアラフォー・アラサー世代。ママとして、ビジネスパーソンとして、そして"女性"として、様々に悩みを抱えて生きている。
篠原涼子演じる奈美も、家族の生活を支える専業主婦として平凡な日々に物足りなさを感じる毎日を過ごしていた。しかし、20年ぶりに再会した親友の芹香(セリカ)が末期ガンに侵されていると知り、日常は一変する。
芹香の最後の願いは、高校時代の仲良しグループ「サニー」のメンバーに再会すること。奈美はメンバー探しを始めるが、過去のある"事件"が尾を引き......。
今回ハフポスト日本版では、かつてコギャルだったアラフォー・アラサー女性に集合してもらい『SUNNY 強い気持ち・強い愛 "同窓鑑賞会"』を実施。当時の流行と思い出を交えながら、映画の感想を語り合った。
大人になってからわかる。あれが"青春"だったって。
川口:楽曲やプロップはもちろん、コギャル時代を演じた広瀬すずたちの見た目や雰囲気も、90年代がしっかり再現されていましたよね。
篠田:仲良しグループの空気感まで当時と同じでしたね。なんでも楽しくて、先生に怒られても笑ってて。将来のことを考えずに、毎日ただ夢中に過ごしていた頃を思い出しました。映画の冒頭でも「何があんなに楽しかったんだろう」って言ってたけど、その通り。
服部:あの頃、当事者たちは「これが青春なんだ」とは思ってなかった。でも、こうして映画として当時の世界観を振り返ってみると、私たちもすごくエネルギッシュに生きていたなって思いました。
「わたし」より「ウチら」。一人称はいつも「複数形」
川口:この映画を制作するにあたり、当時コギャルだった方々に小物を提供してもらったり、仕草や話し方の監修をしてもらったりしたそうです。ルーズソックスやミニスカ、ショッパーなど、様々なアイコンが登場していましたが、特に印象に残っているのは?
服部:私は、写真にグッときました。あの頃は写メとかもないから、みんな写真に『ポスカ』でいたずら書きしてたよね。「ずっとLOVE」とか、「ウチら最強」とか。「ひとり」とか「自分が」というよりも、仲間意識を表現する単語を多く使っていた気がする。一人称はいつも「ウチら」だった。
篠田:ルーズソックスもセーターも、今見てもかわいいよね。
あとすごいのは、こういうコギャル文化はどれも、東京の女子高生たちが作って発信していったカルチャーだったということ。ほかの流行に乗っかるわけでもなく、自分たちで「これがいい、かわいい」って判断して、自然発生的にスタイルができて、ムーブメントになっていた。
川崎:私は地方出身なので、広瀬すずが演じる奈美の心境に共感しました。コギャル文化に憧れるけれど、自分はなれないという、あの感じ。雑誌で見る世界とはほど遠いのだけど、精一杯ルーズソックスとか履いて、流行に近づこうとしていたな。当時、東京にはいなかったコギャル世代が観ても、きっと懐かしく感じるはず。
川口:ちなみに、劇中にも出てきた"ヒス"こと『ヒステリックグラマー』のあの黄色いショッパー、メルカリで出品されていたものを私も買いました(笑)
全員:ええ〜〜〜〜〜〜!?!?
結婚、子育て、仕事。状況は違っても、会えば一瞬で「あの頃に戻れる」
川崎:サニーのメンバーみたいに、どんなに仲が良くても、歳をとるとそれぞれにライフスタイルが変わって、昔みたいにしょっちゅう会ったりするのは難しくなるよね。
川口:SNSなどで近況は知りつつ、いざ会おう!となるとね。みんな忙しい時期や動きやすい時間帯が違って、合わせるのが少し億劫になったり。LINEのグループもあるけど、徐々に過疎っていったり(笑)
服部:でも、会えば楽しいし、奈美と芹香が20年ぶりに再会したときみたいに、一瞬であの頃に戻れるんだよね。
川口:そうなんですよ。まさにサニーのみんなと同じ。
服部:でも、こういう話を男性にしてみたら、「わからない」って言われました。男女差があるとは言い切れないけれど、女性同士の方が、時間を超えられやすいのかも。
篠田: 奈美が芹香と20年連絡を取っていなかったことを、奈美の旦那さんが「女の友情ってそんなもんだよな」みたいに言っちゃうのも同じだよね。逆説的というか、自分たちがわからないから、そう言っちゃう、みたいな。
奈美からしたら、たしかに疎遠ではあったけど、会えば昔と同じくらい仲良しだし、時間や距離は関係ないっていう話だよね。
服部:重要なのは「濃さ」だもんね。
平成最後の夏の終わりに、安室ちゃんが引退するということ
川口:本作『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を語る上で欠かせないのが、小室哲哉や安室奈美恵に代表される、90年代の大ヒットソングです。
シーンごとにテーマとなる楽曲を決めてから撮ったのでは?と思うほどマッチングしていて、ミュージックビデオを見ているみたいだった。
川崎:耳慣れた音楽が各シーンで象徴的に使われていて、イントロ流れ始めただけで泣けた(笑)どの楽曲が印象的だった?
服部:私はもちろん、安室ちゃん。現代を生きる篠原涼子と、90年代の広瀬すずが、曲を媒介にして心情がシンクロするシーンにかかっていた『SWEET 19 BLUES』が、最高。
川口:夕暮れバックの安室ちゃんは、反則だよね。泣かないわけない。
服部:安室ちゃんは昔から大好きです。歌う姿も生き様もかっこよくて。いつの時代もトップランナーとして時代の先端を走ってきたヒーロー。気取っていないし、誰のことも見下さない。遠い存在なんだけど、親近感もあって。
篠田:当時の安室ちゃんは今でいうアイドルみたいなくくりだったけど、他のアイドル的な女性歌手とはやっぱり違っていた。ちょっと影があるっていうか、そこがすごく私たちには刺さってました。男ウケとか狙ってなかったし。
服部:等身大というか、本当に私たちの代弁者でした。心の中のモヤっとした部分を言ってくれている感じ。女子高生ながら、みんな言葉にできないフラストレーションみたいなものがあった気がする。
篠田:そうだね。みんな楽しそうに騒いで、はしゃいでいたんだけど、本当は色々考えたり、悩んだりもしていた。だから安室ちゃんに惹かれたのかもしれない。
ママもビジネスパーソンも。8月31日だけは、映画を観てカラオケ行こうよ
川口:平成最後の夏休みの、最終日になる8月31日に、本作は公開となります。奇しくも約半月後の9月16日には、安室ちゃんが引退。そして小室哲哉さんが最後に映画音楽を手掛けた作品でもある。そう考えると、カタルシスの塊みたいな映画ですよね。
川崎:こんなにたくさんの偶然が一致することって、そうそうないよね。
今年の8月31日は、コギャルに戻って、みんなで映画を観てからのカラオケコースで。私も夫に言おうかな、「8月31日は子どもの面倒よろしくね」って(笑)
服部:実際、この映画を観たら友達に会いたくなりました。
みんなで映画を観て、感想を言い合いながら「ウチらのときはこうだった」って思い出話もして、そのままカラオケで安室ちゃん(笑)。めちゃくちゃ盛り上がりそう。
篠田:せっかくだから『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の"応援上映会"をやってほしい!みんなで、大声で歌いながら観るんです。流行りの絶叫上映みたいに。
服部:いいですね。実際、映画観ている最中ずっと口パクで歌ってましたし(笑)その後も、安室ちゃんを聴きながら帰りました。
全員:私も(笑)
ただの過去賛美ではない。「これからの20年」を考えるための映画でもある
服部:あと私、この映画を観て「これからの20年をどう生きるか」ということも考えました。楽しいことも辛いことも経験しながら20年が経って、今の自分がいるんだけど、きっとこれからの20年の方がもっといろんなことが起こるんだろうな、と。
川口:確かに、この映画を観て20年後のことを考えるのは、すごく正しい効果だと思います。
「ルーズソックスが可愛かった」「あの頃ウチら最強だった」と言って終わるのではなく、この20年間をどう過ごしてきたか振り返って、そして今いる自分の環境を改めて客観視してみる。その延長線上で、これから先のことを考える。
「人生は"自分が主人公の物語"である」ということを再認識するための映画なのかも。
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『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が描くのは、過去と現代の邂逅だ。
ポップでキュートな90年代ミュージックを背景に"はっちゃける"私たちと、大人になって酸いも甘いも経験した"地に足のついた"私たちが、この2時間だけは、時代を超えて手を取り合う。歌って、踊る。みんな一緒に。
だからこそ。
平成最後の夏に、安室ちゃんが引退する前に、あの頃の「ウチら」に戻って、みんなで一緒に映画を観に行こう。カラオケに行こう。
これからも「最強」でいるために。