水族館のサイトを見に行ったつもりが、なんだか様子がおかしい。「オンラインカジノでも、海の動物たちに出会うことが出来ます」と別のサイトに誘導されるのだ。こんな事例が日本の水族館で実際に起き、公式が注意喚起する事態となっている。
■放棄された旧ドメインを第三者が悪用か?新水族館でも飼育されるシャチの写真を掲載
偽サイトへの注意を促したのは、神戸市立須磨海浜水族園だ。1987年に開園。「東洋一」の大きさと言われた大水槽や全国初だったチューブ型のトンネル水槽などが人気を集め、スマスイの愛称で親しまれてきた。施設の老朽化で5月31日に惜しまれつつ、閉園した。
偽サイトが使用しているのは、須磨海浜水族園の公式サイトの旧ドメインだ。読売新聞によると、2020年3月まで使用していたが、同年4月に園の指定管理者が交代した際に「kobe-sumasui.jp」にドメイン変更した。しかし、以前の管理者が旧ドメインを手放したことで、第三者が旧ドメインを同年9月に取得。オンラインカジノに誘導する内容を掲載したとみられている。
須磨海浜水族園は建て替えられて、「神戸須磨シーワールド」として2024年6月に開園予定だ。西日本で唯一のシャチの展示が目玉となるが、偽サイトでもシャチの写真が掲載されている。
その上で、「海の動物たちに会うことが出来るのは神戸市立須磨海浜水族園だけではありません。オンラインカジノのボンズカジノでも、海の動物たちに出会うことが出来ます」と露骨に誘導する内容となっている。
須磨海浜水族園の現在の公式サイトは6月7日、「現在、神戸市立須磨海浜水族園のサイトを装い、オンラインカジノへ誘導するインターネットサイトが確認されております。当水族園はそのようなサイトとは一切関わりはございません。お客様各位におかれましても、十分にご注意をいただきますようお願いいたします」と注意喚起をしている。
■過去には新居浜市や森元首相のサイトでも同様のトラブル
公式サイトの閉鎖や移転に伴って、放棄されたドメインを第三者が取得して「なりすます」トラブルはこれまでも相次いでいる。
2016年には、愛媛県新居浜市の観光案内サイトの旧ドメインが、オンラインカジノに誘導される仕組みになっていたとして、新居浜市が公式サイトで注意を呼びかけた。
また、2018年には森喜朗元首相の公式サイトだったドメインが、アメリカ旅行を案内する英文サイトに変更されたことが報じられている。
こうしたトラブルが相次ぐ中で、JPドメインを管理する日本レジストリサービス(JPRS)は、ドメインの放棄に対して、以下のように警告している。
「ドメイン名を廃止した場合、一定期間経過した後に、第三者がそのドメイン名を登録できるようになります」
「廃止したドメイン名であっても、他のWebサイトからのリンクや、検索エンジンによるドメイン名の評価に関する情報は残り、アクセス数などが見込めることなどから、そのドメイン名が関係のない第三者に登録され悪用される可能性があります」
多くの人が憧れる「独自ドメインの公式サイト」にひそむトラップ。安易な気持ちでドメインを放棄しないように、くれぐれも注意が必要だ。