お互い助け合いながら生きた、ホームレスの男性と1匹の猫。
書籍「ボブという名のストリートキャット」で、世界的に有名になった茶トラの猫ボブの銅像が7月15日、イギリス・ロンドン北部にある広場イズリントングリーンでお披露目された。
銅像の除幕をしたボブのパートナーのジェームズ・ボーエンさんは、かつて一緒に時間を過ごしたこの場所で、愛おしそうに銅像のボブをなでた。
猫と人間、助け合った
ボーエンさんとボブが出会ったのは2007年。ボーエンさんは当時ストリートミュージシャンで、薬物中毒の問題を抱えていた。ボブも家がないストリートキャットで、出会った時には怪我をしていた。
ホームレスのボーエンさんには猫を飼う余裕はなかった。それでもずっと自分の後をついてくるボブを拾い、一緒に生活を始めるように。
しかし助けられたのはボブだけではなかった。ボブはボーエンさんの心の支えになり、人生をやり直すきっかけになった。
ボーエンさんは2012年のイブニングスタンダードのインタビューで「ボブは私の人生を、正しい方向へと向かわせてくれました」と、話している。
ホームレスだったボーエンさんは、路上パフォーマンスや雑誌・ビッグイシューを売る時に、ボブを肩に乗せて連れていった。
するとその姿が話題になり、1人と1匹は人気者に。
ボーエンさんが2012年に「A Street Cat Named Bob: And How He Saved My Life(ボブという名のストリートキャット:彼がどうやって私を救ってくれたか)」を出版すると、同作と続編は40以上の言語に翻訳され国際的なベストセラーになった。
世界中の人たちに愛された猫ボブは、2020年6月に死去した。
誰もがひとりぼっちじゃない
銅像が設置されたイズリントングリーンは、ボブとボーエンさんがかつてともに過ごした場所だったという。
「ここはすべてが始まった場所です」「午後にビッグイシューを売る時、私たちはこのベンチで一緒にランチを食べました。それが今、ボブのベンチになっています」とボーエンさんはビッグイシューに語った。
またベンチのすぐ近くには、ボーエンさんが最初の本を書いた場所である本屋「ウォーターストーンズ」もある。
一緒に時間を過ごした、忘れられない場所。この銅像のあるベンチを訪れた人たちに、ボーエンさんは「ひとりじゃない」と感じて欲しいと思っている。
ボーエンさんは除幕式で次のように語った。
「私はボブのことを、とても誇りに思っています。そしてともに過ごした時間を本当に感謝しています」
「出会った瞬間から、ボブは私の生活を豊かにしてくれました。私を救い、世界中の人たちに希望を与えてくれました」
「ボブの銅像を訪れた時、もしくは通りすぎた時に、誰もがやり直す機会を受けるに値するということ、そして誰もがひとりぼっちではないということを思い出して欲しいです」