トランプ大統領、アメリカ市民の犯罪者を国外送還することを検討「アイデアの一つ」

トランプ政権はすでに移民をエルサルバドルに送還しており、訴訟が起きている
エルサルバドルにある重警備刑務所CECOT(テロ強制収容センター)内で座る収容者(2025年4月4日)
エルサルバドルにある重警備刑務所CECOT(テロ強制収容センター)内で座る収容者(2025年4月4日)
Alex Peña via Getty Images

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は4月8日、アメリカのトランプ大統領が、移民だけではなくアメリカ市民の犯罪者もエルサルバドルに国外追放しようと考えていることを明らかにした。

トランプ氏はすでに移民をエルサルバドルに送還しており、訴訟になっている。

レヴィット氏は「対象となるのは、法律を何度も破った凶悪な犯罪者たちだ」と8日の記者会見で語った。

「大統領は、法的な道があればと言っています。大統領自身も私たちもまだ、計画が可能かどうかについて確信を持てていません。これはあくまで大統領が提案したアイデアの一つであり、透明性を考慮して公の場で議論しているのです」

トランプ政権は、犯罪者をエルサルバドルに送還すれば節税になるとも主張している。

しかし、罪を犯したアメリカ市民の国外追放を正当化する法的根拠は明らかになっておらず、実行すれば訴訟になるのは間違いないと考えられる。

移民をエルサルバドルに送還

エルサルバドルのブケレ大統領は2月、アメリカの犯罪者を国籍を問わず自国の刑務所で受け入れると申し出たことを明らかにした

トランプ氏は3月、1798年に作られた「敵性外国人法(Alien Enemies Act)」を適用して、主にベネズエラからの移民をエルサルバドルに送還した。

敵性外国人法は、戦時中に裁判所での手続きをせずに、敵国の出身者や市民を拘束または国外追放する権限を大統領に与える法律だ。第二次世界大戦中には、日本などからの移民を拘束するために使われた。

トランプ氏は、この法律に基づいてベネズエラからの移民をギャング組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーだと認定し、裁判を経ずにエルサルバドルに送還した。

この問題を巡り、連邦最高裁は4月7日、トランプ政権が敵性外国人法を適用して移民を国外追放することを認めた一方で、送還前に適正な時間を与え、裁判を受けられるようにしなければいけないと判断した。

エルサルバドルに送られた200人以上のベネズエラ移民の中には、ギャング組織のメンバーではなかった人もいる。

メリーランド在住のベネズエラ移民、キルマー・アブレゴ・ガルシア氏は、3月にエルサルバドルに送還されたが、ギャングとの関わりは確認されていなかった。

メリーランド州の連邦裁判所は4月4日、ガルシア氏の送還は誤りだとしてアメリカに戻すようトランプ政権に命じた。

しかし、連邦最高裁は7日、決定を一時的に差し止める決定をした。

誤ってエルサルバドルに送還されたメリーランド在住のベネズエラ移民、キルマー・アブレゴ・ガルシア氏の写真を掲げる母親(2025年4月9日)
誤ってエルサルバドルに送還されたメリーランド在住のベネズエラ移民、キルマー・アブレゴ・ガルシア氏の写真を掲げる母親(2025年4月9日)
Alex Wong via Getty Images

トランプ氏は3月に、イーロン・マスク氏に反発する人々がテスラ車を破壊した時に「テロリストのような連中が、イーロン・マスクとテスラに対してやったことに対して、20年の懲役刑を受けるのを見るのが楽しみだ。おそらくエルサルバドルの刑務所に入ることになるだろう」と自身のSNSトゥルースソーシャルに投稿している。

トランプ氏が、アメリカ市民の犯罪者に対しても敵性外国人法を使うのか、別の権利を行使するかは不明だ。

しかし、トランプ政権の計画は「正当な法の手続き(デュー・プロセス)」を義務付けている憲法に違反すると指摘されている。

 ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。

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