
任天堂が、大ヒットゲーム「ゼルダの伝説」の実写映画で、イスラエル系の著名映画プロデューサーAvi Arad(アヴィ・アラッド)氏との共同制作を改めて発表したことに対し、ネット上で批判が相次いでいる。
任天堂は2023年11月、「ゼルダの伝説」の実写映画化を発表。その際、映画のプロデューサーを、任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏とアラッド氏が共同で担当することを公表していた。
アラッド氏はイスラエル出身で、マーベル・エンターテインメントの元CEO。イスラエルとアメリカの二重国籍で、過去にイスラエル軍で勤務した経験がある。また2024年には、イスラエルのネタニヤフ首相を批判した米政治家を激しく非難したことも報じられている。
イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区やヨルダン川西岸への大規模な攻撃が続き、子どもを含む多数の民間人が殺害される中でのコラボレーションを伝えたことで、その制作協力が再び注目を浴びた格好だ。
X上では「虐殺に加担するな」「企業としての倫理を問われる問題」などとして、任天堂に対しアラッド氏との協力関係を見直すよう求める声が上がっている。
イスラエル軍での経験「誇り」

任天堂の宮本氏は3月29日、同社の公式Xアカウントで、「ゼルダの伝説」の実写映画について次のように告知した。
「宮本です。数時間前に『Nintendo Today!』でお届けした映像はご覧いただけましたか? Avi Aradさんと制作する「ゼルダの伝説」の実写映画は、全世界で2027年3月26日に劇場公開することになりました。『Nintendo Today!』では、このような情報も「直接」お届けしていきます。ぜひ使ってみてください」
投稿で言及されたアラッド氏とは、どんな人物なのか。
マーベル・エンターテインメントの元CEOであるアラッド氏は、「X-MEN」「ハルク」など多くのマーベル映画をプロデュースしてきた。現在は「ヴェノム」や「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」など、ソニー・ピクチャーズによるスパイダーマン関連の作品のプロデュースを手掛けている。
【画像】「民間人虐殺への加担をやめて」。批判が広がっている任天堂のX投稿
イスラエル出身のアラッド氏は、2024年に米国の政治家がイスラエルのネタニヤフ首相を批判した際、その発言を激しく非難した。
米民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務は同年3月、ガザ地区での人道危機が深刻化する中で、ネタニヤフ首相が「道を見失い」、平和の障壁になっているとの考えを表明。イスラエルで新たな選挙が実施されるべきだと発言した。シューマー氏はユダヤ系で、長年イスラエルを支持する立場だった。
シューマー氏はさらに、ネタニヤフ首相が「ガザでの民間人の犠牲を容認しすぎており、世界中でイスラエルへの支持が史上最低のレベルまで落ち込んでいる」「イスラエルが社会ののけ者になったら生き残れない」などと批判していた。
その後、アラッド氏はシューマー氏の一連の発言を激しく非難した。
米メディアThe Wrapは、アラッド氏がシューマー氏に送ったという書簡を独自に入手して掲載。この中でアラッド氏は、シューマー氏が他の民主主義国家に干渉しており、反ユダヤ主義を悪化させていると主張した。
その上で、シューマー氏に対して「自ら学び」「立場を撤回して修正すること」を求めた。
またアラッド氏は書簡で、自身がイスラエルで生まれ育ち1969年に米国に移住したことや、過去にイスラエル軍に所属していたことを誇りに思っているともつづっている。
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任天堂はCSR(企業の社会的責任)の指針の中で、人権の尊重や法令遵守の推進を謳っている。
アラッド氏との共同制作に対する批判をどう受け止めているのか。ハフポスト日本版は任天堂に問い合わせフォームを通じてコメントを求めており、回答があり次第、追記する。