Xで生理用品の無償設置を訴えていた三重県議会の吉田紋華議員(27)に対する殺害予告メールが、議会事務局に約8千通送られていたことが分かった。
吉田議員は3月31日、記者会見を開き、三重県警津署に被害届を提出したことを明らかにした。
メールは、三重県議会事務局総務課と企画法務課宛てに、3月28日夜から1分おきに同じアドレスから送られていた。

背景は。Xで訴えた生理用品の無償設置
吉田議員は3月25日、急に生理が来たが生理用品がなくて困ったという自身の経験をXで共有し、生理用品の無償設置を呼びかける以下のような投稿をしていた。
《今日いきなり生理になって困った。用があって寄った津市役所のトイレにはナプキンは残念ながら配置されてなかった。家に帰るまでちゃんと対処できなかった。27歳でもこんなこと起こります。トイレットペーパーみたいに、生理用ナプキンをどこでも置いてほしい》
この投稿は、Xで大きな話題となり、様々な意見が交わされた。
投稿を引用する形で吉田議員は、以下のようにも思いを綴っていた。
《いきなり出血があったとき、股にトイレットペーパーに挟むみじめさは経験した人にしかわからない。 #トイレットペーパーみたいに生理用ナプキンをどこでも置いてほしい》
吉田議員は立候補前、大学病院の婦人科で看護師として勤務していた経験があり、これまでにも県議会で、学校教育での生理用品の使い方の指導について質問するなどの活動を続けてきた。
三重県内でも県立高校に無償で生理用品が設置されるなどの動きが広まっているが、津市役所では実施されておらず、自身の経験をもとに設置を呼びかける内容の投稿をしていた。
同じアドレスから8千通の殺害予告メール
吉田議員によると、殺害予告メールは、件名に「いい歳して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田あやか議員を殺害します!」、本文に「馬鹿に税金が1円でも使われる前に殺してしまえば解決します」などと書かれていた。
会見で吉田議員は、殺害予告メールは「県議会議員としての活動を萎縮させるもの」「ジェンダーへのバックラッシュを感じた」とした上で、以下のように抗議の意を示した。
「こういった攻撃に対して私は黙っていたくないと思いました。女性があげた声をわがままだと捉えて黙らそうとしてくる人には、私はきちんと声を上げていきたいと思います」
「生理は恥じるべきものとタブー視されがち」自己責任論も
投稿をめぐる議論の中では、「生理があるならナプキンを持っていて当然だろう」「なぜ持っていなかったのか」などと批判、生理用品を持ち運ぶことを「自己責任」とする投稿も多く見られ、吉田議員は「社会の中では生理は恥じるべきものとしてタブー視されがち」「社会の(生理に対する)認識の過渡期にある」と指摘。以下のように話した。
「20代の男性からは『この議論を見るまで、女性の生理について詳しく知らなかった』という声もありました。私自身、議会の中で、日本の性教育の遅れについて取り上げています。議論が起こったこと自体は肯定的に捉えています」
【動画】吉田議員による記者会見
近年、経済的な問題など様々な背景から生理用品へのアクセスが難しい「生理の貧困」の問題も浮き彫りになり、行政や民間など各セクターが生理用品を無償で設置・配布する取り組みを進めてきた。
内閣府の男女共同参画局は2021年から毎年、「『生理の貧困』に係る地方公共団体の取組」の調査を実施し、結果を公表している。2024年10月時点の第5回調査では、全国各地926団体が生理の貧困に対して、生理用品無償配布などの取り組みを行っている。
各地の自治体などが、予算措置や地域⼥性活躍推進交付⾦、防災備蓄、寄付などで準備した生理用品を、学校や公共施設のトイレに設置したり、必要とする人に配布したりしている。
また、民間でもオフィスや商業施設のトイレで生理用ナプキンを設置する動きが広まっている。
大王製紙は2022年から、生理用品の入手に困る学生を対象にナプキンを送る「奨学ナプキン」を継続している。
このように、官民両サイドで広く生理用品を無償配布・設置する動きは広まっているが、周知に課題があったり、必要とする人にリーチできていなかったりと、問題は残る。
スコットランドなどでは、生理用品の無償提供が法律で義務付けられ、カナダやオーストラリアでは生理用品の消費税が廃止されるなどの動きも出ており、日本でも必要とする人が生理用品にアクセスできるような制度改革を求める声が上がっている。
(文=冨田すみれ子)