
ジブリの作品に出てくるような、結婚式や家族写真……「ジブリ風」のイラストがソーシャルメディアにあふれている。
きっかけは、人工知能の開発を行うOpenAI(オープンAI)が3月25日に、生成AIのChatGPTで、より詳細な指示のもとに画像を作れる機能を導入したことだ。
OpenAIはこの新機能について「文字を正確に再現し、指示に厳密に従うことに優れている」「思い描くイメージを正確に作成しやすくなり、視覚を通じた効果的なコミュニケーションを可能にする」と説明している。
ジブリ風イラストの作り方は簡単だ。
ChatGPTに写真をアップロードして「ジブリのような画像を作って」と指示すれば、「となりのトトロ」などのジブリ作品に出てくるようなイラストが生成される。
多くの人が、自分や家族、ペット、政治家など「ジブリ化」した様々な画像をソーシャルメディアに投稿している。
OpenAIのサム・アルトマンCEOも、自身のXのプロフィール写真をジブリ風に変更。
「長年AIに携わる間、ほとんど気にかけられていなかったが、ジブリ風ができて大反響を呼んでいる」という趣旨の冗談を投稿している。
その一方で、「宮崎駿氏が何十年もかけて作った芸術を本当に評価されずに使われていることに胸が痛む」といった声も投稿されている。
また、ホワイトハウスが移民強制送還を称賛するジブリ風イラストを投稿するなど、ネガティブな文脈でも使われている。
著作権の問題はある?
現在、ChatGPTによるこの新しい画像生成機能は有料版ユーザーのみに付与されているが、OpenAIはいずれ無料版にも提供するとしている。
多くの人が利用している一方で、著作権の問題も指摘されている。ソーシャルメディアには「OpenAIはスタジオジブリの作品を盗んでいる」などの意見も投稿されている。
OpenAIに対しては、ChatGPT訓練のために記事を無断で使用したとして、ニューヨークタイムズなどのメディアが著作権をめぐる訴訟を起こしている。
OpenAIは新機能について「現存するアーティストのスタイルで画像を生成しようとした場合は拒否を発動するようにした」と説明している。
その一方で、OpenAIの広報は「現存する個々のアーティストのスタイルでの生成は引き続き制限していますが、より広い範囲でのスタジオのスタイルは許可しています。その結果、多くの人々が楽しくて素晴らしいオリジナルのファンアートを生み出し、共有しています」とニューヨークタイムズに述べている。
生成AIは大量のデータを学習して画像や音楽、動画などのコンテンツを作り出す。生成AIの利用が広がるにつれて、著作権を守るよう求める声も強まっている。
バラエティによると、俳優やミュージシャン、映画制作者らが3月、OpenAIやGoogleが求めている著作権保護の規則緩和をしないよう求める書簡を、トランプ政権の科学技術政策局宛てに送った。書簡にはケイト・ブランシェットさんやポール・マッカートニーさん、シンシア・エリヴォさん、ベン・スティラーさんら400人以上が署名している。
日本の文化庁は、作風・画風は「著作物ではないもの」とし、著作権法による保護の対象には含まれないという見解を示している。
生成AIを利用してジブリ風の画像が作られていることについて、スタジオジブリは「現時点ではコメントはありません」とハフポスト日本版の取材に答えた。