わずか10万円の初任給から投資を始めた元消防士のかんちさん。少ない給料でもコツコツと投資を続け、約40年が経った今、その資産は8億円、配当金は年2000万円超。
初の著書『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門』が大ヒット中のかんちさん。前編では、初心者でも取り組みやすい投資術や、優待株を選ぶ際に重要な「3つのチェックポイント」について話を聞きました。
初任給は10万円。年間100万円から投資をスタート
──かんちさんは消防士時代に投資を始めたそうですね。きっかけを教えてもらえますか?
消防士になったばかりの20歳ごろ、同居していた祖母の確定申告を手伝ったことがきっかけです。その際に、株式投資をしていた祖母?の配当収入が、自分の給与と同程度あることを知り投資を始めたいと思うようになりました。

当時はインターネット証券が一般的でなく、手数料も高かったため、情報を得るのが難しい時代でした。それでも、書籍や新聞を活用して独学で学び、少額から投資を始めました。
初任給は10万円ほどでしたが、ボーナスを含めると年間の可処分所得はもう少し多くなりました。そのため、年2回のボーナスからそれぞれ20万円ずつ、計40万円を投資に回していました。それとは別に、毎月5万円を積み立て、年間約100万円を投資していました。この方法を続けることで、資産形成の土台を築くことができました。
── かんちさんの投資スタイルは「高配当株投資」が特徴です。高配当株投資に注目し始めたのはいつ頃からですか。
2000年頃からです。ネット証券の登場により手数料が下がり、高配当株投資が実践しやすくなったことが転機となりました。それ以前は、売買ごとに数千円もの手数料がかかるのが一般的で、少額投資には向いていなかったのです。しかし、ネット証券の普及により、少額でも投資しやすくなり、戦略を見直しました。
──投資で成功するためにはどのような考え方が必要ですか。
長期投資の視点を持つことが重要です。短期的な利益を追うのではなく、長期的な資産形成を意識すること。私は市場の変動に一喜一憂せず、「10年間の定期預金だと思って持ち続ける」という意識を心がけています。
──投資銘柄を選ぶ際に重要な指標を教えてください。
配当利回りを基準に銘柄を選ぶのが重要です。初心者が投資先を選ぶ際には、配当利回りが重要な指標の一つです。私の基準は、最低でも3.5%以上の配当利回りを持つ企業。特に連続増配している企業であれば、将来的なリターンの向上が期待できます。
──日々、投資の情報収集はどのようにしているのでしょうか。
最新情報を知るために、東証の適時開示情報や、投資家のブログ、SNS(X/Twitter)を活用しています。投資の世界では、常に最新の情報を得ることが重要。信頼できる投資家の情報を参考にしながら、自分なりの投資スタイルを築いていくことが大切です。
初心者は生活に欠かせない業界「ディフェンシブ銘柄」がおすすめ
──初心者が投資を始める際の第一歩は何ですか。
いきなり大きな資金を投じるのではなく、少額からスタートすることが重要です。投資経験が全くない初心者の方は、少額投資非課税制度(NISA)を活用するのもよいでしょう。NISAを利用すれば、投資による利益が非課税となり、税負担を軽減できます。
最初に投資する銘柄としては、値動きが比較的安定している「ディフェンシブ銘柄」がおすすめです。例えば、食品、医薬品、通信、電気・ガス、ヘルスケアなどの業界は、景気の影響を受けにくく、生活に欠かせない必需品を扱っているため、安定した業績を維持しやすい傾向があります。
また、投資初心者にとって、「優待株」は投資を楽しみながら学べる手段の一つです。
優待株とは、企業が株主に対して配当とは別に提供する特典(食事券や割引券など)がある株式のこと。投資の入り口として、飲食関連企業の優待株を選ぶのもおすすめです。身近な企業の株を購入し、株主優待を受け取ることで、自然と長期投資の習慣が身につく点も魅力といえます。
生活のすべてを賄うかんち式「高配当株×優待株」の投資戦略
──どのようにして優待株と高配当株を組み合わせていますか。
私は、「日常生活で活用できる優待株」と「資産形成を目的とした高配当株」を組み合わせています。例えば、外食系や小売業の優待株を保有しながら、配当利回りの高い三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行株や、安定した配当が期待できるインフラ関連株を長期保有する戦略です。これにより、優待を活用して日常の生活費を節約しつつ、配当金によって資産を増やしていくことができます。
また、配当金を再投資することで、複利の効果を活かすことが可能です。例えば、年間50万円の配当金を再投資し続ければ、20年後には大きな資産形成につながるでしょう。
現在、私は妻と子ども2人の4人家族ですが、年間2000万円の配当金を受け取っています。これを生活費の大部分に充て、経済的な安定を保っています。さらに、日々の買い物や外食では優待券を活用しています。
優待株については「優待があるため人気はあるが、株価は上がりにくい」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。確かに、短期間で大きく値動きすることは少ないものの、長期保有することで株価が10倍以上に成長する、いわゆる「テンバガー(10倍株)」になることもあります。
私の場合、健康保険組合の業務代行を手掛けるバリューHR、自動車コーティング剤メーカーのKeeper技研、「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションなどが、テンバガーになりました。
── 株主優待をもらうにはどうすればいいのでしょうか。
株主優待をもらうためには、企業が定める「権利確定日」の時点で株を保有している必要があります。ただし、証券取引の仕組みにより、権利確定日の2営業日前(権利付き最終日)までに株を購入しなければ、優待の権利を得ることができません。また、権利確定日の翌営業日(権利落ち日)には、優待目当ての投資家が株を売るため、株価が下がる傾向があります。
権利確定日は企業によって異なりますが、一般的に3月末や9月末に設定されているケースが多いですね。
株価上昇が期待できる優待株の「3つの指標」
──株価上昇が期待できる優待株はどのように見極めていますか。
見るべき指標は「売上高が毎年伸びているか」「利益が伸びているか」「連続増配しているか」の3点です。
一方、株価上昇を期待しない優待株を保有する理由は「株主優待の魅力」です。優待が充実していれば、株価が下がっても一定の価値が維持されるケースが多いため、資産を減らさないための手段にもなります。
また、優待株を選ぶ際には、以下の3つのポイントをチェックすることが大切です。
①優待内容の実用性…企業が提供する優待内容が、自分の生活スタイルに合っているかを確認しましょう。例えば、外食をよく利用する人は飲食系の優待、旅行好きならホテル系の優待が向いています。また、優待の内容が改悪されるリスクもあるため、過去の優待履歴を確認することも重要です。
②必要株数と権利確定日…株主優待は、一定の株数を保有している株主に対して提供されます。100株保有で優待が得られる企業もあれば、500株や1000株が必要なケースもあります。また、権利確定日を逃すと優待が受けられないため、事前に確認することが重要です。
③業績の安定性…業績が悪化すると、優待が改悪されたり廃止されたりするリスクがあります。

──最後に、投資初心者へのアドバイスをお願いします。
最初は知識も資金も少ないため、実績のある投資家を参考に始めてほしいです。また、今回紹介したように、飲食株の優待投資から始めるのも一つの方法。優待を楽しみながら、自然と長期投資の習慣を身につけていきましょう。
【PROFILE】かんちさん
1961年三重県生まれ。元消防士で、現在は資産約8億円・年間配当金2000万円超の専業投資家。49歳で資産2億円を築き早期退職し、以後は株の配当金と株主優待で生活。投資歴40年以上、約600銘柄を保有。明確な判断基準と再現性の高い手法が個人投資家に定評あり。資産が増え続ける中、65歳以降は年間生活費を2000万円に増額予定。