
米アカデミー賞受賞映画「ノー・アザー・ランド」の共同監督でパレスチナ人のハムダーン・バラールさんが、イスラエル人入植者に暴行された後に軍に連行され消息不明になっていた問題で、バラールさんは一晩拘束された後に解放された。BBCなど複数の海外メディアが報じた。
CNNによると、バラールさんの弁護士は、バラールさんがヨルダン川西岸の入植地キルヤト・アルバの警察署で「恣意的に」拘束され、イスラエル兵から暴行を受けたと述べた。解放された後、バラールさんはヘブロンの病院に移され、けがの治療を受けた。その後、ヨルダン川西岸の家族たちの元へと帰ったという。
「ノー・アザー・ランド」で共同監督を務めたパレスチナ人のバーセル・アドラーさんはSNSで、ハムダーンさんが治療を受けている写真を添え、軍から解放されたことを報告。「彼は兵士や入植者から全身を殴打されました」と訴えた。写真からは、バラールさんの服に血がついていることがわかる。
【画像】病院で治療を受けるバラールさん
バラールさんは、イスラエル人入植者たちが村を襲撃したとき、入植者たちはバラールさんの頭を「サッカーボールのように」蹴ったとAP通信に述べている。軍に拘束された後も目隠しをされ、イスラエルの兵士らが交代で見張りに来るたびにバラールさんを蹴ったり棒で殴ったりしたとも証言している。
バラールさんはヘブライ語を話せないが、兵士たちがバラールさんの名前と、「オスカー」という言葉を話しているのが聞こえたという。バラールさんは、「彼らが特に私を攻撃していることに気づいた。『オスカー』と話し、名前を呼ばれればそれは分かります」と語った。
イスラエル軍は、軍に向かって石を投げた疑いのあるパレスチナ人3人と、イスラエル人とパレスチナ人の間の「暴力的な衝突」に関与したイスラエル人1人を拘束したと発表している。一方AP通信は、目撃者がこの主張に異議を唱えていると報じている。
「ユダヤ人非暴力センター」の活動家たちによると、3月24日夕にイスラエル人入植者によるヨルダン川西岸のスシヤ村への攻撃が始まった。十数人の入植者が襲撃に加わり、バラールさんの家は包囲されたという。
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」は、イスラエル軍による村の破壊を阻止しようとしたマサーフェル・ヤッタ地域の住民たちの闘いを記録した映画。第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、バラールさんらは3月2日の授賞式に出席していた。