「遺体がいたるところに」ガザの医師たち、イスラエルが数百人のパレスチナ人を殺した夜を語る

「医師たちは、状況の緊迫感と困難さに涙を流していた」。国連は、一日当たりの子どもの死亡数として、過去1年で最多となる日だとしている。
イスラエルによる爆撃で殺害された3歳の子どもオマールの遺体を、埋葬のためナセル病院の遺体安置所から引き取った母親(2025年3月20日、パレスチナ自治区、ハーン・ユニス)
イスラエルによる爆撃で殺害された3歳の子どもオマールの遺体を、埋葬のためナセル病院の遺体安置所から引き取った母親(2025年3月20日、パレスチナ自治区、ハーン・ユニス)
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すでにほとんど機能していなかったガザ地区の病院は、再び混乱に陥った。イスラエルによる17カ月に及ぶ攻撃の中で、最も致命的な爆撃作戦となり、パレスチナ人の死傷者は急増している。

イスラエルのネタニヤフ首相は3月18日早朝、ガザ全域への空爆を命じ、2カ月前に始まったハマスとの停戦合意を破った。ガザ保健省によると、今回の空爆によって一夜にして400人以上のパレスチナ人が死亡し、そのうち少なくとも180人は子どもだった。

「私たちは多くの遺体や遺体の一部を受け取った。そのほとんどは子どもと女性でした」。ハーンユニスのナセル病院にいたモハメド・キシュタ医師は、「国境なき医師団」(MSF)にそう報告した。「完全な混乱の中、救急室のいたるところに遺体が散乱していた」。

イスラエルとハマスは1月にガザでの停戦に合意した。3段階にわたる双方の人質交換や、ガザからのイスラエル軍の撤退を含む内容だった。

パレスチナ人たちはようやく、かろうじて残った住まいへと戻る機会を得て、愛する人の遺体を埋葬し、再建に向けて歩みを進められるはずだった。

だが停戦中も、人々の安全は脅かされ続けた。イスラエル軍の攻撃で、多くの建物が構造的に脆弱になっていた。

ある24歳の男性は、アパートから父親の遺体を回収しようとしていたところ、建物が崩壊した。手術を担当した医師によると、男性は出血多量で命の危険にさらされたという。

危険なのは建物だけではない。欧州地中海人権モニターによると、イスラエル軍はガザでの停戦中に少なくとも150人を殺害した。現地で活動する人権団体は、パレスチナ人が国境近くの自宅に戻ろうとした時に標的にされるケースが多いと述べた。

イスラエルは3月2日、ガザ地区への全ての援助を遮断した。これによりパレスチナの人々は、食料や水、燃料、医薬品といった物資を入手できなくなった。

イスラエルは18日未明、パレスチナ全域に爆弾の雨を降らせ始め、数時間で数百人の命を奪った。ネタニヤフ首相は、この攻撃は「始まりに過ぎない」と述べ、ハマスが停戦延長の条件として残りの人質の半数を解放することを拒否したことを非難した。だがこれは、双方が当初合意したものではない

サブリナ・ダス医師は攻撃が始まったとき、ガザ南部のアル・マワシ地区で眠っていた。爆弾がすぐ近くに落ち、爆発のたびにドアが揺れたという。まるで意識が体から離れていくように感じられ、「何が起こっているのか頭では分かっているのに、信じたくない」状況だったと明かした。

フェローズ・シドワ医師は、病院のドアが破壊されたとき、ベッドから飛び起きた。爆発は一晩中、続いたという。

「ここにいる間にこんなことが起こるだろうとは思っていましたが、爆撃で粉々に破壊された場所にいることが怖くないというふりをしたくはありません」

イスラエル軍によるガザ地区北部への夜間空爆で殺害された赤ちゃんの遺体を抱きしめるパレスチナ人男性(2025年3月20日、ガザ・ベイトラヒア)
イスラエル軍によるガザ地区北部への夜間空爆で殺害された赤ちゃんの遺体を抱きしめるパレスチナ人男性(2025年3月20日、ガザ・ベイトラヒア)
BASHAR TALEB via Getty Images

シドワさんや同僚たちは階段を降りて緊急治療室に駆け込んだ。この場所は、大量の負傷者の受け入れに備えて事前に準備されていたという。

死傷者の数が急増するにつれ、病院は対応に苦慮し始めた。

「非常に緊迫していて、緊急治療室の医師たちは崩れるように倒れ伏してしまった」とキシュタさんは語った。「彼らは状況の緊迫感と困難さに、涙を流していた」。

シドワさんの同僚で外傷外科医のモーガン・マクモナグル医師は、ハフポストUS版の取材に「ガザの医療従事者のほぼ全員が、救急室で働いている間に、自分の家族や近親者、親戚の誰かが病院に運ばれ、亡くなったという経験をしている」と明かす。

イスラエルの集中空爆による虐殺は終わっていない。ガザの保健当局は、イスラエル軍が19日夜から20日にかけて少なくとも85人のパレスチナ人を殺害したと述べている

イスラエルによるガザ地区への援助の封鎖は長期化し、共同炊事場や淡水化施設が閉鎖に追い込まれた。病院では物資が底を突いたか、あるいは底を突きそうな危険な状況にある。

「この状態が続けば、物資は間違いなくすぐに尽きてしまう。何時間、何日かは言えませんが、それほど長くはかからないでしょう」とシドワさんは語った。

人道主義者たちは、国連職員の殺害を含め、イスラエルが国際法に違反していると非難した。国連は、職員の殺害について「事故ではない」と指摘している。また、多数の国や人権団体、国連機関が、イスラエルがパレスチナ人にジェノサイドを行っているとして非難している。

一方で、米国はこれまでイスラエルを支援し続けてきた。トランプ大統領は、米国がガザを「所有」し、ガザの住民を地域外へと強制的に移住させると公然と主張している。ホワイトハウスは、イスラエルによる18日の攻撃を承認したことを認めた。

国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は20日に公表した報告書で、イスラエルがガザの病院を占拠してパレスチナ人の患者の死や苦しみを引き起こしており、戦争犯罪に相当すると指摘した。


(この記事は、ハフポストUSの記事を翻訳・編集・加筆しました)

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