ビールでも「エシカル消費」。好調キリン『晴れ風』が桜を守る「AIカメラ」を花見シーズンにスタート

「ビール離れ」が進む若者にも支持される理由の一つが、購入することで金額の一部が日本の風物詩の保全・継承に貢献できる「晴れ風ACTION」。この春はもう一歩進んで、桜を守る活動に多くの人が参加できる仕掛けが用意された。
「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」撮影イメージ
晴れ風ACTION 桜AIカメラ」撮影イメージ
Misaki Hashimoto

若者の「ビール離れ」が進む中、販売が好調な商品がある。キリンビールが2024年4月に発売した「晴れ風」だ。年間の販売実績は、当初の目標を約1.3倍に上方修正し、550万ケースを達成している(2024年12月発表)。

「晴れ風」は、苦味や酸味を抑えつつ、「飲みごたえ」と「飲みやすさ」を両立させた味が特徴だ。さらに、購入することで金額の一部が日本の風物詩の保全・継承に貢献できる「晴れ風ACTION」も注目されている。

発売後のキリンビールの調査によると、20~30代の購入者のうち17.9%が「晴れ風ACTION」が購買の理由になったと回答している。

消費者が、社会課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援して商品を購入する「エシカル消費」をスタンダードビールという大衆商品で実現させた、先進的な事例になっていることがわかる。

そして、販売開始から2度目の花見シーズンを迎える2025年3月17日、AIを活用した「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」のサービス提供を開始した。このサービスは撮影した桜の写真をAIが解析し、樹木の健康状態を診断し、位置情報とともに全国の自治体へデータを提供する桜保全データベースだ。

「晴れ風ACTION」が桜保全につながった背景について、マーケティング部の塩田梨沙さんは「『世の中を晴れやかにしたい』という理念のもと、現代に求められる新しいスタンダードビールを模索する中で、桜がビールと親和性の高い支援対象として選ばれた」と説明する。

塩田梨沙さん
塩田梨沙さん
Misaki Hashimoto

日本人にとって春の訪れを象徴する桜は、ビールを楽しむ場面とも深く結びついているため、自然な形で支援活動に組み込まれたという。

「ビールからの恩返し」

「晴れ風ACTION」は、日本の風物詩を守りたいという思いから生まれたプロジェクトだ。2024年4月に発売されたキリンビール「晴れ風」が、桜や花火を保全するための活動に売上の一部を寄付する取り組みとしてスタートした。

第1弾では桜、第2弾では花火大会の開催支援を目的に、それぞれ47自治体へ寄付を行い、総額8,000万円を支援。そして2025年は第3弾として、桜の保全活動の寄付先を2024年の2倍となる94自治体に拡大し、活動の幅を広げている。

「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」は、日本樹木医会と連携し、約5,000枚におよぶ桜の画像データを基に、樹木医の診断結果をディープラーニングで学習させたAIシステムを活用して開発された。

「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」の仕組み
「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」の仕組み
キリンビール株式会社

このAIは桜の樹形や幹の太さ、表面の質感を解析し、樹齢や健康状態を約90%の精度で判定できる。また、位置情報と連携することで全国の桜の状態を可視化し、どの地域の桜が危機に瀕しているのかを迅速に把握できる。

従来、桜の健康診断は樹木医が現地で目視や触診を行う必要があり、限られた人員では対応に時間とコストがかかっていた。しかし、AI技術を活用することで、より多くの桜の健康状態を効率的にチェックし、早期対策を講じることが可能となる。

桜AIカメラ
桜AIカメラ
Misaki Hashimoto

戦後に植えられた桜の樹齢は80代

日本樹木医会の和田博幸副会長によると、戦後に植えられた桜の多くが樹齢70~80年となり、気候変動や病害虫の影響で衰退が進んでいる。

特に、ソメイヨシノは接ぎ木によって増殖されるため、遺伝的な多様性が乏しく、病害虫への耐性が低いという課題がある。

さらに、多くの自治体では限られた予算の中で桜の管理を行っているため、十分なメンテナンスができていないケースも少なくない。特に、地方の小規模な自治体では桜の老朽化が進んでいても対応が遅れがちであり、結果的に倒木の危険性が増している。こうした背景からも、AIによる効率的な桜の診断と保全計画の策定が急務となっているという。

社会貢献が若者にも支持される理由

若い世代に「晴れ風ACTION」の活動が支持されている背景について、塩田さんは「『エシカル消費』と言われますが、お客様に支持していただいた背景には、味のおいしさと社会貢献活動が両立していたことがあるのだと思います」と分析する。

『晴れ風』は、若い世代にも飲みやすいように味も設計されている。

「苦みを抑えた、食事に合う味わいが、幅広い層に受け入れられたポイントです。また、桜や花火大会を保全・継承するといった身近なテーマ設定をしたことも、多くの方々の共感を得られた要因であると考えています」と塩田さんは語っている。

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