
トランスジェンダーの議員をミスジェンダリング(自認するジェンダーと異なる性別で取り扱うこと)したアメリカの連邦議会議員が、発言の訂正を求められて突然公聴会を終了させた。
ミスジェンダリングを問題視されたのは、共和党のキース・セルフ下院議員だ。
セルフ氏は3月12日、自身が議長を務める下院小委員会の公聴会で、トランスジェンダー女性である民主党のサラ・マクブライド下院議員に発言を求める際、「ミスター・マクブライド」と呼んだ。
マクブライド議員はトランスジェンダーを公表するアメリカ初の連邦下院議員で、トランスジェンダー当事者を批判する保守派から、たびたび攻撃されている。
マクブライド氏はセルフ氏の発言に一瞬顔をしかめたものの、間髪入れずに「ありがとうございます、マダム・チェア(女性の議長を指す言葉)」と返答し、発言を始めた。
そこに民主党のビル・キーティング下院議員が即座に介入し、「委員長、もう一度紹介をやり直していただけますか?」とセルフ氏に求めた。
セルフ氏が「下院の議場では基準が定められており、私は単に」と説明すると、キーティング氏は「その基準とはなんでしょうか?」と尋ねた。
セルフ氏は「いいでしょう」と述べて改めてマクブライド議員を紹介したものの、「デラウェア州選出のミスター・マクブライド下院議員」と、ミスジェンダリングを繰り返した。
このセルフ氏の発言を、キーティング氏は「非常に不適切です」と強く非難。
「あなたには良識がないのですか? 私はあなたのことを多少なりとも理解してきたつもりですが、適切ではありません」と述べた。
セルフ氏はその後も会議を続ける意向を示したものの、キーティング氏は「正式に選ばれた下院議員を正しく紹介しない限り、私は続けることはできません」と改めて訂正を要求。
この言葉を聞いてセルフ氏は小槌を叩いて公聴会の終了を宣言し、キーティング氏はノートを勢いよく閉じて席から立ち去った。
自らの発言を正当化
セルフ氏は公聴会の後、会議の動画を紹介するXの投稿をリポストして「アメリカ合衆国が公式に認める性別は男性と女性の2つだけだ」と書き込み、自らの発言を正当化した。
また、共和党メアリー・ミラー下院議員もセルフ氏に賛同し、マクブライド氏のデッドネーム(トランスジェンダーの人たちが使用をやめた過去の名前)を使った上で「神が定めてトランプ大統領が宣言した通り、性別は2つしかない――男性と女性だ!」とXで主張した。セルフ氏はこのミラー氏の投稿もリポストしている。
ミスジェンダリングは、トランスジェンダー当事者の心身の健康に悪影響を及ぼす行為で、嫌がらせやいじめの手段として利用されることもある。
また、セルフ氏とミラー氏は「認められている性別は男性と女性だ」と主張しているが、マクブライド氏の法的な性別は女性であり、2つのうちの1つに当てはまる。
ハフポストUS版はセルフ氏とマクブライド氏、キーティング氏に公聴会での発言に関するコメントを求めたが、これまでに回答はない。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。