
コロンビア大学で行われたイスラエルのガザ攻撃への抗議活動に参加した、パレスチナ人活動家で同大学卒業生のマフムード・ハリル氏が3月8日、ICE(移民・税関捜査局)の捜査官に逮捕された。
ハリル氏はアメリカの永住権を持つ合法的な居住者だが、私服捜査官はハリル氏がアメリカ市民で妊娠8カ月の妻と大学所有のアパートに帰宅したところを、令状なしで拘束した。
ハリル氏の弁護士であるエイミー・グリアー氏が申請した人身保護令状によると、捜査官らはシリア出身のハリル氏のグリーンカードを剥奪すると主張し、妻の拘束もほのめかした。
グリアー氏は「逮捕は、(表現の自由や平和的に集会する権利を保障する)憲法修正第1条と、適正な手続きを受ける権利を侵害している」と批判している。
また、ニューヨークの連邦地裁は11日夜、司法の判断なしにハリル氏を国外に強制送還することを禁じる判断を下した。

一方トランプ大統領は10日、自身が立ち上げたSNSトゥルースソーシャルでハリル氏の逮捕を発表。
証拠を示さないままハリル氏を「過激な外国人の親ハマス学生」と呼び、「これは、この後に続く数多くの逮捕の1件目だ。我々は、コロンビアや他の大学で、テロ支持、反ユダヤ、反アメリカの活動に関与した学生がまだいることを知っている。トランプ政権はそれを容認しない」と書き込んだ。
また、トランプ大統領は大学キャンパスでの抗議活動に参加した人たちについて、「学生ではなく、雇われた扇動者だ」と、証拠を示さずに主張している。

グリアー氏は10日夜、「大統領を含む政府関係者によるSNS上での発言は、マフムードの拘束の目的とその違法性を裏付けるものでしかありません」と声明で批判した。
「彼は、合法的に異議を唱える人を、憲法修正第1条に違反するやり方で封じ込めるための見せしめとして選ばれました。政府は今後、法や手続きを持ち出して正当化しようとするかもしれませんが、その試みは取り返しがつかないものです。政府の目的は、違法かつ極めて明白です。その目的が成功しないようにするのが私たち弁護団の役割です」
2024年にアメリカ各地の大学で行われた抗議活動では、さまざまな人種や国籍、宗教の学生や教職員が、ガザ攻撃を続けるイスラエルへの軍事支援をやめるようアメリカ政府に訴え、イスラエル軍や政府と関係のある企業から投資を引き揚げるよう大学に求めた。
その中でコロンビア大学は、警察に連帯キャンプの強制撤去や抗議者逮捕を許可して批判された。
ハリル氏は、コロンビア大学の抗議活動で交渉役として中心的な役割を担っていた。
コロンビア大学国際公共政策大学院で修士号を取得して2024年12月に卒業したが、卒業前に、抗議活動に参加した学生らを処分するために新たにコロンビア大学に設置された機関から調査を受けたことをAP通信の取材に明かしていた。

また、コロンビア大学の大学院生労働組合によると、ハリル氏が逮捕された週末には、別の外国人留学生のもとにもICEの捜査官3人が訪れ、令状なしに大学所有のアパートへ立ち入ろうとした。
同労働組合は、「捜査官らは正当に玄関先で立ち入りを拒まれた」とAP通信に述べている。
コロンビア大学は9日、「キャンパス周辺でICEが目撃されたとの情報があります。コロンビア大学は、これまでも今後も法に従って対応します」とする声明を発表した。
さらに「当大学や全国の都市、機関の長年の慣行に従い、法執行機関が大学の建物を含む大学の非公共エリアに立ち入る際には令状が必要です」とも述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。