転職希望者の6割超が「転勤がある会社で働きたくない」と回答ーー。人材大手「マイナビ」(東京都)が2月27日に公開した「転勤と転職に関する調査レポート(個人・企業)」では、こんな実態が明らかになった。
調査では、転勤がある会社で働きたくない理由、どのような条件があれば転勤を受け入れるか、転勤の可能性があることが理由で転職を考えたことがあるか、についても聞いている。
転勤がある会社で働きたい?
調査は2月3〜6日、ウェブアンケートで実施。従業員数3人以上の企業に所属しており、今後3カ月で転職活動を行う予定の正社員1019人(20~50代)と、従業員数3人以上の企業に所属している経営者か役員、会社員で、中途採用業務を担当している829人が回答した。
まず、「転勤がある会社で働くこと」について、正社員1019人に聞いたところ、計65.3%が「働きたくない」「どちらかと言えば働きたくない」と回答した。
理由を複数回答で尋ねると、「転居にお金がかかる」が最多の44.6%。「転居作業が面倒」が42.9%、「家族と離れたくない」が41.4%と続いた。
関連して、「どのような条件があれば転勤を受け入れても良いか」と質問すると、「基本給が上がる」が43.6%、「毎月の手当が充実している」が42.7%、「今後の昇給に繋がる」が37.6%という結果になった。

9割超が今後も転勤を維持・拡大
次に、「転職先・就業先に転勤があることの影響」を正社員1019人に尋ねた。その結果、「就業先を決める上で転勤があることを考慮する」と答えた人の割合は82.5%に上った。
「転勤の可能性があることが理由で転職を考えたことがある」という回答も49.3%と半分近くになったことから、転職先を決める上でも、転職を検討するきっかけとしても、転勤の有無が影響しているとみられる。
一方、企業の採用担当者829人に「自社の転勤有無」を聞いたところ、64.2%が「全員が転勤の可能性がある」「一部が転勤の可能性がある」と回答した。従業員規模別では、従業員数が多い企業ほど転勤の割合が高かったという。
続いて「転勤制度についての今後の方針」を聞いたところ、「拡大する予定」が35.2%、「維持する予定」が59.2%で、9割を超える企業が今後も「拡大」「維持」する方針であることが判明した。「縮小する予定」は5.6%にとどまった。
「転勤機会を制限する施策」として最も多かったのは「リモートワーク制度」の53.0%で、「地域限定正社員制度」「転勤後の基本給アップ」がそれぞれ41.4%と続いた。

「企業側は転勤を当たり前と捉えず」
リモートワークは従業員が活動拠点を変えずに他エリアの業務を担当できるメリットがあるため、転勤を最小限にできる効果がある。従業員が望まない転勤を減らすことで、転勤を懸念する従業員をケアする企業の動きもうかがえる。
調査を担当した「マイナビキャリアリサーチラボ」の宮本祥太研究員は「かつての日本型企業では、会社都合で人員配置を進め、転勤を昇進等の要件とする会社も多くみられたが、今回の調査では企業成長のために転勤を行いつつも、働く人のキャリアを配慮し、不必要・不本意な転勤を減らすよう試みる企業の様子がうかがえた」と指摘。
その上で、「転職希望者の多くは転勤に抵抗感があり、転勤に伴う金銭的負担や諸作業など、『目先の負担』を不安視する人も少なくないことが分かった。企業は転居に対する金銭的支援や、余裕ある日程で異動できるようにするなどの配慮が求められている」と見解を示した。
そして、「企業側は転勤を当たり前と捉えず、転勤する従業員のケアや、給与・手当をはじめとする制度を充実させることが、今の時代の人材獲得・定着に求められるのではないだろうか」と結論付けた。