
3月3日(日本時間)に開催されている第97回アカデミー賞で、「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」が長編ドキュメンタリーを受賞した。
本作は、イスラエルの軍事支配下に置かれているパレスチナ自治区ヨルダンの様子をとらえたドキュメンタリー映画で、パレスチナ人2人・イスラエル人2人が共同で監督を務めた。
授賞式では、監督4人全員が登壇し、パレスチナ人でマサーフェル・ヤッタ出身のバーセル・アドラー監督と、イスラエル人のユヴァル・アブラハーム監督がスピーチを行った。
アドラーさんは「約2カ月前、私は父親になりました」と明かし、「娘には私と同じような人生を送らなくて済むように願っています。『ノー・アザー・ランド』は、私たちが何十年も耐え、今も抵抗している厳しい現実を反映しています」「私たちは、パレスチナ人への不正義と民族浄化を止めるために本気の行動を起こすよう、世界に求めます」と述べた。
続けて、アブラハームさんは「この映画は、パレスチナ人とイスラエル人が一緒に作りました。2つの声が合わされば、より声が強くなるからです」とし、本作でパレスチナ人とイスラエル人が共同監督を務めた重要性を強調。
「バーセルのことは兄弟のように思っているけれど、私たちは平等ではない」とし、「私は民法のもとに自由ですが、バーセルは軍法のもと生きていて、生活が破壊されている」「違う道があるはずです。民族的優位性のない、両国の市民の権利を尊重する政治的解決策です」などと続けた。
「アメリカの外交政策が、その解決を妨げている」とも言及し、「私たちは互いに密接に繋がりあっている。彼らが自由と安全を手に入れて初めて、僕らもそれを手に入れられる。今まだ遅くはありません」と続けた。
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アドラーさんは、イスラエル軍と入植者たちが人々の家を破壊していく様子を、幼い頃からカメラに記録し世界に発信していた。その活動にシンパシーを感じたアブラハームさんがバーセルさんの元を訪れ、2人で協力してカメラを回していく活動を、本作は2023年10月までの4年間にわたり記録している。
アメリカでは一般公開はされていなかったが、2月に監督らが自主配給を発表し上映規模も広がっている。