同性パートナーとの結婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとして、愛知県在住の男性カップルが国を訴えていた裁判で、名古屋高裁(片田信宏裁判長)は3月7日、一審に続いて違憲判決を言い渡した。
<名古屋高裁が違憲とした憲法の条項が保障するもの>
▼「配偶者の選択など、結婚や家族に関する法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定すべき」(憲法24条2項)
▼「法の下の平等と差別の禁止」(憲法14条1項)
この裁判は、30人以上のLGBTQ+当事者が原告になり、全国5カ所で計6件の訴訟が行われている。
一連の裁判でこの日までにあった計10件の判決のうち、違憲/違憲状態判決が言い渡されたのは名古屋高裁で9件目だ。高裁では4件すべての判決で、違憲と判断されたことになる。


パートナーシップ制度を利用しても法的な家族にはなれない
「結婚の自由をすべての人に」と呼ばれるこの裁判は、全国各地の性的マイノリティ当事者が2019年2月に北海道、東京、愛知、大阪の全国4地域で一斉提訴し、同年9月には福岡、2021年には東京2次訴訟も始まった。
愛知訴訟の原告である大野利政さんと鷹見彰一さん(いずれも仮名)は約8年半前に出会い、2017年にはパートナー関係を証明するための公正証書を作成した。
ふたりは養育里親として幼い子どもを育て、愛知県のパートナーシップ制度も利用している。

2024年にはふたりの関係が夫婦同様だと認められ、鷹見さんの戸籍上の名字を大野さんと同じにすることが名古屋家裁で許可された。
それでも、大野さんと鷹見さんは結婚して法的な家族になれないため、事故に遭うなどの緊急事態が発生した時に相手に連絡がいくのか、病院で家族として扱われるのかなど、常に不安と隣り合わせだ。
婚姻について定めた民法や戸籍法には「夫婦」という言葉が使われている。そのため、結婚は男女間に限られると解釈されて、同性間では認められない。
大野さんと鷹見さんは、これら民法や戸籍法の規定は、結婚の自由を保障する憲法24条や、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると訴えてきた。
一方、国は憲法24条に「両性」「夫婦」という言葉が使われていることから憲法は同性カップルを想定していないと主張。結婚は伝統的に子を産み育てるためのものなので、生殖の可能性がない同性カップルは含まれないとも述べて、憲法違反ではないと反論してきた。
これに対し一審の名古屋地裁は2023年5月、同性カップルの関係を公証(公に証明すること)し保護するための制度がないことは、憲法24条2項と14条1項に違反するとして違憲判決を言い渡した。