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2月28日金曜日は大手小売業者で買い物をしないで――。アメリカで、24時間のショッピングボイコット(不買運動)を呼びかける投稿がSNSで拡散している。
インスタグラムには、「アマゾン、ウォルマート、ターゲット、ファストフードは利用しない」「必要最低限のものだけを、地元の小規模店から購入する」などのアドバイスが投稿されている。
この1日限定の不買運動は「経済ブラックアウト」と名付けられている。企画したのは、経済による抵抗や企業改革を目的とした超党派の草の根団体「ピープルズ・ユニオン・USA」だ。
この団体を設立したジョン・シュワルツ氏は、不買運動について、「本当に力を持っているのは誰なのかを、企業や政治家に思い出させるための第一歩だ」とInstagramやTikTokで説明している。
「経済は富裕層のものではありません。毎日目覚め、この国を動かしている私たちのものです。しかしこのシステムは私たちに奉仕するどころか、私たちを搾取するように作られています。企業は私たちの労働から利益を得る一方で、賃金を低く抑えている」
「2月28日、私たちは彼らに本当の権力者が誰なのかを伝えます……彼らは私たちの労働と消費を通じて私たちを支配してきました。だが今度は、私たちが支配する番です」
「ピープルズ・ユニオン・USA」は、2月28日は大手小売業者のオンラインや店頭での買い物を控え、食料、医薬品、緊急の必需品を地元の小規模店舗で購入するようウェブサイトで呼びかけている。
しかし、1日だけの不買運動は変化をもたらすのだろうか?
1日限定の不買運動ができること、できないこと
主にSNSを通じて広がったこの草の根不買運動には「明確なターゲットが定まっておらず、大きな効果を期待しにくい」という批判もある。
その一方で、この不買運動の最大の強みは、全米規模の議論を生み出していることにある。
ペンシルベニア大学マーケティング教授のアメリカス・リード氏は、「1日限定のボイコットは、財政的な打撃を与えるというより、象徴的な意味合いが強いと言えます。ほとんどの企業は24時間の売上減少分を、穴埋めできます。特に消費者が前後の日に買い物をすれば」と語る。
「しかし、本当の力はそのメッセージにあります。集団で不満を示すことで、メディアの注目を集められます。短期的な売上減少よりも、その影響力のほうがはるかに大きいと言えます」
その点では、SNSで発信すること自体にも影響力がある。
リード氏は、「買い物をしない」というメッセージをSNSで拡散することが、不買運動成功の鍵になるとも述べた。
「人々がこの話題について話し始め、全国的な議論になれば、企業も耳を傾けるようになるでしょう」
一方で、「1日限定では、十分な議論が起きない可能性がある」との見方もある。
デンバー大学財政学教授のマクリン・クラウズ氏は「不買運動を支持する消費者の多くは、前日の木曜や、翌日の土曜に買い物をして、『金曜日には買い物をしなかったから、変化を起こせた』と思うかもしれません」と指摘する。
さらに、クラウズ氏は、「経済ブラックアウト」というメッセージが幅広いため、「混乱を招いている」とも指摘する。
実際、不買運動をする人たちの参加理由は「企業の強欲さ」や「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)政策の撤廃」「トランプ政権による解雇への不満」など様々だ。
不買運動は変化をもたらすのか?
では、28日の不買運動が本当に変化をもたらすには、何が必要なのだろうか?
リード氏は、最も効果的な不買運動は、「企業にとって痛手となる部分――収益、評判、投資家の信頼――に打撃を与えるものだ」と指摘する。
つまり、成功する不買運動は、企業の評判を損ない、株価に影響を与えることで圧力をかけるということになる。
過去にもそうした事例は存在する。リード氏は具体例として、人種差別に抗議した「モンゴメリー・バス・ボイコット」や、1970年代の「ネスレ粉ミルクボイコット」などを例に挙げる。
ただし、これらの不買運動は1日限定ではなく、長期間続いた。
2月28日の不買運動は24時間限定ではあるもの、それで終わりではない。
「ピープルズ・ユニオン・USA」は28日に続き、特定の企業をターゲットにした長期的な不買運動も計画している。
例えば、3月7〜14日まではアマゾン、4月7〜14日まではウォルマートに対する不買運動を実施する予定だ。
シュワルツ氏は「十分な数の人々が参加すれば、企業は影響を感じるはずだ。それでも耳を傾けないなら、さらに発展させる」と述べている。
2月28日の経済ブラックアウトは、企業の最近の変化に対する意思表示の一つでもある。
類似の動きとして、アトランタの黒人聖職者たちは、ターゲットがDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の取り組みを縮小していることに抗議し、キリスト教の四旬節に合わせて40日間の「ターゲット断食」を実施する計画だ。
しかし、個々の「モーメント(瞬間)」を、「ムーブメント(運動)」へと変えるには、大勢の参加と明確な要求が必要となる。
クラウズ氏は、「本当に変化を起こし、企業に影響を与えたいのであれば、抗議参加者たちはウォルマートやターゲット、アマゾンで決して買い物をしないよう説得しなければなりません」と、指摘する。
リード氏は「散発的で短命の取り組みは、現実的な変化を起こすことなく消えてしまうことが多い。鍵となるのは、粘り強さと明確な変革要求です」と語る。
「オンラインで何かして高いモラルを求めることは、仕事を休み、プラカードを作り、街角で抗議するのに比べれば“容易” です」
つまり、不買運動は実際に犠牲を伴い、参加者と不買対象の企業にとって大変な状況になればなるほど効果を発揮するということだ。
インスタグラムにイラストを投稿して28日の不買運動への参加を呼びかけたアーティストのマーサ・リッチ氏は、「一番大変なのは、明日ターゲットに行かないことです。日常的に利用しているお店ですから」と語った。
「しかし私は今の政権がやっていることを心から嫌っています。不買運動は私たちが団結すれば力を持てるのだということを伝える方法なのです」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。